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第224話 アダム村の感想
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その後、俺とシルヴィアはライザさんにアダム村を案内した。
――とはいえ、まだまだ観光名所と呼べるようなところはないため、領民が日頃どんな生活をしているのか、それくらいしか見所がない気がする。
しかし、それがライザさんにとって大きな刺激となったようだ。
「素晴らしいわね……」
フルズさんが運営するギルドへ足を運んだライザさんは、その活気溢れる様子に感動していた。
「私も仕事で何度かギルドを訪問したことはあるけど、ここほど賑やかでハツラツとしたところは今まで一度も見たことがないわ」
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
俺としては他の冒険者ギルドってあんまり見たことがないので比較することはできないが、仕事柄、ギルドをよく訪れるというライザさんが言うなら間違いないだろう。
まあ、これもすべてはフルズさんのおかげだ。
冒険者としての経験豊富な彼がいてくれたからこそ、うまく回っていると評して過言ではない。少なくとも、俺が直接ギルドを仕切るよりずっとうまくやってくれている……感謝しかないよ。
次に訪れたのは牧場だった。
「あれは紅蓮牛?」
「えぇ、山で野生化していた彼らにお願いして、こちらに移住してもらいました」
「? お願い? 捕獲ではなくて?」
俺の言葉に対し、キョトンとしているライザさん。
……言われてみれば、野生化した動物にお願いして来てもらうって、はたから聞いていたら訳が分からないな。その辺は群れのボスであるフレイムが賢かったという点と、山の精霊族の影響が大きいだろう。
「紅蓮牛の乳製品はアスコサでも人気みたいですし、軌道に乗ったら家畜の数を少しずつ増やしていこうと思っています」
「なるほど。浮かれることなく、しっかりと先を見据えているようね」
またもお褒めの言葉をいただいた。
牧場で紅蓮牛を仕切っているボスのフレイムも、どこか誇らしげに映る。
それから、俺は立ち入りが難しい場所――ムデル族の集落や、山猫の獣人族の村についても話をしていく。
ライザさんはそのどれにも深い関心を示し、熱心に聞き入っていた。
「他民族や他種族とそこまで交流を深めているなんて……」
だんだん、ライザさんの顔色が変わってきたように思う。
最初は普通に驚いていただけだったが、ムデル族や山猫の獣人族の話をし始めると、なんだか顔が強張っていったような?
ともかく、好意的に捉えられてはいるようなので、特に心配することはなさそうだ。
軽く見て回ってすぐに帰る予定だったが、それからも視察は続き、気がついたら夕方になっていた。都市アスコサへ戻って宿を取るという手も考えたようだが、それよりもうちの屋敷に泊まっていってもらうことにした。
実力はあるとはいえ、彼女もまた貴族。
アスコサは比較的治安の良い町ではあるが、それでも立場を考えたら心配だからな。
その話を持ちかけると、
「いいの!?」
と、食い気味に聞かれた。
実はこっそり期待していたようだな。
本人も乗り気みたいだし、今日はこのまま泊まっていてもらおう。
……というか、明日のパーティーの準備は大丈夫なのだろうか。
――とはいえ、まだまだ観光名所と呼べるようなところはないため、領民が日頃どんな生活をしているのか、それくらいしか見所がない気がする。
しかし、それがライザさんにとって大きな刺激となったようだ。
「素晴らしいわね……」
フルズさんが運営するギルドへ足を運んだライザさんは、その活気溢れる様子に感動していた。
「私も仕事で何度かギルドを訪問したことはあるけど、ここほど賑やかでハツラツとしたところは今まで一度も見たことがないわ」
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
俺としては他の冒険者ギルドってあんまり見たことがないので比較することはできないが、仕事柄、ギルドをよく訪れるというライザさんが言うなら間違いないだろう。
まあ、これもすべてはフルズさんのおかげだ。
冒険者としての経験豊富な彼がいてくれたからこそ、うまく回っていると評して過言ではない。少なくとも、俺が直接ギルドを仕切るよりずっとうまくやってくれている……感謝しかないよ。
次に訪れたのは牧場だった。
「あれは紅蓮牛?」
「えぇ、山で野生化していた彼らにお願いして、こちらに移住してもらいました」
「? お願い? 捕獲ではなくて?」
俺の言葉に対し、キョトンとしているライザさん。
……言われてみれば、野生化した動物にお願いして来てもらうって、はたから聞いていたら訳が分からないな。その辺は群れのボスであるフレイムが賢かったという点と、山の精霊族の影響が大きいだろう。
「紅蓮牛の乳製品はアスコサでも人気みたいですし、軌道に乗ったら家畜の数を少しずつ増やしていこうと思っています」
「なるほど。浮かれることなく、しっかりと先を見据えているようね」
またもお褒めの言葉をいただいた。
牧場で紅蓮牛を仕切っているボスのフレイムも、どこか誇らしげに映る。
それから、俺は立ち入りが難しい場所――ムデル族の集落や、山猫の獣人族の村についても話をしていく。
ライザさんはそのどれにも深い関心を示し、熱心に聞き入っていた。
「他民族や他種族とそこまで交流を深めているなんて……」
だんだん、ライザさんの顔色が変わってきたように思う。
最初は普通に驚いていただけだったが、ムデル族や山猫の獣人族の話をし始めると、なんだか顔が強張っていったような?
ともかく、好意的に捉えられてはいるようなので、特に心配することはなさそうだ。
軽く見て回ってすぐに帰る予定だったが、それからも視察は続き、気がついたら夕方になっていた。都市アスコサへ戻って宿を取るという手も考えたようだが、それよりもうちの屋敷に泊まっていってもらうことにした。
実力はあるとはいえ、彼女もまた貴族。
アスコサは比較的治安の良い町ではあるが、それでも立場を考えたら心配だからな。
その話を持ちかけると、
「いいの!?」
と、食い気味に聞かれた。
実はこっそり期待していたようだな。
本人も乗り気みたいだし、今日はこのまま泊まっていてもらおう。
……というか、明日のパーティーの準備は大丈夫なのだろうか。
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