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【はみだし番外編】※展開バレ有
亡き友人(違)の怨霊が、私をファンシー趣味に誘導してくる(違)
しおりを挟むその男の周囲だけ、空気がどうも淀んでいる気がする。
カラフルな子供服売り場の前で、フードを深くかぶった黒いローブの長身の男が、真顔でプリチーな商品を吟味している。
それ自体は何も問題はないはずなのだが、周囲のカップルや子連れの母親らは、その不気味な男を気味悪がって距離をとっていた。
男はその冷たい目線を特に気にせず、可愛らしい犬猫のプリチーな服やグッズを手にとって眺めている。コップに描かれた、下手くそなユル可愛い犬猫のイラストを真顔で凝視しており、その鋭い眼に射抜かれ続けているユルい犬猫がだんだん可哀想に見えてくる。
オージュ・ウォゲは、これまでの人生の中でいわゆる『可愛いもの』というものに、さほど興味がなかった。むしろ、真逆のものである『怖いもの』の方を好んで見たり、選んだり、買ったりしてきた。
だが、さすがに『友人の子供』に自分のその悪趣味を押し付けるわけにはいかない……とは、実は微塵も思っていなかった。本音を言えば『頭に斧が刺さって白目を剥いている熊のぬいぐるみ』『歩く度に断末魔を上げる靴』などの怖い、不気味なものを平気であげたかった。
しかし、母親が『その子にあげるおもちゃや服』のデザインが、あまりにも子供らしくない無機質……シンプルなものすぎて、そんな状態で『自身のホラー趣味』を押し付けるのは、どうもその子の成長にとってバランスが悪い気がした。
その子の父親が健在なら、きっと今、この売り場にあるようなファンシー可愛いものを我が子に買い与えていただろう。
そうだったら、自身は遠慮なくホラー趣味のものをその子にプレゼントして、その父親に壮絶な拒否反応をされるのを楽しんだろうに。最悪、ひと笑いとれれば己が買った趣味のものなぞ、とっとと捨ててくれて構わなかった。
が、その父親がいないので何故か自然に自分が『そのファンシー趣味の父親代わり』として、その子にあげるプレゼントを選んでいた。
その子の父親は今、任務として命を懸けた大事な『遠出』をしている。遠出をしている時に、その子が産まれた。
そんな、やっとの思いで帰国し、初めて我が子に会った時にシンプル──もしくは、自身のホラー趣味にまみれたような子供だったら……と思うと、父親が可哀想に思えたのだ。なんとなく。……なんとなく。
まぁ、最終的にその子が『母親の趣味であるシンプル風』か『オージュが父親代わりに与えてみた可愛い系』のどちらを好むかは、わからないが。
ただ、幼少期は『可愛いもの』に触れていてほしい、と思う。ホラー趣味・悪趣味なものなぞ、大きくなってから知って、触れて汚れていってほしいとオージュ・ウォゲは思う。
ホラー作家であるオージュ風に言うと『切断した下半身の断面から容赦なく手を突っ込んで、残りの上半身を強制的に蠢かせる猫型の人形(※パペット)』と『穴を開けられた首に紐を、千切られた足の代わりにタイヤを接着され、主の意のままに引っ張られる事でしか動くことが出来なくなった哀れなアヒル』のおもちゃを買う事にした……のと『猫耳フード付きのモコモコ寝間着』も気になった。
裁縫知識に疎いオージュには材質すらよくわからなかったが、とにかくそのモコモコは柔らかく、触っているだけで幸福感が湧き出てきて思わずニヤけそうになるものだった。フードの猫耳が可愛い。
最近のその子は、立って歩くようにもなってきた。防具としていいのではなかろうか、と安易にそう思った。これを着ていれば、柱やテーブルにぶつかってもあまり痛くなさそうだ。そして、フードの猫耳が可愛い。
──猫耳が可愛い。
自分でも意外だったが、どうにも可愛い。たかが、ちょっとした突起物のはずなのに妙に気になった。
最初は、こんな場違いなプリチー売り場にいること自体がまぁまぁ苦痛だったが、慣れる(開き直る)とそうでもなかった。──自分用にも、何か買ってもいいかもしれない。
なんだか、ファンシー趣味のその友人が実は死んでて、その怨念が自身に取り憑いたのかとすら思う程の自身の嗜好の変化に驚いた。
──そうか。奴は死んだのか。
オージュはしみじみと、身勝手に友人を脳内で死んだ事にした。が、勿論そんな事はあるはずない。奴はシンプルに強いのだ。死なん死なん。
奴が生きてても笑うし、死んでても笑う。奴がどうなっていようが、まぁ笑い飛ばす自信があった。
この時は。
購入後、早速その子の母親に「何でそんなよく来るのよ」と、お決まりに毒づかれながら、その息子におもちゃや猫耳モコモコ寝間着をプレゼントした。
「……オージュさん、まるでウチの人みたいな趣味のもの買ってくるわねぇ」
母親がそう気味悪がるが、無視をして笑顔で子供に寝巻きを着せようとして「うちの子に触るな!」と、キレられる(想定範囲内のツッコミ)。
母親が自身の趣味の『無難でシンプルなつまらない幼児服』をその子から脱がせ、オージュ……その父親が買ってきそうな猫耳寝巻きを着せてあげた。
「………………ん゙」
オージュの想像以上に『その子+モコモコ猫耳寝巻き』が愛らしくて、思わず呻く。
モコモコふわふわとした材質に囲まれた、滑らかなぷにスベ肌の素朴な顔とのコントラストが良い。中に履いている布おむつのせいで、より膨張しているように見えるプリっと、モコっとした尻が愛らしい。
悪く言えば、ぶりっ子……少し大きくなった時に着たら恥ずかしいようなデザインの代物を、キョトンとした顔で着こなしているシュールさもたまらなかった。
母親の方も「あら、可愛い!」と喜んだが、なら最初からそういうの買ってやれよ、とオージュは心中つっこんだ。
以降、オージュは父親代わりに『ファンシーなもの』を時折、その子に貢いだ。稀に、その中に自身の趣味ののものも混ぜて。
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