88番目のモブメイド、憧れの悪役令嬢になる ~え、待って! 王子にこんな溺愛されるなんて聞いてない!

とんこつ毬藻

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閑章2 奔走のモブメイド

38 そうだ、秘湯へ行こう! 後編

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 乙女の花園へ向け放たれる咆哮。

 グォオオオオオオオ――

「え?」
「ヴァイオレッタ様、下がって!」

 咆哮を放った生物の正体。それは、野生の闇纏熊ダークベア。闇の魔力に充てられて狂暴化してしまった熊でした。

 でも、何故こんなところに? てか、乙女の花園を覗くとは……いい度胸してるじゃない……?

 今、わたしもローザもブルームも丸裸。ブルームが掌へ魔力を籠め、魔法を放とうとしたとき……、熊の身体が後ろから真っ二つに両断されたのです。

 その間、瞬きするかのような一瞬の出来事で。


「そうか。此処はカインズベリー領だったな。大丈夫か、ヴァイオレッタ」
「怪我はないですか、ヴァイオレッタ殿」

 湯気の隙間から見えたその姿は、見覚えある金髪と赤髪で……。

「え? クラウン王子にフレイア騎士団長……って、きぁあああああ!?」

 頭が追いつかない状況の中、思わず悲鳴をあげるわたし。森の奥から遠征していた筈のクラウン王子とフレイア騎士団長が現れたことも驚きだが、クラウン王子とフレイア騎士団長は何も身に着けていなかったのだ。ちょうど湯気で大事なところだけ隠れているものの、丸裸で剣だけ持っているこの姿に理解が追いつかず、思わず悲鳴をあげてしまったわたしである。

「ちょっと! クラウン王子、どうして裸なのよ! あとどうしてこんなところに居る訳?」

「どうしてって、此処、温泉だろう? そりゃあ温泉に入ろうとしてたんだから裸にもなるさ。そしたらたまたま熊が温泉に浸かっている乙女を襲おうとしている現場へ遭遇し、こうして斬り捨てたという訳さ」
「ヴァイオレッタ殿。この近辺に闇纏熊ダークベアの出没情報があり、王子と俺はこの近くへ来ていたんですよ。闇纏熊ダークベアは、下手すると魔物化する危険性もありますからね。そうなると騎士団員じゃあ手が付けられなくなりますから」
「ま、そういう訳。何頭か討伐したところで、温泉を見かけたから、こうして裸になっていたという訳さ」

 両手で顔を覆いつつ、王子と騎士団長からの報告を聞くわたし。ええ、決して指の隙間から王子と騎士団長の逞しく鍛え抜かれた肉体なんか見ていないわよ? ちなみにブルームは何故かその場から消えていた。ローザは横に控えているが、わたしは頭の処理が追いついていなくてそれどころじゃなかった。

「と、とりあえず。助けてくれたことには感謝するわ。ワタクシ達はそろそろあがるから、ゆっくり温泉をご堪能なさいませ。では」

「まぁまぁ、ヴァイオレッタ。ここ混浴なんだろ? 一緒に温泉で疲れを癒や……」
「ごゆっくりご堪能なさいませ!」

 横に居るローザと温泉を後にしようとするわたし。王子が慌ててわたしを呼び止める。

「待てって! まだ闇纏熊が残ってるかもしれない。お前達だけだと危険だ。なら、せめて外で待っていてくれ。護衛して帰るから」
「……わかりました。ではそこの小屋で待っておきます」

「あ、あと! ヴァイオレッタ!」
「まだ何かありますの?」
「その……言いにくいんだが、その顔を手で覆うのはいいんだが、その、美しい身体を隠してくれないか? 俺も男なんだ……湯気で大事なところが隠れていても、その……な」

 え? 大事なところ? 何の事? 確かに王子は大事なところを大きな葉っぱを取り出して隠している。美しい身体と言えばヴァイオレッタ様の身体か。あ、たわわに実った果実が揺れて……はっ!?

「クラウンのえっちぃーーー!」
「待て、ヴァイオレッタぁあああああ」

 お湯が間欠泉のように噴き出し、王子と騎士団長は空高く舞い上がる。フフフ、魔力が豊富なヴァイオレッタ様の身体なら、水魔法でこのくらい余裕なのです。

 ちょっと心の中で叫んでおきますね。


 ――ヴァイオレッタ様ぁあああああ、モブメイドはぁああああ、羞恥でこのまま昇天するかと思いましたよぉおおおおお!


 ローザが持ってきたタオルで身体を隠しつつ、高く飛び上がる男二人の肉体を眺めるわたしなのでした。


◇◇◇
 閑章はサービス回でございました。次話より、いよいよ本編、最終章へと入って参りますので、お楽しみにです。

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