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レイノアの亡霊編
第107話 真実を求めて
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宿へ戻って来た颯太たちは一室を借り、そこでハドリーから旧レイノア王都で起きた禁竜教による二度目の襲撃事件の概要を教わった。
ちなみに、パウルとドルーも一緒についてきた。
「禁竜教が……」
「それも重要だが、問題はスウィーニー大臣が竜騎士団における権限を握りかけているという点にある」
「ロディル・スウィーニー……かつてハルヴァを襲った大飢饉の際にその手腕を振るって国家復興にもっとも尽力した真なる英雄と聞いておりましたが」
「あ、俺も聞いたことありますよ」
ソラン王国出身のドルーやパウルでさえ、スウィーニーの逸話については耳にしているようだった。
「国防局が外交局の秘密を嗅ぎ回っていることを知ったのだろう。この機を利用して、竜騎士団を意のままに操ろうとする魂胆があるのではとブロドリック大臣は疑っている」
「一国の大臣クラスの人物がそう思うからにはそれなりの根拠があるからでしょうな」
ドルーの指摘に、ハドリーは静かに頷いた。
「最大の焦点は旧レイノア王都が禁竜教に占拠されるまでの過程についてだ。前回の不法占拠事件があってから、副団長を軸に強固な防衛体制を取っていたのだが、それにも関わらず今回の事件が起きてしまった――外交局は、竜騎士団の中に禁竜教の占領を手引きした者がいると読んでいる」
「そんな!」
颯太は声を荒げる。
これまで、幾度となく竜騎士団と共にさまざまな危機を乗り越えてきた颯太からすれば、とても信じられる話ではなかった。
「だからこそ、ブロドリック大臣は極秘裏に俺をガドウィンへと向かわせた。……おまえたちを強制休暇の名目でこっちへ送ったのは正解だったな」
「え? この強制休暇って、こうなる事態を読んでのことだったんですか?」
「少し違う。ただ、事前に大臣へ直接タレコミがあったらしい――もっとも、旧レイノア王都が禁竜教によって再び占拠されるとか、そういう具体的なものではなく、外交局で不穏な動きが確認されるという程度のものだったらしい」
「それで、ブロドリック大臣は偶発的に起こったこの占拠事件を利用して外交局が竜騎士団を自分たちの自由にできるよう画策している――と考えたわけね」
ブリギッテがまとめた通りの意見だとハドリーは認めた。
「外交局の思惑通りにしないための対策を練りつつ、尚且つ人質として捕らえられている人たちを無事に解放できるよう交渉しなければならない」
「それだけ聞くと……かなり厳しい状況ですね」
「だから俺たちがここへ来たんだ。真実を確かめるためにな」
ここで、ハドリー率いるリンスウッド分団のメンバーがガドウィンに来た理由を改めて説明する。
「まず、俺たちはこの後すぐに外交局が提示した情報に誤りがないか、直接旧レイノア王都へ出向いて調査してくる」
「たしかに……情報操作がなされている可能性も捨てきれませんわね」
アンジェリカの推測を、ハドリーは「その通りだ」と肯定して、
「さらに、禁竜教の代表は書面を通していくつかの要求を出してきた。それらについて早急に王国議会を開き、国家としての結論をスウィーニー大臣が直接旧レイノア王都へ足を運び、伝えるようにもと言っている」
「スウィーニー大臣が直接禁竜教代表に……」
「その護衛役としてガブリエル騎士団長を総隊長とする特別編成部隊が組まれる予定になっているが……それだけでなく、外交局はメアンガルド、ノエルバッツ、キルカジルカの竜人族3匹もこれに加えるよう指示してきた。間もなく外交局から3匹を連れ戻すために送られた使者がこのガドウィンへ到着するだろう」
「……我らはハルヴァに戻らねばならぬか」
メアが力なく言う。
ノエルとキルカの表情も冴えない。
本来なら、まだあと2日は休暇を満喫できたはずだが、この緊急事態ではそうも言っていられないと3匹とも理解していた。
「メア、ノエル、キルカ……事件を全部解決したら、その時はまたここへ来よう」
「そうだな」
「はい!」
「まあ、そういうご褒美的なものがあれば一層気合も入るわよね」
意気消沈していた3匹も、颯太の言葉に元気とヤル気を取り戻していた。
「……あの、ハドリー分団長」
「なんだ?」
それまで黙ってハドリーからの報告を聴いていたカレンが手を挙げた。
「私も一旦ハルヴァに戻り、外交局へ出向いてさらに詳しい情報がないか聞いてきます」
「そうしてもらえると大変ありがたいが……いいのか?」
「今回のやり方は強引過ぎますし、人質がいるという事実を軽視しているように思えます。恐らくは、まだ公表していない情報を握っているのではないか、と」
「王国議会で隠しておくような情報……それがあれば、やりたい放題の外交局を止める足かせになりそうだな」
「でも、今から戻って情報を聞いて来るには時間がかかり過ぎない? ハドリーさんたちはもうすぐ旧レイノア王都へ向けて発つのでしょう?」
「そ、それは……」
ブリギッテの指摘に、カレンは口ごもる。
だが、その解決策をすでに思いついている者がいた。
「その点については大丈夫ですわ」
アンジェリカだ。
「いい案があるのか?」
「うちの空戦型ドラゴンを1匹お貸しします。それに乗ってハルヴァに行けば時間を大幅に短縮できますわ」
「く、空戦型ドラゴンに……」
一瞬にしてカレンの表情が引きつった。
「ああ……アンジェリカ。凄くいい案だと思うんだが、実はカレンは――」
「それでいきましょう」
「えっ!?」
カレンのドラゴン嫌いを知る者はその決断に驚きの声をあげた。
「だ、大丈夫なのか、カレン」
「今は国の一大事です。こんな時に好きだ嫌いだで台無しにするわけにはいきません。私は空戦型ドラゴンに乗ってハルヴァに戻ります」
「……いい決意だ、カレン・アルデンハーク」
ハドリーからもお褒めの言葉をもらい、カレンのヤル気ボルテージは最高潮に到達。あの調子なら大丈夫そうだ。
「ドルー隊長! 俺たちも参戦しましょう! ハルヴァの危機を黙って見過ごすことなんてできません!」
一連の話を聞いていたパウルも名乗り出るが、
「待て、パウル。今回の案件はハルヴァと禁竜教による国家の威信をかけた交渉だ。古くからの親交があるとはいえ、そこに他国であるソランの我らが勝手に参戦するわけにはいかん」
「し、しかし!?」
「参戦するにしても、エレーヌ女王の判断を仰ぎ、然るべき手続きを踏んだのち、ハルヴァへの協力体制を取らねばならん」
ドルーは冷静だった。
感情に任せて参戦すれば、結果次第でソランの未来を大きく左右する事態に発展することを恐れての発言だった。
「ドルー殿の言う通りだ。パウル、君の気持ちはとてもありがたいが、個人的な意見で突っ走らないようにな」
「はい……」
「あの、ハドリーさん」
「なんだ、ソータ」
「俺もハドリーさんたちについていきます」
これまでと同じように、颯太も前線で戦う意思を見せるが、
「ダメだ」
ハドリーは颯太の参戦を却下する。
「今回は敵情視察のような任務……必要な情報が揃ったらすぐに撤退するつもりだ。そのためにも、動く部隊は少数がいい」
「で、でも!」
「おまえはここでブリギッテやアンジェリカと共に待機していてくれ。――アンジェリカ、おまえのところのドラゴンを少し借りたいが、いいか」
「構いませんわ。ではこちらへ」
「うむ。ソータ、おまえのところのイリウス、リート、パーキースも借りていくぞ」
「は、はい……」
ハルヴァからガドウィンまでは馬での移動だったため、ここで改めてドラゴンを調達し、旧レイノア王都へ出陣するハドリーたち――と、
「おっと、そうだ。ソータたちには外交局の人間がメアたちを連れ去ろうとした際に、できるだけ時間稼ぎをしてもらいたい」
「時間稼ぎを?」
「そうだ。そんなに長い時間でなくていいから――頼めるか?」
「わかりました!」
「それなら我らでも協力はできそうですな」
「戦闘と違ってこっそりやれますからね」
ソラン組も協力を申し出てくれた。さらに、
「そういうことなら私も一枚噛ませてもらうわ!」
部屋のドアを豪快に開けながら、アムが言う。
「盗み聞きとは感心しないぞ、ガドウィンの竜医殿」
「まあまあ、竜医が軍属扱いのペルゼミネと違って、ガドウィンじゃそこまで発言力はないから安心してよ。それに、時間稼ぎならいい案があるわ。そっちのソランの人たちにも協力してもらうから」
「うむ!」
「そうこなくっちゃな!」
「では、そちらはあなた方に任せよう。あまり無茶はしないように頼むぞ。それから……協力に深く感謝する」
「任せなさい!」
「では、ハドリー分団長、そろそろドラゴンの準備にかかりましょう。カレンさんもいらしてください。あなたをハルヴァまで送り届けるドラゴンを紹介しますわ」
「あ、は、はい!」
それぞれの役割を確認したところで、目的の場所へと散っていく。
部屋に残ったのはキャロルとブリギッテ、そして颯太の3人に竜人族の3匹だけであった。
「……歯がゆいな」
颯太は悔しさを滲ませていた。
「そうは言うけど、むしろこれまでが働き過ぎなのよ。あなたはこれまで、ハルヴァのためによくやってくれているわ。今回は他の人たちに任せて、私たちは最良の結果が訪れることを祈りましょう」
「そ、そうですよ!」
キャロルとブリギッテだけでなく、
「ソータよ。落ち込むことはないぞ」
「私もそう思います!」
「またあんたの力が必要になる時が来るって」
竜人族の3匹も、そう声をかけてくれた。
わかっている。
わかってはいるが、どうしても落ち着かない。
今、自分にやれることは本当に何もないのだろうか。
必死に頭を巡らせる颯太がいる部屋の外から悲鳴にも似た声が。
カレンがドラゴンの背に乗りハルヴァへと飛び立っていったのだ。
「今はみんなを信じましょう?」
「ああ……」
ブリギッテに諭されて、颯太は力なく椅子に腰を下ろすのだった。
ちなみに、パウルとドルーも一緒についてきた。
「禁竜教が……」
「それも重要だが、問題はスウィーニー大臣が竜騎士団における権限を握りかけているという点にある」
「ロディル・スウィーニー……かつてハルヴァを襲った大飢饉の際にその手腕を振るって国家復興にもっとも尽力した真なる英雄と聞いておりましたが」
「あ、俺も聞いたことありますよ」
ソラン王国出身のドルーやパウルでさえ、スウィーニーの逸話については耳にしているようだった。
「国防局が外交局の秘密を嗅ぎ回っていることを知ったのだろう。この機を利用して、竜騎士団を意のままに操ろうとする魂胆があるのではとブロドリック大臣は疑っている」
「一国の大臣クラスの人物がそう思うからにはそれなりの根拠があるからでしょうな」
ドルーの指摘に、ハドリーは静かに頷いた。
「最大の焦点は旧レイノア王都が禁竜教に占拠されるまでの過程についてだ。前回の不法占拠事件があってから、副団長を軸に強固な防衛体制を取っていたのだが、それにも関わらず今回の事件が起きてしまった――外交局は、竜騎士団の中に禁竜教の占領を手引きした者がいると読んでいる」
「そんな!」
颯太は声を荒げる。
これまで、幾度となく竜騎士団と共にさまざまな危機を乗り越えてきた颯太からすれば、とても信じられる話ではなかった。
「だからこそ、ブロドリック大臣は極秘裏に俺をガドウィンへと向かわせた。……おまえたちを強制休暇の名目でこっちへ送ったのは正解だったな」
「え? この強制休暇って、こうなる事態を読んでのことだったんですか?」
「少し違う。ただ、事前に大臣へ直接タレコミがあったらしい――もっとも、旧レイノア王都が禁竜教によって再び占拠されるとか、そういう具体的なものではなく、外交局で不穏な動きが確認されるという程度のものだったらしい」
「それで、ブロドリック大臣は偶発的に起こったこの占拠事件を利用して外交局が竜騎士団を自分たちの自由にできるよう画策している――と考えたわけね」
ブリギッテがまとめた通りの意見だとハドリーは認めた。
「外交局の思惑通りにしないための対策を練りつつ、尚且つ人質として捕らえられている人たちを無事に解放できるよう交渉しなければならない」
「それだけ聞くと……かなり厳しい状況ですね」
「だから俺たちがここへ来たんだ。真実を確かめるためにな」
ここで、ハドリー率いるリンスウッド分団のメンバーがガドウィンに来た理由を改めて説明する。
「まず、俺たちはこの後すぐに外交局が提示した情報に誤りがないか、直接旧レイノア王都へ出向いて調査してくる」
「たしかに……情報操作がなされている可能性も捨てきれませんわね」
アンジェリカの推測を、ハドリーは「その通りだ」と肯定して、
「さらに、禁竜教の代表は書面を通していくつかの要求を出してきた。それらについて早急に王国議会を開き、国家としての結論をスウィーニー大臣が直接旧レイノア王都へ足を運び、伝えるようにもと言っている」
「スウィーニー大臣が直接禁竜教代表に……」
「その護衛役としてガブリエル騎士団長を総隊長とする特別編成部隊が組まれる予定になっているが……それだけでなく、外交局はメアンガルド、ノエルバッツ、キルカジルカの竜人族3匹もこれに加えるよう指示してきた。間もなく外交局から3匹を連れ戻すために送られた使者がこのガドウィンへ到着するだろう」
「……我らはハルヴァに戻らねばならぬか」
メアが力なく言う。
ノエルとキルカの表情も冴えない。
本来なら、まだあと2日は休暇を満喫できたはずだが、この緊急事態ではそうも言っていられないと3匹とも理解していた。
「メア、ノエル、キルカ……事件を全部解決したら、その時はまたここへ来よう」
「そうだな」
「はい!」
「まあ、そういうご褒美的なものがあれば一層気合も入るわよね」
意気消沈していた3匹も、颯太の言葉に元気とヤル気を取り戻していた。
「……あの、ハドリー分団長」
「なんだ?」
それまで黙ってハドリーからの報告を聴いていたカレンが手を挙げた。
「私も一旦ハルヴァに戻り、外交局へ出向いてさらに詳しい情報がないか聞いてきます」
「そうしてもらえると大変ありがたいが……いいのか?」
「今回のやり方は強引過ぎますし、人質がいるという事実を軽視しているように思えます。恐らくは、まだ公表していない情報を握っているのではないか、と」
「王国議会で隠しておくような情報……それがあれば、やりたい放題の外交局を止める足かせになりそうだな」
「でも、今から戻って情報を聞いて来るには時間がかかり過ぎない? ハドリーさんたちはもうすぐ旧レイノア王都へ向けて発つのでしょう?」
「そ、それは……」
ブリギッテの指摘に、カレンは口ごもる。
だが、その解決策をすでに思いついている者がいた。
「その点については大丈夫ですわ」
アンジェリカだ。
「いい案があるのか?」
「うちの空戦型ドラゴンを1匹お貸しします。それに乗ってハルヴァに行けば時間を大幅に短縮できますわ」
「く、空戦型ドラゴンに……」
一瞬にしてカレンの表情が引きつった。
「ああ……アンジェリカ。凄くいい案だと思うんだが、実はカレンは――」
「それでいきましょう」
「えっ!?」
カレンのドラゴン嫌いを知る者はその決断に驚きの声をあげた。
「だ、大丈夫なのか、カレン」
「今は国の一大事です。こんな時に好きだ嫌いだで台無しにするわけにはいきません。私は空戦型ドラゴンに乗ってハルヴァに戻ります」
「……いい決意だ、カレン・アルデンハーク」
ハドリーからもお褒めの言葉をもらい、カレンのヤル気ボルテージは最高潮に到達。あの調子なら大丈夫そうだ。
「ドルー隊長! 俺たちも参戦しましょう! ハルヴァの危機を黙って見過ごすことなんてできません!」
一連の話を聞いていたパウルも名乗り出るが、
「待て、パウル。今回の案件はハルヴァと禁竜教による国家の威信をかけた交渉だ。古くからの親交があるとはいえ、そこに他国であるソランの我らが勝手に参戦するわけにはいかん」
「し、しかし!?」
「参戦するにしても、エレーヌ女王の判断を仰ぎ、然るべき手続きを踏んだのち、ハルヴァへの協力体制を取らねばならん」
ドルーは冷静だった。
感情に任せて参戦すれば、結果次第でソランの未来を大きく左右する事態に発展することを恐れての発言だった。
「ドルー殿の言う通りだ。パウル、君の気持ちはとてもありがたいが、個人的な意見で突っ走らないようにな」
「はい……」
「あの、ハドリーさん」
「なんだ、ソータ」
「俺もハドリーさんたちについていきます」
これまでと同じように、颯太も前線で戦う意思を見せるが、
「ダメだ」
ハドリーは颯太の参戦を却下する。
「今回は敵情視察のような任務……必要な情報が揃ったらすぐに撤退するつもりだ。そのためにも、動く部隊は少数がいい」
「で、でも!」
「おまえはここでブリギッテやアンジェリカと共に待機していてくれ。――アンジェリカ、おまえのところのドラゴンを少し借りたいが、いいか」
「構いませんわ。ではこちらへ」
「うむ。ソータ、おまえのところのイリウス、リート、パーキースも借りていくぞ」
「は、はい……」
ハルヴァからガドウィンまでは馬での移動だったため、ここで改めてドラゴンを調達し、旧レイノア王都へ出陣するハドリーたち――と、
「おっと、そうだ。ソータたちには外交局の人間がメアたちを連れ去ろうとした際に、できるだけ時間稼ぎをしてもらいたい」
「時間稼ぎを?」
「そうだ。そんなに長い時間でなくていいから――頼めるか?」
「わかりました!」
「それなら我らでも協力はできそうですな」
「戦闘と違ってこっそりやれますからね」
ソラン組も協力を申し出てくれた。さらに、
「そういうことなら私も一枚噛ませてもらうわ!」
部屋のドアを豪快に開けながら、アムが言う。
「盗み聞きとは感心しないぞ、ガドウィンの竜医殿」
「まあまあ、竜医が軍属扱いのペルゼミネと違って、ガドウィンじゃそこまで発言力はないから安心してよ。それに、時間稼ぎならいい案があるわ。そっちのソランの人たちにも協力してもらうから」
「うむ!」
「そうこなくっちゃな!」
「では、そちらはあなた方に任せよう。あまり無茶はしないように頼むぞ。それから……協力に深く感謝する」
「任せなさい!」
「では、ハドリー分団長、そろそろドラゴンの準備にかかりましょう。カレンさんもいらしてください。あなたをハルヴァまで送り届けるドラゴンを紹介しますわ」
「あ、は、はい!」
それぞれの役割を確認したところで、目的の場所へと散っていく。
部屋に残ったのはキャロルとブリギッテ、そして颯太の3人に竜人族の3匹だけであった。
「……歯がゆいな」
颯太は悔しさを滲ませていた。
「そうは言うけど、むしろこれまでが働き過ぎなのよ。あなたはこれまで、ハルヴァのためによくやってくれているわ。今回は他の人たちに任せて、私たちは最良の結果が訪れることを祈りましょう」
「そ、そうですよ!」
キャロルとブリギッテだけでなく、
「ソータよ。落ち込むことはないぞ」
「私もそう思います!」
「またあんたの力が必要になる時が来るって」
竜人族の3匹も、そう声をかけてくれた。
わかっている。
わかってはいるが、どうしても落ち着かない。
今、自分にやれることは本当に何もないのだろうか。
必死に頭を巡らせる颯太がいる部屋の外から悲鳴にも似た声が。
カレンがドラゴンの背に乗りハルヴァへと飛び立っていったのだ。
「今はみんなを信じましょう?」
「ああ……」
ブリギッテに諭されて、颯太は力なく椅子に腰を下ろすのだった。
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