40 / 58
第三幕(最終章)真実追究編
40 二律背反
しおりを挟む
『――聴こえますか?』
ん? 誰だろう、ワタクシを呼ぶ声……なんだか聴いているだけで心が落ち着いてくる。このまま優しい声に包まれて眠っていたい
『いや、眠ってしまっては駄目です。むしろ今眠っているのですから眠れません』
「え?」
その声に思わず目を開けるワタクシ。いや、ワタクシじゃない……真っ白な世界に立つわたしはヴァイオレッタ様の姿ではなく、モブメイドの姿だった。どこでもない世界。そこに誰かの声だけが響いていた。
『本来干渉はタブーなんです。ですからひとつだけあなたへ伝えます。女神はいつもあなたを見守っています』
「その言葉は……」
一瞬だけ、懐かしいあの笑顔が見えた気がして……。
…………
……
「――ヴァイオレッタ、ヴァイオレッタ!」
「シスター!?」
ワタクシを呼ぶ声にベッドから飛び起きる。って、目の前にはものすご~く整った顔があって。
「え? クラウン!?」
「シスター? ではないぞ? さては寝惚けているなヴァイオレッタ。目が覚めたようだな、大丈夫か? 心配したんだぞ、王宮図書館で気を失って運ばれたと聞いた時には」
えっと、だんだんと思い出して来た。図書館で紅茶を飲んでいた時に、突然脳裏に何かの映像が浮かんだ瞬間、頭が痛くなって、そして、そのまま気を失ってしまったんだ。どうやら此処はワタクシの自室らしく、ランプの灯りだけついているところを見ると既に夜らしい。
「え? あ、ワタクシ……。気を失って眠っていましたのね」
「嗚呼、まさか護衛をつけていない時に倒れるとは。これ以上俺を心配させるなよ? ほら、熱はないか?」
「え、ちょっと……クラウン!?」
ワタクシの額にクラウンが自身の額をくっつける。クラウンの吐息がワタクシの鼻へかかる。いや、近い。熱が無くても、頬が火照ってくるのが分かる。
クラウン王子はあの事件以来、ワタクシをより心配するようになった。溺愛に拍車がかかっている気がして心配なくらい。ヴァイオレッタとしても中に居るモブメイドとしても、幸せなひと時を過ごせる事はいい事だとは思う。
でも、このまま唯々愛欲に溺れてしまって深く沈んでしまっては真実へ辿り着けないような気がして、このまま王子の愛に深く溺れていたいと思うワタクシも居て。
二律背反――
「やはり熱があるようだ。今日はこのままゆっくり休むといい」
「それは……王子がこんなに近づいてくるから……」
「俺はお前が心配なだけだ」
クラウンがそう呟くと、まるで磁石に吸い寄せられるように、互いの口元がそっと触れる。互いの温もりを確かめるように暫くそのままで居る二人。彼が両腕をそっとワタクシの背中へ回そうとした時、ワタクシはそっと両手で彼の身体を離す。
「待って。今日は……まだ調子がよくないから……」
「そうだな。すまない。また今度にしよう。おやすみ、ヴァイオレッタ」
「おやすみなさい、クラウン」
その日、クラウン王子は自室へ戻り、ワタクシは眠れない夜を過ごしたのだった。
――ヴァイオレッタ様ぁああああ、モブメイドはぁああああ、このまま王子に溺れてしまっていいのですか?
ん? 誰だろう、ワタクシを呼ぶ声……なんだか聴いているだけで心が落ち着いてくる。このまま優しい声に包まれて眠っていたい
『いや、眠ってしまっては駄目です。むしろ今眠っているのですから眠れません』
「え?」
その声に思わず目を開けるワタクシ。いや、ワタクシじゃない……真っ白な世界に立つわたしはヴァイオレッタ様の姿ではなく、モブメイドの姿だった。どこでもない世界。そこに誰かの声だけが響いていた。
『本来干渉はタブーなんです。ですからひとつだけあなたへ伝えます。女神はいつもあなたを見守っています』
「その言葉は……」
一瞬だけ、懐かしいあの笑顔が見えた気がして……。
…………
……
「――ヴァイオレッタ、ヴァイオレッタ!」
「シスター!?」
ワタクシを呼ぶ声にベッドから飛び起きる。って、目の前にはものすご~く整った顔があって。
「え? クラウン!?」
「シスター? ではないぞ? さては寝惚けているなヴァイオレッタ。目が覚めたようだな、大丈夫か? 心配したんだぞ、王宮図書館で気を失って運ばれたと聞いた時には」
えっと、だんだんと思い出して来た。図書館で紅茶を飲んでいた時に、突然脳裏に何かの映像が浮かんだ瞬間、頭が痛くなって、そして、そのまま気を失ってしまったんだ。どうやら此処はワタクシの自室らしく、ランプの灯りだけついているところを見ると既に夜らしい。
「え? あ、ワタクシ……。気を失って眠っていましたのね」
「嗚呼、まさか護衛をつけていない時に倒れるとは。これ以上俺を心配させるなよ? ほら、熱はないか?」
「え、ちょっと……クラウン!?」
ワタクシの額にクラウンが自身の額をくっつける。クラウンの吐息がワタクシの鼻へかかる。いや、近い。熱が無くても、頬が火照ってくるのが分かる。
クラウン王子はあの事件以来、ワタクシをより心配するようになった。溺愛に拍車がかかっている気がして心配なくらい。ヴァイオレッタとしても中に居るモブメイドとしても、幸せなひと時を過ごせる事はいい事だとは思う。
でも、このまま唯々愛欲に溺れてしまって深く沈んでしまっては真実へ辿り着けないような気がして、このまま王子の愛に深く溺れていたいと思うワタクシも居て。
二律背反――
「やはり熱があるようだ。今日はこのままゆっくり休むといい」
「それは……王子がこんなに近づいてくるから……」
「俺はお前が心配なだけだ」
クラウンがそう呟くと、まるで磁石に吸い寄せられるように、互いの口元がそっと触れる。互いの温もりを確かめるように暫くそのままで居る二人。彼が両腕をそっとワタクシの背中へ回そうとした時、ワタクシはそっと両手で彼の身体を離す。
「待って。今日は……まだ調子がよくないから……」
「そうだな。すまない。また今度にしよう。おやすみ、ヴァイオレッタ」
「おやすみなさい、クラウン」
その日、クラウン王子は自室へ戻り、ワタクシは眠れない夜を過ごしたのだった。
――ヴァイオレッタ様ぁああああ、モブメイドはぁああああ、このまま王子に溺れてしまっていいのですか?
0
あなたにおすすめの小説
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました
富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。
転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。
でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。
別にそんな事望んでなかったんだけど……。
「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」
「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」
強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。
※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~
結田龍
恋愛
「小娘を、ひっ捕らえよ!」
没落令嬢イシュカ・セレーネはランドリック王国の王宮術師団に所属する水術師だが、宰相オズウェン公爵によって、自身の娘・公爵令嬢シャーロットの誘拐罪で王宮追放されてしまう。それはシャーロットとイシュカを敵視する同僚の水術師ヘンリエッタによる、退屈しのぎのための陰湿な嫌がらせだった。
あっという間に王都から追い出されたイシュカだが、なぜか王太子ローク・ランドリックによって助けられ、「今度は俺が君を助けると決めていたんだ」と甘く告げられる。
ロークとは二年前の戦争終結時に野戦病院で出会っていて、そこで聖女だとうわさになっていたイシュカは、彼の体の傷だけではなく心の傷も癒したらしい。そんなイシュカに対し、ロークは甘い微笑みを絶やさない。
あわあわと戸惑うイシュカだが、ロークからの提案で竜神伝説のある辺境の地・カスタリアへ向かう。そこは宰相から実権を取り返すために、ロークが領主として領地経営をしている場所だった。
王宮追放で職を失ったイシュカはロークの領主経営を手伝うが、ひょんなことから少年の姿をした竜神スクルドと出会い、さらには勝手に聖女と認定されてしまったのだった。
毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。
恋愛小説大賞にエントリーしました。
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる