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第54話【幕間】学園長の企み
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「あれがギャラード家の跡取り息子……なるほどねぇ。確かに勘は鋭いようだ」
レーク・ギャラードとトリシア・ハートランドのふたりを帰した後、私は彼との会話を振り返っていた。
彼の父親――つまり現ギャラード商会の代表を務めているロベルト・ギャラードとよく雰囲気が似ている。
表向きは大陸でも屈指の商人としてさまざまなビジネスに手を出し、軒並み成功へと導いているやり手と知られているが、裏では特務という名目で国から極秘の任務を与えられているという。
その特務の中には法の隙間をかいくぐって悪事を働く連中を同じような手段を使って懲らしめるというものもあるらしい。
やられたらやり返す。
単純明快な復讐法で秩序を守っているのだ。
ただ、内容が内容だけに、まだ息子であるレークには何も伝えていないだろう。
確かに彼は優秀だ。
クレイグ・ベッカードの件も、ウォルトン・メルツァーロの件も、いずれは処理をしなければいけない案件として秘密裏に動きだしていたのだが……彼はそんな学園側の動きを嘲笑うかのようにわずかな時間で解決してみせた。
商人という仕事柄、騎士団幹部と聖院経営者の家系であるふたりを学園から追いだすなどという行為に及べば、その先の取引で不利になるのは明白。
しかし、彼はそれに怖気づくことはなく見事にやってのけた。
今や学園内におけるレーク・ギャラードの評価は鰻登りだ。
果たして、彼はこのような結果になると初めから見越していたのだろうか。
それとも密かに裏で動き、そうなるように仕向けていたのか。
いずれにせよ、商人としての資質はかつてこの学園に在籍していたギャラード家のどの跡取り候補より優れたものに違いない。
――だからこそ、彼の扱いには細心の注意をしなければならない。
あのバカンスは、それを見極めるためのいわば試験という位置づけだ。
「掘り出し物になってくれたらいいんだけどねぇ」
目を細めつつ、私は執務机の上に置かれた三枚の紙に視線を移す。
そこにはとある三人の生徒のプロフィールが書かれていた。
その三人とは……この学園に通っている御三家の三人だ。
生徒会長を務めるトリシア・ハートランドについてはよく知っている。
彼女も父親によく似た性格だ。
実直で曲がったことが大嫌い。
力(物理)こそ正義。
脳味噌まで筋肉まみれかと思いきや、あれでなかなか策士な一面もある。
何もかもが父親に瓜二つだ。
残りのふたりに関しては……正直、判断に困る。
とはいえ、バカンス先でレーク・ギャラードは接触していない残りふたりとなった御三家の跡継ぎのうちのひとりと顔を合わせることになる。
その際、どういった反応を見せるのか……今から楽しみだ。
あとは、仕事で現地に行けない私に代わりってこのやりとりを見届けてもらう者を用意しなければならないな。
「おいで――アンナ」
「お呼びでしょうか」
こちらの呼びかけにすぐさま反応し、部屋の奥から出てきたひとりの女子生徒。
実はレークとトリシアがいた時もずっとこの学園長室で身を隠していたのだが……どうやらふたりともこの子の存在には気がつかなかったようだ。
「話は聞いていたね?」
「最初から最後まで」
「よろしい。では、当初の計画通り、あなたも彼らの後を追って現地へと入りなさい。……私の見立てでは、恐らくレーク・ギャラードは向こうで何かしらのトラブルに巻き込まれるはずだから、それをどう解決するのか記録をお願い」
「かしこまりました」
そう言い残すと、アンナはフッと姿を消す。
相変わらず影が薄いというか、こういった諜報活動のために生まれてきたような子だなぁと改めて感じた。
「さて……レーク・ギャラードが新学期にどのような姿となって学園に帰ってくるのか……楽しみに待つとしましょうか」
結果として彼が「相応しい」と判断できたら――私の計画の一端として駒に付け加えましょう。
ふふふ、夏休みの終わりが待ち遠しいわね。
レーク・ギャラードとトリシア・ハートランドのふたりを帰した後、私は彼との会話を振り返っていた。
彼の父親――つまり現ギャラード商会の代表を務めているロベルト・ギャラードとよく雰囲気が似ている。
表向きは大陸でも屈指の商人としてさまざまなビジネスに手を出し、軒並み成功へと導いているやり手と知られているが、裏では特務という名目で国から極秘の任務を与えられているという。
その特務の中には法の隙間をかいくぐって悪事を働く連中を同じような手段を使って懲らしめるというものもあるらしい。
やられたらやり返す。
単純明快な復讐法で秩序を守っているのだ。
ただ、内容が内容だけに、まだ息子であるレークには何も伝えていないだろう。
確かに彼は優秀だ。
クレイグ・ベッカードの件も、ウォルトン・メルツァーロの件も、いずれは処理をしなければいけない案件として秘密裏に動きだしていたのだが……彼はそんな学園側の動きを嘲笑うかのようにわずかな時間で解決してみせた。
商人という仕事柄、騎士団幹部と聖院経営者の家系であるふたりを学園から追いだすなどという行為に及べば、その先の取引で不利になるのは明白。
しかし、彼はそれに怖気づくことはなく見事にやってのけた。
今や学園内におけるレーク・ギャラードの評価は鰻登りだ。
果たして、彼はこのような結果になると初めから見越していたのだろうか。
それとも密かに裏で動き、そうなるように仕向けていたのか。
いずれにせよ、商人としての資質はかつてこの学園に在籍していたギャラード家のどの跡取り候補より優れたものに違いない。
――だからこそ、彼の扱いには細心の注意をしなければならない。
あのバカンスは、それを見極めるためのいわば試験という位置づけだ。
「掘り出し物になってくれたらいいんだけどねぇ」
目を細めつつ、私は執務机の上に置かれた三枚の紙に視線を移す。
そこにはとある三人の生徒のプロフィールが書かれていた。
その三人とは……この学園に通っている御三家の三人だ。
生徒会長を務めるトリシア・ハートランドについてはよく知っている。
彼女も父親によく似た性格だ。
実直で曲がったことが大嫌い。
力(物理)こそ正義。
脳味噌まで筋肉まみれかと思いきや、あれでなかなか策士な一面もある。
何もかもが父親に瓜二つだ。
残りのふたりに関しては……正直、判断に困る。
とはいえ、バカンス先でレーク・ギャラードは接触していない残りふたりとなった御三家の跡継ぎのうちのひとりと顔を合わせることになる。
その際、どういった反応を見せるのか……今から楽しみだ。
あとは、仕事で現地に行けない私に代わりってこのやりとりを見届けてもらう者を用意しなければならないな。
「おいで――アンナ」
「お呼びでしょうか」
こちらの呼びかけにすぐさま反応し、部屋の奥から出てきたひとりの女子生徒。
実はレークとトリシアがいた時もずっとこの学園長室で身を隠していたのだが……どうやらふたりともこの子の存在には気がつかなかったようだ。
「話は聞いていたね?」
「最初から最後まで」
「よろしい。では、当初の計画通り、あなたも彼らの後を追って現地へと入りなさい。……私の見立てでは、恐らくレーク・ギャラードは向こうで何かしらのトラブルに巻き込まれるはずだから、それをどう解決するのか記録をお願い」
「かしこまりました」
そう言い残すと、アンナはフッと姿を消す。
相変わらず影が薄いというか、こういった諜報活動のために生まれてきたような子だなぁと改めて感じた。
「さて……レーク・ギャラードが新学期にどのような姿となって学園に帰ってくるのか……楽しみに待つとしましょうか」
結果として彼が「相応しい」と判断できたら――私の計画の一端として駒に付け加えましょう。
ふふふ、夏休みの終わりが待ち遠しいわね。
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