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第257話 帰路
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結局、フィーネの正体について決定的な事実を掴むことはできなかった。
とはいえ、彼女がブラックと呼ばれる謎の男と組織に狙われているという事実だけはハッキリとした。
おまけに、ブラックという男が仕切る組織については騎士団が今後も継続的に調査をしていくと王国議会で決定されたらしく、王都を離れる前にわざわざマーシャルさんが宿屋を訪ねてまで伝えてくれた。
「俺はバーロンの警備をしつつ、ブラックの足取りを追う。あの男がすでにバーロンから離れたのは間違いないだろうが……念のためだ」
「分かりました。テレイザさんのことをよろしくお願いします」
「う、うむ」
珍しく、マーシャルさんの歯切れが悪い。
やっぱり、恋人であるテレイザさんの名前を出したからかな?
これからバーロンへ向かうというマーシャルさんを見送った後、俺たちもジェロム地方へ帰る準備を進めていく。
「王都かぁ……今度はもっとゆっくり訪ねたいね」
「まったくだな」
ムデル族のオティエノさんや、山猫の獣人族であるディランさんは王都から出るのを名残惜しそうにしていた。
ふたりの希望を叶えたいところではあるが……領主としての務めが残っている。バーロンへ出張していた間、仕事はいっぱいたまっているだろうし、そっちを片づけてから、改めて戻ってこよう。
「領主殿、馬車の準備が整いました」
「あっ、ありがとう、ダイールさん」
いよいよジェロム地方へ帰る時がやってきた。
思わぬ形で泊まりの旅になってしまったが、これでようやく戻れるか。
今回はフィーネも一緒ということで、王国騎士団が護衛についてくれる。それ自体はありがたいが……問題はその規模だ。
まあ、フィーネが狙われているのは事実だから、これだけ警戒するのは無理もない。仮に、彼女を狙ってまた何者かが襲撃してきたら、逆に捕らえて情報を吐かせようという魂胆だろう。
「さすがに今回はのんびり楽しい帰り道ってわけにはいかないか」
「ご、ごめんなさい……私のせいで」
「いや! フィーネのせいじゃないよ!」
「そうだ。悪いのはフィーネを狙ってくるヤツだ。それも組織ぐるみなんて……絶対に許せない」
「シルヴィア様……」
俺の迂闊な発言で落ち込んでしまったフィーネをシルヴィアがうまくフォローしてくれた。さすがは女子同士。シルヴィアの専属メイドっていうのもアリだな。
――さて、緊張感漂う移動であったが、ジェロム地方へ到着するまでの間に俺たちを狙ってくる者はひとりもいなかった。
バーロン郊外で襲ってきた地属性魔法使いのオルデンが捕まったというのが連中をためらわせる要因となっているようだ。
しかし、まだ安心はできない。
現在、マーシャルさんが全力でブラックを追ってくれているが、身柄が拘束されるまでどれくらいかかるか皆目見当もつかない。
とにかく、それまでは新しいメイドとして働いてもらうとしよう。
エイーダ辺りは後輩ができたって喜びそうだな。
「ロイス! 霊峰ガンティアが見えてきたぞ!」
テンション高めにシルヴィアが叫ぶ。
「ようやく帰ってこられたか……」
見慣れた光景を目の当たりにして、ようやく心から落ち着けた。
とはいえ、やることはたくさんある。
ここからは俺本来の仕事――領主として、しっかり働いていかないとな。
とはいえ、彼女がブラックと呼ばれる謎の男と組織に狙われているという事実だけはハッキリとした。
おまけに、ブラックという男が仕切る組織については騎士団が今後も継続的に調査をしていくと王国議会で決定されたらしく、王都を離れる前にわざわざマーシャルさんが宿屋を訪ねてまで伝えてくれた。
「俺はバーロンの警備をしつつ、ブラックの足取りを追う。あの男がすでにバーロンから離れたのは間違いないだろうが……念のためだ」
「分かりました。テレイザさんのことをよろしくお願いします」
「う、うむ」
珍しく、マーシャルさんの歯切れが悪い。
やっぱり、恋人であるテレイザさんの名前を出したからかな?
これからバーロンへ向かうというマーシャルさんを見送った後、俺たちもジェロム地方へ帰る準備を進めていく。
「王都かぁ……今度はもっとゆっくり訪ねたいね」
「まったくだな」
ムデル族のオティエノさんや、山猫の獣人族であるディランさんは王都から出るのを名残惜しそうにしていた。
ふたりの希望を叶えたいところではあるが……領主としての務めが残っている。バーロンへ出張していた間、仕事はいっぱいたまっているだろうし、そっちを片づけてから、改めて戻ってこよう。
「領主殿、馬車の準備が整いました」
「あっ、ありがとう、ダイールさん」
いよいよジェロム地方へ帰る時がやってきた。
思わぬ形で泊まりの旅になってしまったが、これでようやく戻れるか。
今回はフィーネも一緒ということで、王国騎士団が護衛についてくれる。それ自体はありがたいが……問題はその規模だ。
まあ、フィーネが狙われているのは事実だから、これだけ警戒するのは無理もない。仮に、彼女を狙ってまた何者かが襲撃してきたら、逆に捕らえて情報を吐かせようという魂胆だろう。
「さすがに今回はのんびり楽しい帰り道ってわけにはいかないか」
「ご、ごめんなさい……私のせいで」
「いや! フィーネのせいじゃないよ!」
「そうだ。悪いのはフィーネを狙ってくるヤツだ。それも組織ぐるみなんて……絶対に許せない」
「シルヴィア様……」
俺の迂闊な発言で落ち込んでしまったフィーネをシルヴィアがうまくフォローしてくれた。さすがは女子同士。シルヴィアの専属メイドっていうのもアリだな。
――さて、緊張感漂う移動であったが、ジェロム地方へ到着するまでの間に俺たちを狙ってくる者はひとりもいなかった。
バーロン郊外で襲ってきた地属性魔法使いのオルデンが捕まったというのが連中をためらわせる要因となっているようだ。
しかし、まだ安心はできない。
現在、マーシャルさんが全力でブラックを追ってくれているが、身柄が拘束されるまでどれくらいかかるか皆目見当もつかない。
とにかく、それまでは新しいメイドとして働いてもらうとしよう。
エイーダ辺りは後輩ができたって喜びそうだな。
「ロイス! 霊峰ガンティアが見えてきたぞ!」
テンション高めにシルヴィアが叫ぶ。
「ようやく帰ってこられたか……」
見慣れた光景を目の当たりにして、ようやく心から落ち着けた。
とはいえ、やることはたくさんある。
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