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第21話 情報は金になる
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「それで、情報というのは?」
「ん」
「うん?」
話す前に手を差しだすアルゼ。
「これは?」
「料金に決まってるっしょ? もしかしてタダで情報をもらおうっていうの? これだから金持ちっていうのは嫌なのよぉ。情報屋にとって情報とは店で扱っている商品と同等の価値があるんだから」
そうだった。
さっき自分で解説していてすっかり忘れていたが、彼女たち情報屋にとっては情報が何よりも大事な商品。
俺だって今は学生だが、心はすでに商人。
軽率な行動だったと反省せねば。
――本当は他にあるギャラード商会の人間から事情を聞きだせばタダで情報が手に入る。
しかし、商会にとって情報屋はいいビジネスパートナーだ。
現に父上も信頼できる情報屋をいくつも囲っている。
なので、俺は彼女をその候補のひとりとして選んだ。
年齢は俺やコニーよりひとつふたつほど上。
その若さだと、まだ強いコネクションを持ってはいないだろう。
だからこそ、彼女はこの場に張りついて俺たちの到着を待っていたんだ。
偶然にしてはあまりにもタイミングが良すぎるからな。
ワンチャン、ギャラード商会とお近づきになろうと画策しているに違いない。
俺は逆にそれを利用してやろうと思いつく。
素性はよく分からないが、試すくらいならいいだろう。
その度胸も気に入った。
あとは可愛いから。
割とこれが大きいな、うん。
「あっ、それと、他の商会から情報をもらおうと思っても無駄だよ? ――たとえ同じギャラード商会の関連店であっても」
「何っ?」
いきなり気になる情報をぶっこんできたアルゼ。
うちがかかわっている店なのに、なぜ商会代表の息子へ情報を隠す必要がある?
……まさか、父上に秘密で後ろめたいことをしているのか?
詳細な情報を知りたいところではあるが、それを尋ねたところできっとまた料金を要求してくるだろう。
ここは大人しく向こうの提案に乗っておくか。
「……いや、すまない。ただ失念していただけだよ。それで料金は?」
「初回サービスだから銅貨五枚でいいよ」
まあ、大体の相場通りか。
商人としてはこういう情報も頭に入れておかなくてはいけない。
世の中、善人ばかりじゃないからな。
特に商売人っていうのは隙あらば儲けようと常に相手の粗を探しているよう輩ばかり。
こちらが無知であればあるほど利用されるのだ。
それを父上から教わっている俺は幼い頃からその手の情報を仕入れ、頭に叩き込んである。
俺は財布から銅貨五枚を取りだして彼女に渡した。
「ありがとうございまーす!」
一気に機嫌がよくなる
「それで、情報というのは?」
「あんたたちギャラード商会が押さえていた空き物件を破壊していたのは怖そうないかつい男たちだったよ。――以上」
「……それだけ?」
「それだけ」
「そんな誰でも想像できそうな情報でお金取るの!?」
憤慨するコニー。
まあ、彼女の言いたいことも分かる。
「これは想像じゃなくて事実なのよ、お嬢ちゃん。言葉にすればたった二文字だけど中身がまるで違うんだから」
「では事実と言い切る根拠は?」
「うちがこの目でその店がぶっ壊れていく様子を眺めていたから」
得意げに話すアルゼと、それでも納得いかない様子のコニー。
その横ではルチーナが静観を続けていた。
俺の合図を待っているのか……或いは俺と同じ判断をしたか。
「レーク様も何か言ってやってくださいよ!」
「そう怒るな、コニー」
「でもぉ!」
相当怒っているな、コニーのヤツ。
「彼女は自分の目で見た確かな情報を教えてくれた。それだけでいい」
「で、でも……あんなのこの有様を見たら誰だって予想がつきますよ」
「さっき彼女が言った通り、それはあくまでも予想だ。真実とは限らない。誤った情報は誤った敵を想像させ、進むべき道を迷わせる」
「うっ……」
正論だと感じているようで、コニーは一歩後退。
「彼女は自分の目で見たとハッキリ告げた。情報屋にとってもっとも怖いのは信頼を失うことだ。そいつの情報に信憑性がないと広まったら、もうこの業界で商売はできないだろう。だから俺は彼女の言葉を信じる」
ましてや相手は国内最大のシェアを誇るギャラード商会。
彼女もそれなりのリスクは負っていると覚悟の上だろう。
「……あんた、変わってるって言われない?」
「どうだろうな。時に尊敬され、時には疎まれる。そんなところか」
「私は尊敬していますよ?」
「私も!」
「ふむ。なら尊敬される度合いの方が高い嫌われ者だ」
「……やっぱ超変わってるわ」
アルゼは小さく笑ってさらに続ける。
「あんた気前がいいし、他の商人たちとちょっと違って人も良さそうだから、もうひとつおまけでいい情報をあげるよ。――この町で商売するのはオススメしないな」
「何っ? それはどういう意味だ?」
「ここから先は有料情報」
ニコニコしながら手を差しだすアルゼ。
足元を見るという悪徳商法の基本が備わっているな。
「ちなみに料金は?」
「金貨十枚」
いきなりぼったくり価格に跳ね上がりやがった!?
気前がいいと言われたが、さすがにこの額は払えない――いや、払えないと分かっていてふっかけてきたか。
……もしや、これも駆け引きのうちのひとつか?
上等だ。
この心理戦――挑ませてもらおう。
「ん」
「うん?」
話す前に手を差しだすアルゼ。
「これは?」
「料金に決まってるっしょ? もしかしてタダで情報をもらおうっていうの? これだから金持ちっていうのは嫌なのよぉ。情報屋にとって情報とは店で扱っている商品と同等の価値があるんだから」
そうだった。
さっき自分で解説していてすっかり忘れていたが、彼女たち情報屋にとっては情報が何よりも大事な商品。
俺だって今は学生だが、心はすでに商人。
軽率な行動だったと反省せねば。
――本当は他にあるギャラード商会の人間から事情を聞きだせばタダで情報が手に入る。
しかし、商会にとって情報屋はいいビジネスパートナーだ。
現に父上も信頼できる情報屋をいくつも囲っている。
なので、俺は彼女をその候補のひとりとして選んだ。
年齢は俺やコニーよりひとつふたつほど上。
その若さだと、まだ強いコネクションを持ってはいないだろう。
だからこそ、彼女はこの場に張りついて俺たちの到着を待っていたんだ。
偶然にしてはあまりにもタイミングが良すぎるからな。
ワンチャン、ギャラード商会とお近づきになろうと画策しているに違いない。
俺は逆にそれを利用してやろうと思いつく。
素性はよく分からないが、試すくらいならいいだろう。
その度胸も気に入った。
あとは可愛いから。
割とこれが大きいな、うん。
「あっ、それと、他の商会から情報をもらおうと思っても無駄だよ? ――たとえ同じギャラード商会の関連店であっても」
「何っ?」
いきなり気になる情報をぶっこんできたアルゼ。
うちがかかわっている店なのに、なぜ商会代表の息子へ情報を隠す必要がある?
……まさか、父上に秘密で後ろめたいことをしているのか?
詳細な情報を知りたいところではあるが、それを尋ねたところできっとまた料金を要求してくるだろう。
ここは大人しく向こうの提案に乗っておくか。
「……いや、すまない。ただ失念していただけだよ。それで料金は?」
「初回サービスだから銅貨五枚でいいよ」
まあ、大体の相場通りか。
商人としてはこういう情報も頭に入れておかなくてはいけない。
世の中、善人ばかりじゃないからな。
特に商売人っていうのは隙あらば儲けようと常に相手の粗を探しているよう輩ばかり。
こちらが無知であればあるほど利用されるのだ。
それを父上から教わっている俺は幼い頃からその手の情報を仕入れ、頭に叩き込んである。
俺は財布から銅貨五枚を取りだして彼女に渡した。
「ありがとうございまーす!」
一気に機嫌がよくなる
「それで、情報というのは?」
「あんたたちギャラード商会が押さえていた空き物件を破壊していたのは怖そうないかつい男たちだったよ。――以上」
「……それだけ?」
「それだけ」
「そんな誰でも想像できそうな情報でお金取るの!?」
憤慨するコニー。
まあ、彼女の言いたいことも分かる。
「これは想像じゃなくて事実なのよ、お嬢ちゃん。言葉にすればたった二文字だけど中身がまるで違うんだから」
「では事実と言い切る根拠は?」
「うちがこの目でその店がぶっ壊れていく様子を眺めていたから」
得意げに話すアルゼと、それでも納得いかない様子のコニー。
その横ではルチーナが静観を続けていた。
俺の合図を待っているのか……或いは俺と同じ判断をしたか。
「レーク様も何か言ってやってくださいよ!」
「そう怒るな、コニー」
「でもぉ!」
相当怒っているな、コニーのヤツ。
「彼女は自分の目で見た確かな情報を教えてくれた。それだけでいい」
「で、でも……あんなのこの有様を見たら誰だって予想がつきますよ」
「さっき彼女が言った通り、それはあくまでも予想だ。真実とは限らない。誤った情報は誤った敵を想像させ、進むべき道を迷わせる」
「うっ……」
正論だと感じているようで、コニーは一歩後退。
「彼女は自分の目で見たとハッキリ告げた。情報屋にとってもっとも怖いのは信頼を失うことだ。そいつの情報に信憑性がないと広まったら、もうこの業界で商売はできないだろう。だから俺は彼女の言葉を信じる」
ましてや相手は国内最大のシェアを誇るギャラード商会。
彼女もそれなりのリスクは負っていると覚悟の上だろう。
「……あんた、変わってるって言われない?」
「どうだろうな。時に尊敬され、時には疎まれる。そんなところか」
「私は尊敬していますよ?」
「私も!」
「ふむ。なら尊敬される度合いの方が高い嫌われ者だ」
「……やっぱ超変わってるわ」
アルゼは小さく笑ってさらに続ける。
「あんた気前がいいし、他の商人たちとちょっと違って人も良さそうだから、もうひとつおまけでいい情報をあげるよ。――この町で商売するのはオススメしないな」
「何っ? それはどういう意味だ?」
「ここから先は有料情報」
ニコニコしながら手を差しだすアルゼ。
足元を見るという悪徳商法の基本が備わっているな。
「ちなみに料金は?」
「金貨十枚」
いきなりぼったくり価格に跳ね上がりやがった!?
気前がいいと言われたが、さすがにこの額は払えない――いや、払えないと分かっていてふっかけてきたか。
……もしや、これも駆け引きのうちのひとつか?
上等だ。
この心理戦――挑ませてもらおう。
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