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第278話 夜の学園

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「ど、どうなっているんだ……?」

 俺とシルヴィアはその場に立ち尽くし、動けなくなった。
 さっきまで通ってきた道が跡形もなく消えていたのだから無理もないのだが……冷静にこの状況を分析すると――原因は魔法か。

「ロ、ロイス、道が……」
「魔法によるものだろうな。……恐らく、俺が使うのと同じ無属性魔法だ」
「えっ!?」

 シルヴィアは驚いたような声をあげる。
 ……まあ、周辺の植物の成長を促進させて道を茂みで埋めてしまったという線もなくはないのだが、それよりもやはり無属性魔法――その中でも幻覚魔法の類だろうな。

 俺たちは整備された道を通ってきたつもりだが、実際は茂みをかき分けるようにしてここまで来たってわけか。
 だとしたら、誰が俺たちふたりを連れてきたのだろう。
 
「もしかして……」

 俺はある予感に導かれて、探知魔法を発動させる。
 すると、驚くべき事実が発覚した。

「まずいな……」
「ど、どうかしたのか?」
「この森全体に結界魔法が展開している。外部から魔力をたどって俺たちの存在を確認することは難しいぞ」
「じゃ、じゃあ」
「俺たちは……孤立無援の状態だ」

 この森に閉じ込められたってわけか……しかし、そんなことをして一体何をしようっていうんだ?
 そもそも、どうやってこの学園の中に侵入してきた?
 俺たちを狙う理由も分からないし……これは想像以上に厄介な状況だな。

「相手が何を考えているのか読めないけど……そろそろこちらに接触を試みる頃か」
「こちらに好意的な相手とは思えないな」
「同感だ」

 俺とシルヴィアは互いに戦闘態勢を取る。
 と言っても、俺の場合は彼女のサポート役になるだろう。無属性魔法には、他の属性魔法のように直接的な攻撃手段となる魔法はない。相手の動きを封じたり、味方を回復させたりするのが主な役目だ。

 ――だが、幻覚魔法を使ったということは、相手も無属性魔法を扱う者である可能性が非常に高い。そうなると、俺の魔法に対しても即座に対策を講じることができるだろう。それなりの知識は持っているはずだからな。

 学園の中で孤立した俺たちは、それを仕掛けた張本人の登場を待った。
 しばらくすると、

 ガシャン。
 ガシャン。

 静寂に包まれた森に響き渡る、重量感のある音。
 それは、俺がこの森へ足を踏み入れるきっかけとなった音だ。

「来たぞ、シルヴィア」
「ああ。こちらはいつでも準備OKだ」

 シルヴィアに臆した様子はない。
 頼もしい限りだ。

 さて……俺たちをここに招き容れた者の正体は、果たして噂の青騎士なのか――その正体が今明らかとなる。
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