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第39話 想像以上のクソ野郎
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学園に復帰したコニーと授業を受けつつ、ルチーナが集めてくれたウォルトンに関する情報を昼休み中にチェックする。
ウォルトンも気になるが、実はあれからクレアとも会えていなかった。
書庫を訪ねてみても応答なし。
また会長の馬鹿力……もとい、鍛え抜かれたパワーでこじ開けてもらおうとしたのだが、どうも家の用事でしばらく休むらしい。
とりあえずクレアのことはこの報告書を読んでから考えるとしよう。
読み終えた結果だが――
「想像以上のクソ野郎だな」
ここまでくると清々しささえ感じてしまうほどのクズっぷりだった。
まず、何より目についたのは派手な女性関係。
おまけにヤツが目をつけるのはすでに誰かと付き合っている女生徒のみ。
メルツァーロ聖院は王家をはじめ公爵家など貴族の中でも高い地位の者たちが贔屓にしている名家。
家柄の弱い者たちからすれば、ぜひとも仲良くしておきたい相手だろう。
中にはそれまでの付き合いをなかったことにしてメルツァーロに取り入ろうとする者までいるらしい。
上昇志向があると言ったらいいのか……ともかく、ヤツは思っていた以上に女生徒から人気があった。
だが、腑に落ちない点もある。
それはヤツの成績だった。
「かなりの好成績だな」
「学年でも上位十人に名を連ねています」
資料の中にある該当項目を指さしながら答えるルチーナ。
ちなみに、今俺はコニーとルチーナに挟まれる形で中庭のベンチに腰かけている。
今日のお昼のメニューはサンドウィッチなのだが、これはなんとコニーがルチーナに作り方を教えてもらい、初めて完成させた料理らしい。
どうりでルチーナが作ったにしては形がいびつだと思ったんだ。
彼女のサンドウィッチは最高だが、俺のためにコニーが作ってくれたサンドウィッチもまた違った趣があって良い。
もちろん、味も抜群だった。
さすがはルチーナ監修の逸品。
そのサンドウィッチを頬張りながら、俺は疑問点を口にする。
「筆記試験の方は立場を利用することで不正ができそうなものだが、魔草薬師としての実績はどうやったんだ?」
ウォルトンが研究したという魔草薬はどれも高い効果を得られ、メルツァーロ聖院で処方されるレベルだという。
俺が前世で暮らしていた世界じゃあり得ない話だな。
こっちじゃ臨床実験とかやらないのか?
まあ、魔力を含む魔草を使用した薬ってわけだから、あっちの世界の常識が通用しないってこともあるのだろうが、それにしたって怖いよなぁ。
――って、気にすべきはそこじゃなかった。
「俺の知るウォルトン・メルツァーロとは女好きで怠け者で陰険で性悪で最低のろくでなしという印象だったのだが、ここではまるっきり違うようだ」
「いえ、素行面ではかなり問題を抱えていたようなのであながち間違いではないかと」
「なるほど……」
教師たちもヤツが問題児という認識を持っているが、王家や公爵家と強いつながりを持つメルツァーロ家の人間だから強気に出られないのか。
……やはり腑に落ちない。
今は評価されているようだが、俺にはあのウォルトンがそんな凄いヤツなんてとても信じられなかった。
子どもの頃から自分の屋敷の中庭で魔草を育て、その効果を独自に研究・調査をしていたクレアならまだしも――
「あっ」
なんか今……閃いてしまったな。
「もしかして、ウォルトンはクレアに魔草の研究をさせているんじゃないか?」
「えっ!? そうなの!?」
自作のサンドウィッチを食べながら驚くコニー。
そんな彼女のために「例えばの話だ」と前置きをしてから続けた。
「俺はウォルトン・メルツァーロという人間を子どもの頃から知っている。ヤツはずる賢くはあっても勉強はからっきしだった」
「そ、そんなにひどかったんですか?」
「まあな。……とにかく、この情報の中に載っている実績を本当にヤツがひとりで築きあげたとは到底思えないし、逆に幼い頃から勉強熱心なクレアなら、これくらいやってのけるだろうと断言できる」
「となると、あとは決定的な証拠が必要ですね」
そうだ。
ヤツが不正をして今の地位を確立しているとするなら、この国の未来にも悪影響が及んでくるだろう。
メルツァーロ聖院はこの国の医療の中枢だ。
そこにあの男のような不純物が混ざると、一族が代々守り続けていた安全神話が崩壊してしまうし、国民もパニックになるだろう。
うちとしても代々お得意様として付き合いのあるメルツァーロ家が消滅するような事態になれば大打撃となってしまう。
「……やはり、メルツァーロ家の次期当主にはクレアが就任してくれないと――」
「おやおや、こんなところで優雅にランチタイムかい?」
「「「っ!?」」」
楽しいお昼休みに一番聞きたくないヤツの声がした。
「ウォルトン・メルツァーロ……先輩」
「久しぶりだなぁ、レーク。おまえの活躍は俺の耳にも届いているよ」
相変わらず大勢の女生徒を侍らせたウォルトンが、ニタニタと薄ら笑いを浮かべていた。
ウォルトンも気になるが、実はあれからクレアとも会えていなかった。
書庫を訪ねてみても応答なし。
また会長の馬鹿力……もとい、鍛え抜かれたパワーでこじ開けてもらおうとしたのだが、どうも家の用事でしばらく休むらしい。
とりあえずクレアのことはこの報告書を読んでから考えるとしよう。
読み終えた結果だが――
「想像以上のクソ野郎だな」
ここまでくると清々しささえ感じてしまうほどのクズっぷりだった。
まず、何より目についたのは派手な女性関係。
おまけにヤツが目をつけるのはすでに誰かと付き合っている女生徒のみ。
メルツァーロ聖院は王家をはじめ公爵家など貴族の中でも高い地位の者たちが贔屓にしている名家。
家柄の弱い者たちからすれば、ぜひとも仲良くしておきたい相手だろう。
中にはそれまでの付き合いをなかったことにしてメルツァーロに取り入ろうとする者までいるらしい。
上昇志向があると言ったらいいのか……ともかく、ヤツは思っていた以上に女生徒から人気があった。
だが、腑に落ちない点もある。
それはヤツの成績だった。
「かなりの好成績だな」
「学年でも上位十人に名を連ねています」
資料の中にある該当項目を指さしながら答えるルチーナ。
ちなみに、今俺はコニーとルチーナに挟まれる形で中庭のベンチに腰かけている。
今日のお昼のメニューはサンドウィッチなのだが、これはなんとコニーがルチーナに作り方を教えてもらい、初めて完成させた料理らしい。
どうりでルチーナが作ったにしては形がいびつだと思ったんだ。
彼女のサンドウィッチは最高だが、俺のためにコニーが作ってくれたサンドウィッチもまた違った趣があって良い。
もちろん、味も抜群だった。
さすがはルチーナ監修の逸品。
そのサンドウィッチを頬張りながら、俺は疑問点を口にする。
「筆記試験の方は立場を利用することで不正ができそうなものだが、魔草薬師としての実績はどうやったんだ?」
ウォルトンが研究したという魔草薬はどれも高い効果を得られ、メルツァーロ聖院で処方されるレベルだという。
俺が前世で暮らしていた世界じゃあり得ない話だな。
こっちじゃ臨床実験とかやらないのか?
まあ、魔力を含む魔草を使用した薬ってわけだから、あっちの世界の常識が通用しないってこともあるのだろうが、それにしたって怖いよなぁ。
――って、気にすべきはそこじゃなかった。
「俺の知るウォルトン・メルツァーロとは女好きで怠け者で陰険で性悪で最低のろくでなしという印象だったのだが、ここではまるっきり違うようだ」
「いえ、素行面ではかなり問題を抱えていたようなのであながち間違いではないかと」
「なるほど……」
教師たちもヤツが問題児という認識を持っているが、王家や公爵家と強いつながりを持つメルツァーロ家の人間だから強気に出られないのか。
……やはり腑に落ちない。
今は評価されているようだが、俺にはあのウォルトンがそんな凄いヤツなんてとても信じられなかった。
子どもの頃から自分の屋敷の中庭で魔草を育て、その効果を独自に研究・調査をしていたクレアならまだしも――
「あっ」
なんか今……閃いてしまったな。
「もしかして、ウォルトンはクレアに魔草の研究をさせているんじゃないか?」
「えっ!? そうなの!?」
自作のサンドウィッチを食べながら驚くコニー。
そんな彼女のために「例えばの話だ」と前置きをしてから続けた。
「俺はウォルトン・メルツァーロという人間を子どもの頃から知っている。ヤツはずる賢くはあっても勉強はからっきしだった」
「そ、そんなにひどかったんですか?」
「まあな。……とにかく、この情報の中に載っている実績を本当にヤツがひとりで築きあげたとは到底思えないし、逆に幼い頃から勉強熱心なクレアなら、これくらいやってのけるだろうと断言できる」
「となると、あとは決定的な証拠が必要ですね」
そうだ。
ヤツが不正をして今の地位を確立しているとするなら、この国の未来にも悪影響が及んでくるだろう。
メルツァーロ聖院はこの国の医療の中枢だ。
そこにあの男のような不純物が混ざると、一族が代々守り続けていた安全神話が崩壊してしまうし、国民もパニックになるだろう。
うちとしても代々お得意様として付き合いのあるメルツァーロ家が消滅するような事態になれば大打撃となってしまう。
「……やはり、メルツァーロ家の次期当主にはクレアが就任してくれないと――」
「おやおや、こんなところで優雅にランチタイムかい?」
「「「っ!?」」」
楽しいお昼休みに一番聞きたくないヤツの声がした。
「ウォルトン・メルツァーロ……先輩」
「久しぶりだなぁ、レーク。おまえの活躍は俺の耳にも届いているよ」
相変わらず大勢の女生徒を侍らせたウォルトンが、ニタニタと薄ら笑いを浮かべていた。
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