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第一幕 モブメイド令嬢誕生編
17 サプライズには慣れていません
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メイド選抜試験も終わり、王宮は新しい年を迎える準備と、ワタクシがヴァイオレッタを迎え入れるための準備に明け暮れる事となる。
生前モブメイドだったわたしはこの頃、ヴァイオレッタ様との夢の王宮生活に心踊らせていたのを覚えている。
王宮へ行ってからの問題は山積みなのであるが、今は眼前のことに集中しようと思う。
何の事かって?
我が国では一週間後の12月24日、一年を終える前に信仰する女神――ミューズ様からの祝福に感謝し、来年の平穏を祈る星降祭というお祭りがあるのだ。
街は光の魔法で星屑の装飾を施し、聖なる樹を飾り付ける。本来であれば、侯爵家で過ごす予定だったのだが、結果的に王子からの誘いもあり、この日は王宮で過ごす予定となってしまった。
そして今、何故かワタクシは外套を纏い、身を隠した状態で街を歩いている。腰あたりに手を添え、同じく外套を纏っている男はワタクシの隣をしっかりキープしている。
「ふ、意外とバレんものだな」
「ちょっと! ワタクシを街へ連れていくだなんて聞いてませんわよ?」
「ちょっと買いたいものがあったのでな。よいではないか、たまにはこういうのも」
「よくないわよ、こんなところにあなたが居るのがバレると大混乱になるわよ?」
この日は父が、国王へ侯爵家の調度品や宝飾品を献上すべく王宮へ出向くという日だったのだが、クラウン王子が突然、街へ行きたいとワタクシを誘って来たのだ。当然モブメイドの記憶にはこの予定は入っていない。
お祭りの様相で通りのお店も賑わいを見せており、人混みに紛れていると意外とワタクシ達の事は気にならないようだ。何度か背後からの視線を感じたような気もするが、恐らく気のせいだろう。
てか、はぐれないようにという理由はあるものの、とにかく距離が近いのよ。腰に手をあてて歩くの大変じゃないのかと問いたいわね。
はぁー、また心の中に居るモブメイドが叫びたがっているじゃないの! ちょっと脳内で叫ばせてあげときましょうか。
――ヴァイオレッタ様~~王子の温もりがぁあああ! 距離が近い、近いんですーー! (byモブメイド)
煌めきを放つ通りを王子と二人歩いていく。モブメイド時代、男の人と一緒に街を歩いた経験すらないのだ。
高鳴る鼓動と頬の熱を押さえつつ、煌めく街並みを眺めていく。お肉を焼いている店からは美味しそうな香り。隣のお店にある玉蜀黍のスープは心も身体も温まりそうだ。
「この平穏な庶民の暮らしを守る事も、俺の務めだ」
「王子?」
「こっちだ」
王子は腰に添えていた左手をワタクシの右手へ移動させ、ワタクシを誘導する。そのまま賑わう通りから路地裏へと入り、暫く歩くと、一軒の小さなお店がワタクシ達の前に現れた。
中に入るとそこには、様々な宝石に彩られた宝飾品の数々が並んでいた。その美しさに思わず魅入ってしまうワタクシ。
「当日のサプライズでもよかったんだがな。街を一緒に歩きたくて連れて来てしまったよ」
「綺麗……ですわね」
「店員、あれを頼む」
「はい、かしこまりました」
王子に呼び掛けられた女性店員が部屋の奥へと入っていく。魔法によって鍵がかかっているケースから何かを取り出し、こちらに持って来る。
王子はワタクシが被っていたフードを取り、店員から受け取った宝飾品をワタクシの首へとかける。周囲の光を集め、反射させる白く透明な宝石。
首へかけるだけで存在感を放つ首飾りは、心を落ち着かせてくれるような、清心な魔力を放っているかのような、そんなネックレスだった。
「少し早いが、星降祭のプレゼントだ。当日だと国王の前でプレゼントを渡す事になってしまうからな。これは俺からのサプライズだ」
「でも、こんな高価なもの。よろしくて?」
「むしろヴァイオレッタ令嬢の美しさを惹き立たせる宝石ならこれくらいあって当然だろう」
「っ……!? 褒めても、何も出ませんわよっ!」
おかしい。どうしてこの王子はこんなに優しいんだ?
まるで生前の王子の裏切りがただの幻想であったかのよう。
「この宝石は女神ミューズ様の祝福を受け、聖なる魔力を蓄えた女神水晶と呼ばれる貴重なものです。持ち主に危機が訪れた時、一度だけ助けてくれるとも言われているんですよ?」
店員がそう説明をしてくれた。王子は素早く会計を済ませ、女神水晶はワタクシの胸元で輝きを放っていた。生前のヴァイオレッタがこんなネックレスをつけていたなら確実に覚えている筈なのに、一度目の過去と、出来事が変わっているのだろうか?
そんなことを考えつつ、店を出ると、物陰から誰かの視線を感じたような気がした。王子も気づいたのだろう。ワタクシの手を取り、路地裏から駆け出す。
そして、家と家の間をすり抜け、大通りの手前に来たところで、王子が後ろから追いかけて来た人物の腕を死角から掴み取る。
「さっきからずっと後をつけていたな? 俺達に何の用……ってお前!?」
なぜか猫耳型の黒いフードに身を包み、まるで魔法使いのような格好をしていたその人物。フードを取ると、美しい翠色のツインテールが顔を出し、大きな淡翠色の双眸は、今にも雫が零れ落ちそうなくらい潤っていた。
「私という存在がありながら、こんな魔性の女とデートだなんて……酷いですわ……お兄様!」
「え? フィリーナ・アルヴァート様?」
ワタクシ達の後をつけていた人物、それはフィリーナ・アルヴァート――クラウン・アルヴァートの妹であった――
生前モブメイドだったわたしはこの頃、ヴァイオレッタ様との夢の王宮生活に心踊らせていたのを覚えている。
王宮へ行ってからの問題は山積みなのであるが、今は眼前のことに集中しようと思う。
何の事かって?
我が国では一週間後の12月24日、一年を終える前に信仰する女神――ミューズ様からの祝福に感謝し、来年の平穏を祈る星降祭というお祭りがあるのだ。
街は光の魔法で星屑の装飾を施し、聖なる樹を飾り付ける。本来であれば、侯爵家で過ごす予定だったのだが、結果的に王子からの誘いもあり、この日は王宮で過ごす予定となってしまった。
そして今、何故かワタクシは外套を纏い、身を隠した状態で街を歩いている。腰あたりに手を添え、同じく外套を纏っている男はワタクシの隣をしっかりキープしている。
「ふ、意外とバレんものだな」
「ちょっと! ワタクシを街へ連れていくだなんて聞いてませんわよ?」
「ちょっと買いたいものがあったのでな。よいではないか、たまにはこういうのも」
「よくないわよ、こんなところにあなたが居るのがバレると大混乱になるわよ?」
この日は父が、国王へ侯爵家の調度品や宝飾品を献上すべく王宮へ出向くという日だったのだが、クラウン王子が突然、街へ行きたいとワタクシを誘って来たのだ。当然モブメイドの記憶にはこの予定は入っていない。
お祭りの様相で通りのお店も賑わいを見せており、人混みに紛れていると意外とワタクシ達の事は気にならないようだ。何度か背後からの視線を感じたような気もするが、恐らく気のせいだろう。
てか、はぐれないようにという理由はあるものの、とにかく距離が近いのよ。腰に手をあてて歩くの大変じゃないのかと問いたいわね。
はぁー、また心の中に居るモブメイドが叫びたがっているじゃないの! ちょっと脳内で叫ばせてあげときましょうか。
――ヴァイオレッタ様~~王子の温もりがぁあああ! 距離が近い、近いんですーー! (byモブメイド)
煌めきを放つ通りを王子と二人歩いていく。モブメイド時代、男の人と一緒に街を歩いた経験すらないのだ。
高鳴る鼓動と頬の熱を押さえつつ、煌めく街並みを眺めていく。お肉を焼いている店からは美味しそうな香り。隣のお店にある玉蜀黍のスープは心も身体も温まりそうだ。
「この平穏な庶民の暮らしを守る事も、俺の務めだ」
「王子?」
「こっちだ」
王子は腰に添えていた左手をワタクシの右手へ移動させ、ワタクシを誘導する。そのまま賑わう通りから路地裏へと入り、暫く歩くと、一軒の小さなお店がワタクシ達の前に現れた。
中に入るとそこには、様々な宝石に彩られた宝飾品の数々が並んでいた。その美しさに思わず魅入ってしまうワタクシ。
「当日のサプライズでもよかったんだがな。街を一緒に歩きたくて連れて来てしまったよ」
「綺麗……ですわね」
「店員、あれを頼む」
「はい、かしこまりました」
王子に呼び掛けられた女性店員が部屋の奥へと入っていく。魔法によって鍵がかかっているケースから何かを取り出し、こちらに持って来る。
王子はワタクシが被っていたフードを取り、店員から受け取った宝飾品をワタクシの首へとかける。周囲の光を集め、反射させる白く透明な宝石。
首へかけるだけで存在感を放つ首飾りは、心を落ち着かせてくれるような、清心な魔力を放っているかのような、そんなネックレスだった。
「少し早いが、星降祭のプレゼントだ。当日だと国王の前でプレゼントを渡す事になってしまうからな。これは俺からのサプライズだ」
「でも、こんな高価なもの。よろしくて?」
「むしろヴァイオレッタ令嬢の美しさを惹き立たせる宝石ならこれくらいあって当然だろう」
「っ……!? 褒めても、何も出ませんわよっ!」
おかしい。どうしてこの王子はこんなに優しいんだ?
まるで生前の王子の裏切りがただの幻想であったかのよう。
「この宝石は女神ミューズ様の祝福を受け、聖なる魔力を蓄えた女神水晶と呼ばれる貴重なものです。持ち主に危機が訪れた時、一度だけ助けてくれるとも言われているんですよ?」
店員がそう説明をしてくれた。王子は素早く会計を済ませ、女神水晶はワタクシの胸元で輝きを放っていた。生前のヴァイオレッタがこんなネックレスをつけていたなら確実に覚えている筈なのに、一度目の過去と、出来事が変わっているのだろうか?
そんなことを考えつつ、店を出ると、物陰から誰かの視線を感じたような気がした。王子も気づいたのだろう。ワタクシの手を取り、路地裏から駆け出す。
そして、家と家の間をすり抜け、大通りの手前に来たところで、王子が後ろから追いかけて来た人物の腕を死角から掴み取る。
「さっきからずっと後をつけていたな? 俺達に何の用……ってお前!?」
なぜか猫耳型の黒いフードに身を包み、まるで魔法使いのような格好をしていたその人物。フードを取ると、美しい翠色のツインテールが顔を出し、大きな淡翠色の双眸は、今にも雫が零れ落ちそうなくらい潤っていた。
「私という存在がありながら、こんな魔性の女とデートだなんて……酷いですわ……お兄様!」
「え? フィリーナ・アルヴァート様?」
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