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第51話 決闘 ~その後~
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決闘から一夜が明けた。
書庫から出たクレアであったが、まだ寮に部屋は用意されていないため、この日は特別にコニーの部屋で夜を過ごした。
この一件でふたりはかなり仲を深めたらしく、授業が始まる直前まで仲良さそうに談笑していた。
クレア自身は学園生活にブランク――というか、入学してからまともに授業へ顔を出していなかったため、本人の希望もあって一年生からやり直すことになったらしい。
新入生に交じって授業を受けるというのは並大抵の覚悟ではできないだろう。
それだけクレアも腹を括って学園生活を……いや、囚われ続けていた自分の人生をやり直そうとしていた。
今回はきっと大丈夫だろう。
コニーという良き友人もいることだしな。
続いてはウォルトンについて。
結論から言うと、ヤツは学園を去った。
一身上の都合により自主退学という形を取ってはいるが、あれだけの数の生徒の前で白目をむいて気絶し、おまけに大股開きで失禁する姿までバッチリ目撃されている。
プライドの高いヤツにとってはこれ以上ない恥辱だろう。
ある意味、クレアの力に頼って威張り散らしていたという事実を告げられるよりよっぽどダメージは大きかったのかもしれない。
ただ、ウォルトンの退学によって俺の方にも大きな動きがあると踏んでいた。
何せ、うちの実家であるギャラード商会とメルツァーロ家はズブズブと関係だ。
おまけに立場的には向こうの方が強い。
そんなお得意様の息子を辱め、学園から追いだしたとなっては向こうも黙ってはいないだろう。
商会には何かしらの報復があると思われた。
もしかしたら、それがきっかけとなって俺は勘当されるかもしれない。
コニーたちはそのことを伝えてあるのだが、
「それでも私はレーク様についていくよ?」
「私もコニーと同じ。あなたのそばからは絶対に離れないわ」
「裏闘技場から救いだされた時から、私のこの両腕はレーク様に捧げておりますので」
みんなはついてきてくれると話してくれた。
商会を運営していくうえで、ギャラードの名は非常に重要となってくる。
だが、仮に家から追放されて学園にいられなくなったとしても、みんなと一緒ならどんな苦境も乗り越えいけるし、きっと成功するという自信があった。
どんな罰が下ろうとも覚悟はしていたが――結果はまさかのお咎めなし。
一応、屋敷に呼び出されてはおり、そこで叱責を受けるものだとばかり思っていたが、むしろなぜか褒められた。
話を聞いていくと、どうやらメルツァーロ家の運営する聖院は長期にわたって医療ミスを隠蔽していたり、貴族など金持ちの患者を優先したり、これまで表には出てこなかった悪評が次々と噴出しているらしい。
長年の付き合いとはいえ、これ以上は共倒れになる可能性があると踏んでいた父上は極秘のうちに聖院との契約を解除していたと教えてくれた。
「学園でそのような事態になっているとは知らなかった……もっと早くに教えてやるべきだったな」
「いえ、父上のお気持ちはよく分かります」
商人って生き方をしていく上で欠かせない要素のひとつ――それは取引相手の情報を守ること。
前世での言葉を借りれば個人情報ってヤツだな。
時には誰にも買っていることを他人に知られたくないって顧客もいる。
情報の漏洩は商人にとって致命傷にもなりかねない一大事だ。
たとえそれが実の息子であっても、軽々に顧客の情報は与えられない。
父上は実直に商人としての生き方を貫いたまでだ。
「メルツァーロは家としての寿命が尽きようとしている。ただ、おまえの話を聞く限り、ひとり娘のクレアはまだ毒牙にかかっていないようだな」
「彼女も被害者です。しかし、魔草薬師としての能力は素晴らしいものがあります」
「そのようだな。魔草薬師は国にとっても貴重な存在……昔からの付き合いもあるし、彼女はおまえに任せよう」
「ありがとうございます」
父上からも正式にクレアの加入を認めてもらえた。
ホッと胸を撫でおろしたのも束の間、屋敷から学生寮の自室へ戻ってきた俺にルチーナが一枚の手紙を手渡してきた。
「お手紙です」
「手紙だって? 誰からだ?」
「差出人は学園長からのようです」
「えっ!?」
学園長からの手紙だって?
これまでほとんど生徒の前に姿を見せてこなかった学園長がなぜ?
すべてはこの手紙の中に記されているってわけか。
書庫から出たクレアであったが、まだ寮に部屋は用意されていないため、この日は特別にコニーの部屋で夜を過ごした。
この一件でふたりはかなり仲を深めたらしく、授業が始まる直前まで仲良さそうに談笑していた。
クレア自身は学園生活にブランク――というか、入学してからまともに授業へ顔を出していなかったため、本人の希望もあって一年生からやり直すことになったらしい。
新入生に交じって授業を受けるというのは並大抵の覚悟ではできないだろう。
それだけクレアも腹を括って学園生活を……いや、囚われ続けていた自分の人生をやり直そうとしていた。
今回はきっと大丈夫だろう。
コニーという良き友人もいることだしな。
続いてはウォルトンについて。
結論から言うと、ヤツは学園を去った。
一身上の都合により自主退学という形を取ってはいるが、あれだけの数の生徒の前で白目をむいて気絶し、おまけに大股開きで失禁する姿までバッチリ目撃されている。
プライドの高いヤツにとってはこれ以上ない恥辱だろう。
ある意味、クレアの力に頼って威張り散らしていたという事実を告げられるよりよっぽどダメージは大きかったのかもしれない。
ただ、ウォルトンの退学によって俺の方にも大きな動きがあると踏んでいた。
何せ、うちの実家であるギャラード商会とメルツァーロ家はズブズブと関係だ。
おまけに立場的には向こうの方が強い。
そんなお得意様の息子を辱め、学園から追いだしたとなっては向こうも黙ってはいないだろう。
商会には何かしらの報復があると思われた。
もしかしたら、それがきっかけとなって俺は勘当されるかもしれない。
コニーたちはそのことを伝えてあるのだが、
「それでも私はレーク様についていくよ?」
「私もコニーと同じ。あなたのそばからは絶対に離れないわ」
「裏闘技場から救いだされた時から、私のこの両腕はレーク様に捧げておりますので」
みんなはついてきてくれると話してくれた。
商会を運営していくうえで、ギャラードの名は非常に重要となってくる。
だが、仮に家から追放されて学園にいられなくなったとしても、みんなと一緒ならどんな苦境も乗り越えいけるし、きっと成功するという自信があった。
どんな罰が下ろうとも覚悟はしていたが――結果はまさかのお咎めなし。
一応、屋敷に呼び出されてはおり、そこで叱責を受けるものだとばかり思っていたが、むしろなぜか褒められた。
話を聞いていくと、どうやらメルツァーロ家の運営する聖院は長期にわたって医療ミスを隠蔽していたり、貴族など金持ちの患者を優先したり、これまで表には出てこなかった悪評が次々と噴出しているらしい。
長年の付き合いとはいえ、これ以上は共倒れになる可能性があると踏んでいた父上は極秘のうちに聖院との契約を解除していたと教えてくれた。
「学園でそのような事態になっているとは知らなかった……もっと早くに教えてやるべきだったな」
「いえ、父上のお気持ちはよく分かります」
商人って生き方をしていく上で欠かせない要素のひとつ――それは取引相手の情報を守ること。
前世での言葉を借りれば個人情報ってヤツだな。
時には誰にも買っていることを他人に知られたくないって顧客もいる。
情報の漏洩は商人にとって致命傷にもなりかねない一大事だ。
たとえそれが実の息子であっても、軽々に顧客の情報は与えられない。
父上は実直に商人としての生き方を貫いたまでだ。
「メルツァーロは家としての寿命が尽きようとしている。ただ、おまえの話を聞く限り、ひとり娘のクレアはまだ毒牙にかかっていないようだな」
「彼女も被害者です。しかし、魔草薬師としての能力は素晴らしいものがあります」
「そのようだな。魔草薬師は国にとっても貴重な存在……昔からの付き合いもあるし、彼女はおまえに任せよう」
「ありがとうございます」
父上からも正式にクレアの加入を認めてもらえた。
ホッと胸を撫でおろしたのも束の間、屋敷から学生寮の自室へ戻ってきた俺にルチーナが一枚の手紙を手渡してきた。
「お手紙です」
「手紙だって? 誰からだ?」
「差出人は学園長からのようです」
「えっ!?」
学園長からの手紙だって?
これまでほとんど生徒の前に姿を見せてこなかった学園長がなぜ?
すべてはこの手紙の中に記されているってわけか。
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