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プロローグ 命、燃ゆる日
01 生まれ変わるモブメイド 前編
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「ちょっと、どういう事、クラウン王子! ワタクシとの婚約を破棄するだなんて、どういう了見よ?」
「文字通りの意味だヴァイオレッタ。君との婚約は破棄。部屋の外で待っている君が連れて来たメイド達と共に王宮から出て行ってもらう」
王宮の一室にて、艶やかな紫髪が揺れる。紅い双眸を燃やし、鬼気迫る表情で男に迫る女性は侯爵令嬢ヴァイオレッタ。一方、クラウン王子と呼ばれた男性は、突きつけた事実がさも当然の結果だと言わんばかりに肩を竦ませています。
「どうしてあんな小娘と? 弱小国のあんな王女と結ばれても、あなたにとって何のメリットもないわよ?」
「メリットか……それを言うならば、お前と結ばれる事に俺は何の得も感じる事はないぞ?」
「言うわねクラウン。でも、残念だわ。ワタクシとあなたの相性は、少なくとも悪くないと思っていたのだけれど?」
「何の話だ? 普段は強気の癖に、夜になるとお前が一方的に腰を振っていただけだろう?」
「何よ! 愛してるって言葉は嘘だったって言うの?」
「嗚呼、愛していたさ。だが、真実の愛は別にあった」
部屋の外では、ヴァイオレッタの専属メイド達が何事かと扉の隙間から二人の様子を窺っています。すると、内部で奥の部屋と繋がっている扉が開き、橙色のウェーブがかった髪を靡かせた女性が入って来ます。
申し訳なさそうな表情でクラウン王子とヴァイオレッタ令嬢の顔を交互に見る女性。
ヴァイオレッタの怒りは頂点に達し……。
「なっ、マーガレット王女!? どうしてあなたが王子の寝室へ居る訳?」
「申し訳ございません、ヴァイオレッタ様。盗み聞きをするつもりはなかったのです。えっと、昨日からこのお部屋に宿泊しておりまして……」
「それはどういう……」
ヴァイオレッタの両拳が揺れる中、王子は扉の前に立っていたマーガレットを手招きする。そして、彼女の腰へ手を回し、そのまま自身の身体へ抱き寄せ、そのまま己の口元を重ねたのです。
「こういう事だよ、ヴァイオレッタ」
「……」
「今日中にメイド達と荷物をまとめて出て行ってくれ。でないと、王家への不法侵入で騎士団を呼ぶ事になってしまう」
「……わかったわ」
下を向いたまま一歩一歩、歩を進めるヴァイオレッタ令嬢。この時、ヴァイオレッタの脳裏には、憤怒、悔恨、怨嗟、どの言葉を並べても言い表せないほどの、様々な感情が渦巻いていた事でしょう。王子の前で恭しく一礼するヴァイオレッタ。『ごめんあそばせ』と小声で呟いた後、マーガレット王女の前へ立ち、そのまま彼女の頬へ平手打ちをしたのです!
「この、泥棒猫!」
「ヴァイオレッタ!」
「いいんです、王子」
王子がヴァイオレッタの腕を掴もうとするが、マーガレット王女がそれを引き留める。
そのまま二人に背を向けて、部屋を出る彼女。部屋を出た先には世話役として彼女の家から付いて来た数十名のメイド達。第一メイドである銀髪のメイド――ローザが目元へ雫を溜めていた彼女へハンカチを渡します。
「ヴァイオレッタ様……」
「結構よ。さ、皆。お城の生活も飽き飽きしていたところだったから丁度よかったわ。カインズベリー家へ帰るわよ」
この時の笑顔は気高く、眩しく、少しだけ寂しそうで……。
何時、何時でも高貴であれ――
ヴァイオレッタ・ロゼ・カインズベリーは此処、クイーンズヴァレー王国の有力貴族であるカインズベリー侯爵家の令嬢でした。
艶やかな紫髪と紅い瞳、美しい美貌を兼ね備え、大人の魅力でその存在感を国民へ見せつけていた彼女は、王国のクラウン・アルヴァート第一王子の許嫁であり、王宮で生活を始めて以降は、王子とも愛し合っていたという。
しかし、隣国ミュゼファイン王国の王女様、マーガレット・ミュゼ・クオリアと社交界で出逢ってから、全てが変わってしまった。元々高圧的な態度で周囲の女性を敵に回していたヴァイオレッタは、貴族の間では、悪役令嬢として有名な存在。マーガレットを味方する者が増え、気づけば婚約破棄を申し渡されたという訳なのです。
納得のいく筈はない。それでも彼女は誰の前で涙を見せる事もなく、最後まで凛として真っ直ぐだった。カインズベリー侯爵家は国を乗っ取ろうとしているというあらぬ罪を着せられ、国民からの信用も失ったヴァイオレッタ侯爵令嬢は、こうしてメイド達と共に王宮から追放されてしまったのです。
そして……、屋敷へ戻った数日後。
わたしたちにとって運命の日となった、その日がやって来たのでした――
◇◇◇
Webにある数ある作品の中から見つけていただき、お読みいただきありがとうございます。
今回異世界恋愛ジャンル作品として連載を開始したいと思います。
(小説家になろう様、ノベルアッププラス様で既に完結している作品となりますので、毎日投稿でお届けします)
続きが気になるという方は是非、ブックマークをよろしくお願いします。
また、この度第15回恋愛小説大賞にもエントリーさせていただきましたので、面白いと思っていただけたなら、是非投票のほど、よろしくお願いします。
「文字通りの意味だヴァイオレッタ。君との婚約は破棄。部屋の外で待っている君が連れて来たメイド達と共に王宮から出て行ってもらう」
王宮の一室にて、艶やかな紫髪が揺れる。紅い双眸を燃やし、鬼気迫る表情で男に迫る女性は侯爵令嬢ヴァイオレッタ。一方、クラウン王子と呼ばれた男性は、突きつけた事実がさも当然の結果だと言わんばかりに肩を竦ませています。
「どうしてあんな小娘と? 弱小国のあんな王女と結ばれても、あなたにとって何のメリットもないわよ?」
「メリットか……それを言うならば、お前と結ばれる事に俺は何の得も感じる事はないぞ?」
「言うわねクラウン。でも、残念だわ。ワタクシとあなたの相性は、少なくとも悪くないと思っていたのだけれど?」
「何の話だ? 普段は強気の癖に、夜になるとお前が一方的に腰を振っていただけだろう?」
「何よ! 愛してるって言葉は嘘だったって言うの?」
「嗚呼、愛していたさ。だが、真実の愛は別にあった」
部屋の外では、ヴァイオレッタの専属メイド達が何事かと扉の隙間から二人の様子を窺っています。すると、内部で奥の部屋と繋がっている扉が開き、橙色のウェーブがかった髪を靡かせた女性が入って来ます。
申し訳なさそうな表情でクラウン王子とヴァイオレッタ令嬢の顔を交互に見る女性。
ヴァイオレッタの怒りは頂点に達し……。
「なっ、マーガレット王女!? どうしてあなたが王子の寝室へ居る訳?」
「申し訳ございません、ヴァイオレッタ様。盗み聞きをするつもりはなかったのです。えっと、昨日からこのお部屋に宿泊しておりまして……」
「それはどういう……」
ヴァイオレッタの両拳が揺れる中、王子は扉の前に立っていたマーガレットを手招きする。そして、彼女の腰へ手を回し、そのまま自身の身体へ抱き寄せ、そのまま己の口元を重ねたのです。
「こういう事だよ、ヴァイオレッタ」
「……」
「今日中にメイド達と荷物をまとめて出て行ってくれ。でないと、王家への不法侵入で騎士団を呼ぶ事になってしまう」
「……わかったわ」
下を向いたまま一歩一歩、歩を進めるヴァイオレッタ令嬢。この時、ヴァイオレッタの脳裏には、憤怒、悔恨、怨嗟、どの言葉を並べても言い表せないほどの、様々な感情が渦巻いていた事でしょう。王子の前で恭しく一礼するヴァイオレッタ。『ごめんあそばせ』と小声で呟いた後、マーガレット王女の前へ立ち、そのまま彼女の頬へ平手打ちをしたのです!
「この、泥棒猫!」
「ヴァイオレッタ!」
「いいんです、王子」
王子がヴァイオレッタの腕を掴もうとするが、マーガレット王女がそれを引き留める。
そのまま二人に背を向けて、部屋を出る彼女。部屋を出た先には世話役として彼女の家から付いて来た数十名のメイド達。第一メイドである銀髪のメイド――ローザが目元へ雫を溜めていた彼女へハンカチを渡します。
「ヴァイオレッタ様……」
「結構よ。さ、皆。お城の生活も飽き飽きしていたところだったから丁度よかったわ。カインズベリー家へ帰るわよ」
この時の笑顔は気高く、眩しく、少しだけ寂しそうで……。
何時、何時でも高貴であれ――
ヴァイオレッタ・ロゼ・カインズベリーは此処、クイーンズヴァレー王国の有力貴族であるカインズベリー侯爵家の令嬢でした。
艶やかな紫髪と紅い瞳、美しい美貌を兼ね備え、大人の魅力でその存在感を国民へ見せつけていた彼女は、王国のクラウン・アルヴァート第一王子の許嫁であり、王宮で生活を始めて以降は、王子とも愛し合っていたという。
しかし、隣国ミュゼファイン王国の王女様、マーガレット・ミュゼ・クオリアと社交界で出逢ってから、全てが変わってしまった。元々高圧的な態度で周囲の女性を敵に回していたヴァイオレッタは、貴族の間では、悪役令嬢として有名な存在。マーガレットを味方する者が増え、気づけば婚約破棄を申し渡されたという訳なのです。
納得のいく筈はない。それでも彼女は誰の前で涙を見せる事もなく、最後まで凛として真っ直ぐだった。カインズベリー侯爵家は国を乗っ取ろうとしているというあらぬ罪を着せられ、国民からの信用も失ったヴァイオレッタ侯爵令嬢は、こうしてメイド達と共に王宮から追放されてしまったのです。
そして……、屋敷へ戻った数日後。
わたしたちにとって運命の日となった、その日がやって来たのでした――
◇◇◇
Webにある数ある作品の中から見つけていただき、お読みいただきありがとうございます。
今回異世界恋愛ジャンル作品として連載を開始したいと思います。
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