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1巻
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最初は話題を変えるために窓の外を眺めていた様子のパトリシアだが、エストラーダの自然豊かな美しい風土に魅せられたのか、いつの間にか夢中になって景色を楽しみ始める。
完全に当初の目的を見失ったみたいだな。
先ほどは子ども扱いしていると言われてしまったが、パトリシアは同学年の子たちの中では、顔立ちも含めて大人びていると思う。
だがそれでも、やっぱりまだ十代の少女だ。
エストラーダの風景にはしゃいでいる今の姿は、年相応に無邪気で楽しそうに見える。
「オーリン先生がエストラーダにいらしたことを告げるため、先に使者を王都へ向かわせました」
パトリシアの隣に座っている俺へ、真正面にいるグローバーが難しい顔をしながら、そう話しかけてきた。
「国王陛下との会談はすぐに認められると思いますが……こちらでは大臣職を? それとも、新しく教育機関を立ち上げ、そこの初代学園長に?」
「おいおい、よしてくれよ。俺はそんな大それたことをするつもりはないよ」
「し、しかし、大国ギアディスで賢者とまで呼ばれたあなたならば、それくらいの地位を求めても文句なんて出ませんよ?」
「賢者って立ち位置は学園の職員連中が勝手に言いだしただけだ。現に、そのような役職が明確に存在していたわけじゃない。あくまでもただの通称だよ」
というか、よそ者の俺にそんな大役をいきなり寄越すなんてことはさすがにないだろう。
それに……冒険者ギルドに寄り道はしたが、俺はあるアテがあってこのエストラーダにやってきたのだ。
「俺がここへ来たのは、以前エストラーダ国王に相談された、とある島のことを思いだしたからなんだ」
「島……?」
そう言ってから、ハッとした顔をするグローバー。
この国で暮らしているだけあって、さすがに気づいたか。
「し、しかし、あそこは誰の手も及んでいない、未開の秘境で……」
「そこを開拓しながらじっくり調べてほしいと、以前依頼をされたことがあってな。あの時はまだ俺も教師として現役だったから断ったが、もしその依頼がまだ生きているのなら、引き受けようと思うんだ」
「先生、島ってあそこですか?」
窓の外の景色を眺めていたパトリシアが、そう尋ねてくる。
そこで俺も気づいたのだが、馬車が今走っているのはちょうど小高い丘の上で、王都が一望できる。
王都の賑やかな町並みの遥か先――海上に、薄らと島の輪郭が見える。
「そうだ。あれが調査依頼のあった島……ラウシュ島だ」
ラウシュ島は、海沿いにあるエストラーダ王国の沖合に存在する島。
周辺で頻繁に嵐が起こることから《災いを呼ぶ島》とも呼ばれているが、嵐が発生した日は島からレアな武器やアイテムの素材となる木や草花などが流れ着くという。
そうしたことから、エストラーダ王家は長らくこの島を調査しようと多くの人材を派遣していたが、それらは失敗に終わっていたようだ。
俺はかつて、鍛錬合宿をするため学生たちを連れてこの国へ来たことがある。
その際、協力のお礼をするため城を訪れたのだが、国王に気に入られ、是非ともあの島を調査してほしいとお願いされていたのだ。
「……オーリン先生なら、必ずやあの島の謎を解明してくださるでしょう。きっと国王陛下も喜んで依頼されますよ。何せ、ずっと気にされていましたから、あの島を」
「ほう、国王陛下が……」
今もあの島に関心を抱いてくれているというなら、俺にとってはプラス材料だな。
「先生! 私も手伝います!」
話を聞いていたパトリシアが、元気いっぱいに手を挙げる。
まあ、そう言うと思ったよ。
ここで帰れと言っても聞かないだろう。誰に似たのか知らないが、意外と頑固なところがあるからな、パトリシアは。
「そうだな。君がいてくれると何かと助かるよ。頼りにしているぞ、パトリシア」
「はい!」
嬉しそうにパトリシアが頷いた時、御者の男が「まもなく王都へ着きます」と教えてくれた。
窓の外へ視線を向けると、そこにはさっきの港町とは違う町が見えてきた。
ギアディスに比べるとだいぶ規模は小さいが、あれこそがエストラーダ王国の王都――俺にとって、次の職場を決める大事な場所だ。
第5話 王との会談
王都といえば大都市のイメージが強いのだが、エストラーダの王都は人の数こそ多いが、非常に穏やかでゆっくりとした時間が流れ、なんともいえない牧歌的な空気が漂っている。ギアディスの王都とは正反対だな。
遠くに連なる山脈と、どこまでも続く青い海。
雄大な景色に、時折鼻をくすぐる潮の香り。
風景の中に山と海が同居し、一見アンバランスだが、むしろエストラーダの持つ自然の特異性を表しているようで、これもまたひとつの風情であるとさえ思えてくる。
馬車から降りた俺とパトリシアは、グローバーに案内されながら、王都の様子を眺めている。
「のんびりした町ですね」
「あぁ……だが、そこがいいんだ」
「ええ。素敵な国ですね」
行き交う人々の表情も、どこか柔らかな感じがする。
「前に来た時のままだ。本当にいい雰囲気の国だな」
「はい。私もこの空気好きです」
パトリシアはほとんどギアディス王国の外へ出たことがない。なので、エストラーダ王国ののんびりした空気は新鮮に感じたようだ。
「気に入っていただけたようで何よりです」
嬉しそうな様子で、グローバーが言う。
「ですが長らくギアディスで暮らしていたオーリン先生からすれば、このエストラーダは少々物足りないのでは?」
「いや、逆だよ」
「逆?」
「もうあんな大都市はお腹いっぱいってことさ」
今の俺の心境からすれば、このエストラーダのように穏やかな空気で溢れる国の方がずっと魅力的に感じる。
これも年かな。――一応、まだ二十代だが。
しばらく歩いていると、城門が見えてきた。
そこに立つふたりの門番も見覚えがある。そしてどうやら、それは向こうも同じのようだ。
「! オーリン様!?」
「な、なぜギアディスの大賢者がここに!?」
「久しぶりだな。ジェームスとヘイグだったか?」
「おぉ……我らの名前を……」
「感無量です!」
以前ここを訪れた時に面識のあったふたりは、瞳を潤ませながら握手を求めてきた。
とりあえず門番たちに挨拶を済ませ、パトリシアとともに城内へ。
その際、使用人や騎士とすれ違うのだが――
「オーリン様!?」
「どうしてオーリン様が!?」
と、誰もが似たような反応だった。
「さすがはオーリン先生ですね」
笑顔でそう言うグローバーだが……正直なところ、あまりピンと来ないな。
「俺はこの国で何かをやった記憶はないんだが?」
「しかし、その輝かしい功績を知らない者などおりませんよ。大賢者オーリンといえば、大国ギアディスにこの人ありと評判になっていましたから」
「やっぱりオーリン先生は凄いです!」
パトリシアが目を輝かせながらこちらを見上げる。
……なんだろう。学園での彼女は凛として、先輩後輩・男女を問わず、周りの学生たちから一目置かれている存在だった――はずだが、どうにもここへ来てからその雰囲気にヒビが生じ、子どもの頃の彼女に戻っているような気がする。
そんなことを考えているうちに、王の間に到着。
中へ入ると、エストラーダ王が笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりだな、オーリン・エドワース」
「お元気そうで何よりです」
膝をつき、胸に手を当て、深々と頭を下げる。
このような作法にまだ慣れていないパトリシアは、見様見真似で同じ動作をしていた。
「話は使いの者から聞いた。ギアディスでは随分と苦労したようだな」
「えぇ……予想もしない結末を迎えました」
自分の息子のために不正を持ちかけた学園長に愛想が尽きて賢者を引退。それから、この地へやってきた――あの件について聞くために。
「国王陛下」
「何も言うでない。君が望んでいることくらい読める。――ラウシュ島のことだな?」
「っ! お気づきでしたか」
「でなければ、わざわざこの国を訪れたりはしないだろう?」
エストラーダ王はそう言うと、近くにいた護衛の騎士へ声をかける。
「そこの者。今すぐ船の用意をしろ」
「は、はい」
王からの命を受けた騎士は、慌てて部屋を出ていった。
「必要な物があるならなんでも言ってくれて構わない。すぐに揃えさせよう」
「ありがとうございます。――っと、お願いをしに来ておいてなんですが……本当によいのですか? 島の調査と開拓を私に任せて」
正直、もっと難色を示すのかと思ったら、想像以上にあっさり受け入れられた――というより、グローバーが言っていたようにノリノリだったのでちょっと困惑してしまった。
だが、エストラーダ王はそんな俺の心配を豪快な笑いで吹き飛ばす。
「構わん。むしろ君にしかお願いできないことだと思っているし、これまでの君の功績を考えたら、もっと条件のいい役職もあるのだが……」
「かしこまった仕事は私の性に合いませんので」
「はっはっはっ! 君ならそう言うと思ったよ」
国王は大声で笑った後、すぐに表情を引き締める。
「改めて言う。ラウシュ島の調査は君にしかできない。頼まれてくれるな?」
「もちろんでございます。むしろ、拝命いただいたことに感謝いたします」
俺は再びエストラーダ王に礼を言うと、深々と頭を下げた。
「騎士グローバーよ」
「はっ!」
「君はかつてオーリンの教え子だったな」
「はい! オーリン先生のもとで学んだからこそ、今の自分があります!」
大袈裟だなぁ、グローバーは。
「では、島を調査する彼の助けになってくれないか?」
「もちろんです!」
「そういうわけだから、何か困ったことがあったらグローバーに相談してくれ」
「分かりました」
俺としても王国とやりとりするより、グローバーに頼む方がやりやすいから助かるな。
その後、俺は島での調査に必要な装備などを揃えるため、三日ほど王都に滞在することを国王に告げた。すると、寝泊まりする場所として王都内にある宿屋の部屋を手配してくれることになった。
話がまとまったところで、俺たちは王の間をあとにする。同時に、この国で暮らすために必要な国民登録も済ませておくことにした。もちろん、パトリシアも一緒にだ。
この手続きが無事に終われば、俺とパトリシアは晴れてエストラーダ国民となる。
諸々の準備を整え終わるまで、大体三日。
島への旅立ちまでに忘れ物がないようチェックをしておかないとな。
「それでは先生、まずはどこへ行きますか?」
そうグローバーが尋ねてきた。
「うむ。では、まずはラウシュ島で使う武器を購入しようか」
「武器ですね。でしたら、こちらにオススメの店がありますよ」
案内役をしてくれることになったグローバーとともに、俺とパトリシアは意気揚々と町へ繰りだしたのだった。
第6話 元教え子① 聖騎士ブリッツ
賢者オーリン・エドワースの教え子であり、現在はエストラーダ王国騎士団に勤めている青年グローバー。
彼がオーリンたちに王都を案内し、ラウシュ島へ向かう準備の手助けをした後のこと。
オーリンたちを宿屋に送り届けたグローバーは自宅へ戻り、オーリンから聞かされた母校――ギアディス王立魔剣学園の堕落ぶりを思いだして落胆していた。
「まさか……そこまで落ちぶれていたとは」
このままでいいわけがないとグローバーは判断するも、もう国を出てしまった自分にはどうすることもできないと悩んだ。
そこに、ある人物の存在が思い浮かんだ。
その人物とは学園時代の後輩であり、現在ギアディス王国騎士団に所属する男だ。
グローバーは彼に手紙を送ることにした。自分と同じくオーリンの教え子であり、オーリンを尊敬していた彼がこの事態を知れば、何かしらの動きを見せてくれるかもしれないと思ったからだ。
「少しでもよい方向へ向かってくれればいいのだが……」
不安な思いを打ち消すように首を振って、グローバーは手紙を書き始めた。
†
――それから一週間後。ギアディス王都内にある、騎士団専用の宿舎。
ブリッツという名の若い騎士が、手紙に目を通していた。
その手紙は、かつて世話になった先輩が久しぶりに送ってきたものだ。
「グローバー先輩からか、懐かしいな」
ブリッツとグローバーはよく一緒に剣術の鍛錬をした仲であり、先輩後輩という関係を超えた親友と呼べる間柄であった。
母親の看護のため、グローバーは卒業してすぐにエストラーダ王国へと移住した。よってブリッツと同じ騎士団へ入ることはなかったが、その友情は今でも続いている。
最初は学生時代の思い出に浸りながら、穏やかに手紙を読み進めていった――が、そこに書かれている、オーリンが不当解雇された可能性があるという文を目の当たりにし、
「な、なんだと!?」
思わず叫んだ。
「おかしいと思ったんだ……オーリン先生が何も告げずに突然引退するなんて……」
込み上げてくる激しい怒りを抑えるように、ブリッツは奥歯をギュッと噛みしめる。
何を隠そう、彼にはオーリンに対する深い恩義があったのだ。
それは、学園に入る前のこと――
ブリッツは病弱で、いつも王都にある診療所のベッドから、凱旋した騎士をねぎらうためのパレードを見物していた。
彼にとって、王国騎士は憧れの存在だった。
しかしいくら憧れても、体の弱い自分に騎士は無理だろうとあきらめていた――が、たまたま学外で行われた剣術演習を見学していたところ、オーリンの手ほどきを受けることになる。
その際、オーリンからかけられた言葉が、ブリッツの人生を変えた。
『君は筋がいいな。鍛錬を続ければ、聖騎士も夢ではないぞ』
病弱な自分を気遣いながら稽古をつけてくれたこと。それだけでなく、褒めてくれたこと。
これらのことがきっかけとなり、ブリッツは本格的に騎士を目指すためトレーニングを始めた。
最初の頃は腕立て伏せを二回するだけで息が上がっていたが、そのうち日課として暇があれば体を鍛えるようになるまでに成長した。
おかげですっかり体は健康になり、剣の腕も上達。
晴れて学園に入学した後はオーリンの担当するクラスに入り、そこからさらに実力を伸ばした。
さらに卒業後は念願の騎士団入りを果たし、一年目から大活躍。武勲の優れた者にのみ与えられる《聖騎士》の称号を、ギアディス王国史上最年少で得ることができた。
これは騎士時代のオーリンでさえ成し遂げられなかった偉業である。
ブリッツがこのことをオーリンへ伝えると、彼は我が事のように喜んでくれた。
「ふっ……懐かしいな」
ブリッツは一冊の本を手に取った。それは卒業文集だ。
自分の卒業後の未来を予想して書くページがあるのだが、ブリッツ自身の未来を書いたページには仲間たちからのメッセージが添えられていた。
ここに名のある仲間たちは、すべて王国始まって以来の優秀な人材として今やギアディス王国に欠かせない存在となっている。そのため、彼らのいた学年は《黄金世代》とも呼ばれていた。
「……念のため、あいつにも教えておくか。昔のように人助けばかりしていて、この手の情報には疎いだろうからな」
そう思ったブリッツは、黄金世代のひとりに向けて早速手紙を書く準備を始める。
手紙の宛先は――王都の大聖堂であった。
第7話 初上陸
ラウシュ島の調査を正式に依頼されてから三日が経った。
「いよいよいだな」
とうとう島へと渡る日がやってきたのだ。
俺――オーリンとパトリシアは、グローバーからの指示に従い、王都とつながっている港に来ている。
「先生、見てください。あそこ!」
「ん? あれは……」
パトリシアが指さした先に、薄らとだがラウシュ島が目視できた。
この港には多くの船が停泊しているので、島に行こうと思えばすぐにでも上陸できる。それでも、誰ひとりとして向かおうとはしない。
手強い水棲モンスターがいるというわけでもないのに誰も近づこうとしないのは、エストラーダの民があの未開の島を、それだけ脅威と感じているため。
その事実だけで一筋縄ではいかない場所ということが分かる。
「潮風が気持ちいいですね、先生」
「そうだな。って、おい、海へ落ちるなよ」
「……そこまで子どもじゃないですよ」
おっと、またしてもパトリシアを子ども扱いしすぎたか。
馬車の時もそうだったが……しかし、小さな子どもの頃からパトリシアを知っている身からすると、そうなってしまうのは致し方ないのだ。
今でこそしっかり者で、学園でもトップの成績を誇るパトリシアだが、孤児院にいた十歳頃までは大変な甘えん坊だった。
彼女が懐いていたシスター曰く、怖い話を聞いた夜はひとりでトイレに行くことができない、雷が鳴る日はひとりでは寝られないなど、甘えん坊のエピソードは枚挙にいとまがない。
とはいえ、それはもう数年前の話。剣術でも魔法でも、学園の生徒でパトリシアに敵う者などいない。卒業前でありながら、早くも騎士団から注目される逸材だからな。
そんな子が俺と離島で開拓生活……
まあ、助手としてはちょっと優秀すぎるが、俺としてもまだまだ教えきれていないところがあったので、心残りがなくなる形となったわけだが。
「どうかしましたか、先生」
「いや、なんでもないよ」
興味深げに海を眺めていたパトリシアを微笑ましく眺めていたら、不審に思われてしまったようだ。
ちょうどその時、グローバーが俺たちを呼びにやってきた。
「おふたりとも、船の準備が整いました」
ちなみにグローバーも船に乗り、俺たちを島に送ってくれる手はずになっている。
「いよいよ出航できるってわけか」
俺がそう言うと、笑みを浮かべたパトリシアがこちらを見る。
「ワクワクしますね!」
「まったくだ」
年甲斐もなく、パトリシアと同じくらいワクワクしている。
謎多きラウシュ島の調査……今から楽しみだな。
胸の高鳴りを抑えつつ、俺たちは荷物を抱えて早速船へと乗り込んだ。
ラウシュ島までは、船でおよそ一時間。
魔鉱石の力で安定した速力を確保できるこの船は、漁業で栄えるエストラーダ王国の技術の結晶といえる。
「本当に高性能だな、ここの船は」
以前、この船に乗ったことのある俺はゆったりと景色を楽しむ。
その一方で、パトリシアは短いながらも初めてとなる船旅に興奮気味だ。
「わぁ……」
気持ちよさそうに全身で潮風を受け止めているパトリシア。
すると――
「あれ? ――せ、先生!」
海を眺めていたパトリシアは何かを発見したらしく、慌てた様子で俺を呼んだ。
「どうかしたのか?」
完全に当初の目的を見失ったみたいだな。
先ほどは子ども扱いしていると言われてしまったが、パトリシアは同学年の子たちの中では、顔立ちも含めて大人びていると思う。
だがそれでも、やっぱりまだ十代の少女だ。
エストラーダの風景にはしゃいでいる今の姿は、年相応に無邪気で楽しそうに見える。
「オーリン先生がエストラーダにいらしたことを告げるため、先に使者を王都へ向かわせました」
パトリシアの隣に座っている俺へ、真正面にいるグローバーが難しい顔をしながら、そう話しかけてきた。
「国王陛下との会談はすぐに認められると思いますが……こちらでは大臣職を? それとも、新しく教育機関を立ち上げ、そこの初代学園長に?」
「おいおい、よしてくれよ。俺はそんな大それたことをするつもりはないよ」
「し、しかし、大国ギアディスで賢者とまで呼ばれたあなたならば、それくらいの地位を求めても文句なんて出ませんよ?」
「賢者って立ち位置は学園の職員連中が勝手に言いだしただけだ。現に、そのような役職が明確に存在していたわけじゃない。あくまでもただの通称だよ」
というか、よそ者の俺にそんな大役をいきなり寄越すなんてことはさすがにないだろう。
それに……冒険者ギルドに寄り道はしたが、俺はあるアテがあってこのエストラーダにやってきたのだ。
「俺がここへ来たのは、以前エストラーダ国王に相談された、とある島のことを思いだしたからなんだ」
「島……?」
そう言ってから、ハッとした顔をするグローバー。
この国で暮らしているだけあって、さすがに気づいたか。
「し、しかし、あそこは誰の手も及んでいない、未開の秘境で……」
「そこを開拓しながらじっくり調べてほしいと、以前依頼をされたことがあってな。あの時はまだ俺も教師として現役だったから断ったが、もしその依頼がまだ生きているのなら、引き受けようと思うんだ」
「先生、島ってあそこですか?」
窓の外の景色を眺めていたパトリシアが、そう尋ねてくる。
そこで俺も気づいたのだが、馬車が今走っているのはちょうど小高い丘の上で、王都が一望できる。
王都の賑やかな町並みの遥か先――海上に、薄らと島の輪郭が見える。
「そうだ。あれが調査依頼のあった島……ラウシュ島だ」
ラウシュ島は、海沿いにあるエストラーダ王国の沖合に存在する島。
周辺で頻繁に嵐が起こることから《災いを呼ぶ島》とも呼ばれているが、嵐が発生した日は島からレアな武器やアイテムの素材となる木や草花などが流れ着くという。
そうしたことから、エストラーダ王家は長らくこの島を調査しようと多くの人材を派遣していたが、それらは失敗に終わっていたようだ。
俺はかつて、鍛錬合宿をするため学生たちを連れてこの国へ来たことがある。
その際、協力のお礼をするため城を訪れたのだが、国王に気に入られ、是非ともあの島を調査してほしいとお願いされていたのだ。
「……オーリン先生なら、必ずやあの島の謎を解明してくださるでしょう。きっと国王陛下も喜んで依頼されますよ。何せ、ずっと気にされていましたから、あの島を」
「ほう、国王陛下が……」
今もあの島に関心を抱いてくれているというなら、俺にとってはプラス材料だな。
「先生! 私も手伝います!」
話を聞いていたパトリシアが、元気いっぱいに手を挙げる。
まあ、そう言うと思ったよ。
ここで帰れと言っても聞かないだろう。誰に似たのか知らないが、意外と頑固なところがあるからな、パトリシアは。
「そうだな。君がいてくれると何かと助かるよ。頼りにしているぞ、パトリシア」
「はい!」
嬉しそうにパトリシアが頷いた時、御者の男が「まもなく王都へ着きます」と教えてくれた。
窓の外へ視線を向けると、そこにはさっきの港町とは違う町が見えてきた。
ギアディスに比べるとだいぶ規模は小さいが、あれこそがエストラーダ王国の王都――俺にとって、次の職場を決める大事な場所だ。
第5話 王との会談
王都といえば大都市のイメージが強いのだが、エストラーダの王都は人の数こそ多いが、非常に穏やかでゆっくりとした時間が流れ、なんともいえない牧歌的な空気が漂っている。ギアディスの王都とは正反対だな。
遠くに連なる山脈と、どこまでも続く青い海。
雄大な景色に、時折鼻をくすぐる潮の香り。
風景の中に山と海が同居し、一見アンバランスだが、むしろエストラーダの持つ自然の特異性を表しているようで、これもまたひとつの風情であるとさえ思えてくる。
馬車から降りた俺とパトリシアは、グローバーに案内されながら、王都の様子を眺めている。
「のんびりした町ですね」
「あぁ……だが、そこがいいんだ」
「ええ。素敵な国ですね」
行き交う人々の表情も、どこか柔らかな感じがする。
「前に来た時のままだ。本当にいい雰囲気の国だな」
「はい。私もこの空気好きです」
パトリシアはほとんどギアディス王国の外へ出たことがない。なので、エストラーダ王国ののんびりした空気は新鮮に感じたようだ。
「気に入っていただけたようで何よりです」
嬉しそうな様子で、グローバーが言う。
「ですが長らくギアディスで暮らしていたオーリン先生からすれば、このエストラーダは少々物足りないのでは?」
「いや、逆だよ」
「逆?」
「もうあんな大都市はお腹いっぱいってことさ」
今の俺の心境からすれば、このエストラーダのように穏やかな空気で溢れる国の方がずっと魅力的に感じる。
これも年かな。――一応、まだ二十代だが。
しばらく歩いていると、城門が見えてきた。
そこに立つふたりの門番も見覚えがある。そしてどうやら、それは向こうも同じのようだ。
「! オーリン様!?」
「な、なぜギアディスの大賢者がここに!?」
「久しぶりだな。ジェームスとヘイグだったか?」
「おぉ……我らの名前を……」
「感無量です!」
以前ここを訪れた時に面識のあったふたりは、瞳を潤ませながら握手を求めてきた。
とりあえず門番たちに挨拶を済ませ、パトリシアとともに城内へ。
その際、使用人や騎士とすれ違うのだが――
「オーリン様!?」
「どうしてオーリン様が!?」
と、誰もが似たような反応だった。
「さすがはオーリン先生ですね」
笑顔でそう言うグローバーだが……正直なところ、あまりピンと来ないな。
「俺はこの国で何かをやった記憶はないんだが?」
「しかし、その輝かしい功績を知らない者などおりませんよ。大賢者オーリンといえば、大国ギアディスにこの人ありと評判になっていましたから」
「やっぱりオーリン先生は凄いです!」
パトリシアが目を輝かせながらこちらを見上げる。
……なんだろう。学園での彼女は凛として、先輩後輩・男女を問わず、周りの学生たちから一目置かれている存在だった――はずだが、どうにもここへ来てからその雰囲気にヒビが生じ、子どもの頃の彼女に戻っているような気がする。
そんなことを考えているうちに、王の間に到着。
中へ入ると、エストラーダ王が笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりだな、オーリン・エドワース」
「お元気そうで何よりです」
膝をつき、胸に手を当て、深々と頭を下げる。
このような作法にまだ慣れていないパトリシアは、見様見真似で同じ動作をしていた。
「話は使いの者から聞いた。ギアディスでは随分と苦労したようだな」
「えぇ……予想もしない結末を迎えました」
自分の息子のために不正を持ちかけた学園長に愛想が尽きて賢者を引退。それから、この地へやってきた――あの件について聞くために。
「国王陛下」
「何も言うでない。君が望んでいることくらい読める。――ラウシュ島のことだな?」
「っ! お気づきでしたか」
「でなければ、わざわざこの国を訪れたりはしないだろう?」
エストラーダ王はそう言うと、近くにいた護衛の騎士へ声をかける。
「そこの者。今すぐ船の用意をしろ」
「は、はい」
王からの命を受けた騎士は、慌てて部屋を出ていった。
「必要な物があるならなんでも言ってくれて構わない。すぐに揃えさせよう」
「ありがとうございます。――っと、お願いをしに来ておいてなんですが……本当によいのですか? 島の調査と開拓を私に任せて」
正直、もっと難色を示すのかと思ったら、想像以上にあっさり受け入れられた――というより、グローバーが言っていたようにノリノリだったのでちょっと困惑してしまった。
だが、エストラーダ王はそんな俺の心配を豪快な笑いで吹き飛ばす。
「構わん。むしろ君にしかお願いできないことだと思っているし、これまでの君の功績を考えたら、もっと条件のいい役職もあるのだが……」
「かしこまった仕事は私の性に合いませんので」
「はっはっはっ! 君ならそう言うと思ったよ」
国王は大声で笑った後、すぐに表情を引き締める。
「改めて言う。ラウシュ島の調査は君にしかできない。頼まれてくれるな?」
「もちろんでございます。むしろ、拝命いただいたことに感謝いたします」
俺は再びエストラーダ王に礼を言うと、深々と頭を下げた。
「騎士グローバーよ」
「はっ!」
「君はかつてオーリンの教え子だったな」
「はい! オーリン先生のもとで学んだからこそ、今の自分があります!」
大袈裟だなぁ、グローバーは。
「では、島を調査する彼の助けになってくれないか?」
「もちろんです!」
「そういうわけだから、何か困ったことがあったらグローバーに相談してくれ」
「分かりました」
俺としても王国とやりとりするより、グローバーに頼む方がやりやすいから助かるな。
その後、俺は島での調査に必要な装備などを揃えるため、三日ほど王都に滞在することを国王に告げた。すると、寝泊まりする場所として王都内にある宿屋の部屋を手配してくれることになった。
話がまとまったところで、俺たちは王の間をあとにする。同時に、この国で暮らすために必要な国民登録も済ませておくことにした。もちろん、パトリシアも一緒にだ。
この手続きが無事に終われば、俺とパトリシアは晴れてエストラーダ国民となる。
諸々の準備を整え終わるまで、大体三日。
島への旅立ちまでに忘れ物がないようチェックをしておかないとな。
「それでは先生、まずはどこへ行きますか?」
そうグローバーが尋ねてきた。
「うむ。では、まずはラウシュ島で使う武器を購入しようか」
「武器ですね。でしたら、こちらにオススメの店がありますよ」
案内役をしてくれることになったグローバーとともに、俺とパトリシアは意気揚々と町へ繰りだしたのだった。
第6話 元教え子① 聖騎士ブリッツ
賢者オーリン・エドワースの教え子であり、現在はエストラーダ王国騎士団に勤めている青年グローバー。
彼がオーリンたちに王都を案内し、ラウシュ島へ向かう準備の手助けをした後のこと。
オーリンたちを宿屋に送り届けたグローバーは自宅へ戻り、オーリンから聞かされた母校――ギアディス王立魔剣学園の堕落ぶりを思いだして落胆していた。
「まさか……そこまで落ちぶれていたとは」
このままでいいわけがないとグローバーは判断するも、もう国を出てしまった自分にはどうすることもできないと悩んだ。
そこに、ある人物の存在が思い浮かんだ。
その人物とは学園時代の後輩であり、現在ギアディス王国騎士団に所属する男だ。
グローバーは彼に手紙を送ることにした。自分と同じくオーリンの教え子であり、オーリンを尊敬していた彼がこの事態を知れば、何かしらの動きを見せてくれるかもしれないと思ったからだ。
「少しでもよい方向へ向かってくれればいいのだが……」
不安な思いを打ち消すように首を振って、グローバーは手紙を書き始めた。
†
――それから一週間後。ギアディス王都内にある、騎士団専用の宿舎。
ブリッツという名の若い騎士が、手紙に目を通していた。
その手紙は、かつて世話になった先輩が久しぶりに送ってきたものだ。
「グローバー先輩からか、懐かしいな」
ブリッツとグローバーはよく一緒に剣術の鍛錬をした仲であり、先輩後輩という関係を超えた親友と呼べる間柄であった。
母親の看護のため、グローバーは卒業してすぐにエストラーダ王国へと移住した。よってブリッツと同じ騎士団へ入ることはなかったが、その友情は今でも続いている。
最初は学生時代の思い出に浸りながら、穏やかに手紙を読み進めていった――が、そこに書かれている、オーリンが不当解雇された可能性があるという文を目の当たりにし、
「な、なんだと!?」
思わず叫んだ。
「おかしいと思ったんだ……オーリン先生が何も告げずに突然引退するなんて……」
込み上げてくる激しい怒りを抑えるように、ブリッツは奥歯をギュッと噛みしめる。
何を隠そう、彼にはオーリンに対する深い恩義があったのだ。
それは、学園に入る前のこと――
ブリッツは病弱で、いつも王都にある診療所のベッドから、凱旋した騎士をねぎらうためのパレードを見物していた。
彼にとって、王国騎士は憧れの存在だった。
しかしいくら憧れても、体の弱い自分に騎士は無理だろうとあきらめていた――が、たまたま学外で行われた剣術演習を見学していたところ、オーリンの手ほどきを受けることになる。
その際、オーリンからかけられた言葉が、ブリッツの人生を変えた。
『君は筋がいいな。鍛錬を続ければ、聖騎士も夢ではないぞ』
病弱な自分を気遣いながら稽古をつけてくれたこと。それだけでなく、褒めてくれたこと。
これらのことがきっかけとなり、ブリッツは本格的に騎士を目指すためトレーニングを始めた。
最初の頃は腕立て伏せを二回するだけで息が上がっていたが、そのうち日課として暇があれば体を鍛えるようになるまでに成長した。
おかげですっかり体は健康になり、剣の腕も上達。
晴れて学園に入学した後はオーリンの担当するクラスに入り、そこからさらに実力を伸ばした。
さらに卒業後は念願の騎士団入りを果たし、一年目から大活躍。武勲の優れた者にのみ与えられる《聖騎士》の称号を、ギアディス王国史上最年少で得ることができた。
これは騎士時代のオーリンでさえ成し遂げられなかった偉業である。
ブリッツがこのことをオーリンへ伝えると、彼は我が事のように喜んでくれた。
「ふっ……懐かしいな」
ブリッツは一冊の本を手に取った。それは卒業文集だ。
自分の卒業後の未来を予想して書くページがあるのだが、ブリッツ自身の未来を書いたページには仲間たちからのメッセージが添えられていた。
ここに名のある仲間たちは、すべて王国始まって以来の優秀な人材として今やギアディス王国に欠かせない存在となっている。そのため、彼らのいた学年は《黄金世代》とも呼ばれていた。
「……念のため、あいつにも教えておくか。昔のように人助けばかりしていて、この手の情報には疎いだろうからな」
そう思ったブリッツは、黄金世代のひとりに向けて早速手紙を書く準備を始める。
手紙の宛先は――王都の大聖堂であった。
第7話 初上陸
ラウシュ島の調査を正式に依頼されてから三日が経った。
「いよいよいだな」
とうとう島へと渡る日がやってきたのだ。
俺――オーリンとパトリシアは、グローバーからの指示に従い、王都とつながっている港に来ている。
「先生、見てください。あそこ!」
「ん? あれは……」
パトリシアが指さした先に、薄らとだがラウシュ島が目視できた。
この港には多くの船が停泊しているので、島に行こうと思えばすぐにでも上陸できる。それでも、誰ひとりとして向かおうとはしない。
手強い水棲モンスターがいるというわけでもないのに誰も近づこうとしないのは、エストラーダの民があの未開の島を、それだけ脅威と感じているため。
その事実だけで一筋縄ではいかない場所ということが分かる。
「潮風が気持ちいいですね、先生」
「そうだな。って、おい、海へ落ちるなよ」
「……そこまで子どもじゃないですよ」
おっと、またしてもパトリシアを子ども扱いしすぎたか。
馬車の時もそうだったが……しかし、小さな子どもの頃からパトリシアを知っている身からすると、そうなってしまうのは致し方ないのだ。
今でこそしっかり者で、学園でもトップの成績を誇るパトリシアだが、孤児院にいた十歳頃までは大変な甘えん坊だった。
彼女が懐いていたシスター曰く、怖い話を聞いた夜はひとりでトイレに行くことができない、雷が鳴る日はひとりでは寝られないなど、甘えん坊のエピソードは枚挙にいとまがない。
とはいえ、それはもう数年前の話。剣術でも魔法でも、学園の生徒でパトリシアに敵う者などいない。卒業前でありながら、早くも騎士団から注目される逸材だからな。
そんな子が俺と離島で開拓生活……
まあ、助手としてはちょっと優秀すぎるが、俺としてもまだまだ教えきれていないところがあったので、心残りがなくなる形となったわけだが。
「どうかしましたか、先生」
「いや、なんでもないよ」
興味深げに海を眺めていたパトリシアを微笑ましく眺めていたら、不審に思われてしまったようだ。
ちょうどその時、グローバーが俺たちを呼びにやってきた。
「おふたりとも、船の準備が整いました」
ちなみにグローバーも船に乗り、俺たちを島に送ってくれる手はずになっている。
「いよいよ出航できるってわけか」
俺がそう言うと、笑みを浮かべたパトリシアがこちらを見る。
「ワクワクしますね!」
「まったくだ」
年甲斐もなく、パトリシアと同じくらいワクワクしている。
謎多きラウシュ島の調査……今から楽しみだな。
胸の高鳴りを抑えつつ、俺たちは荷物を抱えて早速船へと乗り込んだ。
ラウシュ島までは、船でおよそ一時間。
魔鉱石の力で安定した速力を確保できるこの船は、漁業で栄えるエストラーダ王国の技術の結晶といえる。
「本当に高性能だな、ここの船は」
以前、この船に乗ったことのある俺はゆったりと景色を楽しむ。
その一方で、パトリシアは短いながらも初めてとなる船旅に興奮気味だ。
「わぁ……」
気持ちよさそうに全身で潮風を受け止めているパトリシア。
すると――
「あれ? ――せ、先生!」
海を眺めていたパトリシアは何かを発見したらしく、慌てた様子で俺を呼んだ。
「どうかしたのか?」
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