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第42話 闇に紛れて
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寮へ戻らなければならない時間が迫る中――俺は図書館にいた。
すでに周りは暗くなり、司書たちも仕事を終えて帰り支度を始めていた。
ちなみに、俺の現在地だが……図書館は図書館でも屋根の上に立っている。
切妻屋根じゃなくてよかったよ。
おかげで侵入がしやすい。
「さて……もう少ししたら動きだすか」
図書館から人がいなくなるのを確認してから、俺は禁忌書庫のある方向へと音を立てないよう細心の注意を払いつつ歩きだす。
この図書館はドーナッツ状になっている。
前に禁忌書庫を訪れた時、中庭のような場所があった。
禁忌書庫からしか中へは入れないため、あそこはクレア専用の場所と見て間違いない。
つまり、この屋根を伝って中庭に下りれば周囲にバレることなく禁忌書庫内部へと入れる。
あと、トリシア会長からこちらにとって追い風となる情報も得られた。
それは――クレアは寮生活をしておらず、この禁忌書庫の中で暮らしているということ。
これも前に訪れた際、「もしかしたらそうなんじゃないか」って思ったんだよな。
疑いを持ったのは部屋の数だった。
書庫というには、本と関係のない部屋がいくつかあり、生活用品もあった。前世の住居で例えるなら、マンションの一室みたいな印象を受けたのだ。
俺の読みは当たり、トリシア会長はクレアがあそこで寝泊まりをしていると教えてくれた。
しかし、めちゃくちゃ優遇されているな。
それだけ学園におけるメルツァーロ家の影響力が強いということだろう。
中庭に近づいていくと、一本の大きな木が見えた。
こいつを利用すれば安全に下まで行ける。
すべては事前にチェック済みなのだ。
というわけで無事に禁忌書庫の中庭に到着したわけだが……ここで思わぬ事態が。
中庭の一角に魔草を育てるための小さな畑があるのだが、その近くにクレアの姿があった。
発光石を埋め込んだランプの淡いに光に照らされている彼女の顔は寂しさを漂わせている。
というか、すぐ近くに俺が立っていることにすら気がついていないのか。
それほど何かを思い悩んでいる――俺にはそう映った。
「大丈夫か、クレア」
たまらず声をかけると、彼女はゆっくりとこちらへと振り返る。
やがて視界に俺を捉えると、その目は大きく見開かれていく。
「レ、レーク!? どうしてここに!?」
「君が心配だったから様子を見に来たんだ」
「で、でも、書庫へつながる扉はお兄様が厳重に施錠したって……」
お兄様、か。
やはり彼女はウォルトンによって強制的にこの書庫へ閉じ込められている状態なのか。
「屋根からだよ。この中庭の存在は、前に来た時に見て知っていたし」
ウォルトンが昔と変わらない冴えない男のままなら、直接つながっているあの扉を強化しても頭上から降りてくるって発送までは至らないだろうと読んでいたが、その通りだったとは。
けど、これで確信した。
やはりヤツは変わってなどいない。
クレアの力で成り上がっているだけだ。
「何があったんだ、クレア」
「そ、それは……」
「言ってくれ。俺は君の力になりたい。また昔のように仲良く遊び回れるような関係に戻りたいんだ」
「レーク……」
葛藤している。
クレアの心は大きく揺れていた。
……もう少しだ。
「困っている君を放っておけない。言ってくれ」
彼女の両肩に優しく手をかけ、真っ直ぐ目を見据えながら訴える。
直後、ふたつの翡翠色をした瞳が揺れた。
「ありがとう……レーク」
そう呟いた後、クレアは本心を語りだした。
すでに周りは暗くなり、司書たちも仕事を終えて帰り支度を始めていた。
ちなみに、俺の現在地だが……図書館は図書館でも屋根の上に立っている。
切妻屋根じゃなくてよかったよ。
おかげで侵入がしやすい。
「さて……もう少ししたら動きだすか」
図書館から人がいなくなるのを確認してから、俺は禁忌書庫のある方向へと音を立てないよう細心の注意を払いつつ歩きだす。
この図書館はドーナッツ状になっている。
前に禁忌書庫を訪れた時、中庭のような場所があった。
禁忌書庫からしか中へは入れないため、あそこはクレア専用の場所と見て間違いない。
つまり、この屋根を伝って中庭に下りれば周囲にバレることなく禁忌書庫内部へと入れる。
あと、トリシア会長からこちらにとって追い風となる情報も得られた。
それは――クレアは寮生活をしておらず、この禁忌書庫の中で暮らしているということ。
これも前に訪れた際、「もしかしたらそうなんじゃないか」って思ったんだよな。
疑いを持ったのは部屋の数だった。
書庫というには、本と関係のない部屋がいくつかあり、生活用品もあった。前世の住居で例えるなら、マンションの一室みたいな印象を受けたのだ。
俺の読みは当たり、トリシア会長はクレアがあそこで寝泊まりをしていると教えてくれた。
しかし、めちゃくちゃ優遇されているな。
それだけ学園におけるメルツァーロ家の影響力が強いということだろう。
中庭に近づいていくと、一本の大きな木が見えた。
こいつを利用すれば安全に下まで行ける。
すべては事前にチェック済みなのだ。
というわけで無事に禁忌書庫の中庭に到着したわけだが……ここで思わぬ事態が。
中庭の一角に魔草を育てるための小さな畑があるのだが、その近くにクレアの姿があった。
発光石を埋め込んだランプの淡いに光に照らされている彼女の顔は寂しさを漂わせている。
というか、すぐ近くに俺が立っていることにすら気がついていないのか。
それほど何かを思い悩んでいる――俺にはそう映った。
「大丈夫か、クレア」
たまらず声をかけると、彼女はゆっくりとこちらへと振り返る。
やがて視界に俺を捉えると、その目は大きく見開かれていく。
「レ、レーク!? どうしてここに!?」
「君が心配だったから様子を見に来たんだ」
「で、でも、書庫へつながる扉はお兄様が厳重に施錠したって……」
お兄様、か。
やはり彼女はウォルトンによって強制的にこの書庫へ閉じ込められている状態なのか。
「屋根からだよ。この中庭の存在は、前に来た時に見て知っていたし」
ウォルトンが昔と変わらない冴えない男のままなら、直接つながっているあの扉を強化しても頭上から降りてくるって発送までは至らないだろうと読んでいたが、その通りだったとは。
けど、これで確信した。
やはりヤツは変わってなどいない。
クレアの力で成り上がっているだけだ。
「何があったんだ、クレア」
「そ、それは……」
「言ってくれ。俺は君の力になりたい。また昔のように仲良く遊び回れるような関係に戻りたいんだ」
「レーク……」
葛藤している。
クレアの心は大きく揺れていた。
……もう少しだ。
「困っている君を放っておけない。言ってくれ」
彼女の両肩に優しく手をかけ、真っ直ぐ目を見据えながら訴える。
直後、ふたつの翡翠色をした瞳が揺れた。
「ありがとう……レーク」
そう呟いた後、クレアは本心を語りだした。
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