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「りょーお。帰ろ」と部活帰りに声を掛けてきた恵那は、あざと可愛い顔で笑っている。
わざと、である。
涼にはすぐ、わかる。このお調子者が、わざと自分に対してべったり甘えてくるのは、絶対何か、ある。
そう思って冷ややかな視線を送ると。
「バスまで、まだ時間あるだろ? バス停でデートしようぜ」
当たり前に肩を抱くから、
「もお、何? なんか欲しいものでもあんの?」と軽く睨む。
スキンシップは嫌いじゃないけれど、こういう何か企んでいるのが見えると、ちょっと身構える。
「んー、そだなー。そろそろ涼ちゃんの熱いキッスが欲しいかなー」
耳元に囁くように言う。
「……そんなの、二人きりの時しか、しないもん」
少しだけ、照れて目を伏せて涼が答える。
キスは、だって嫌いじゃない。恵那が優しく伝えてくれる“好き”の気持ちがいっぱい詰まっているそれは、涼だって一番嬉しいものだから。
でもそんなの、こんな誰もが見ている前でするようなことでは決してないから。
恵那の部屋に泊まったり、あるいは自分のベッドに恵那が泊まる時。そんな甘い空間で、恵那はいつも“好きだよ”と言ってキスをくれる。
ただし、寝相激悪な恵那だから、そんな風に甘いキスをして腕の中に抱きしめて寝るくせに、朝にはいつだってベッドから落っこちているわけだけど。
キス以上、先に進むことはもう、諦めている。というか、恵那がその優しさで堪えてくれているだけだけど。
でも、まだ自分が子供過ぎて、どうしても先に進むことを怖がってしまうから。
恵那は“まだいいよ”と言って、ただキスだけして抱きしめて寝てくれるのだ。
嬉しくて、幸せだけど。でも、ちょっとだけ申し訳なくて。
本当は全部受け入れたいのに。
恵那を好きな気持ちは、こんなにも恵那を求めているのに。
なのに、何故か体は言うことをきいてくれないから。
恵那の優しさに甘える。
その甘えさえも、恵那が受け入れてくれるから。
優しくて、大きな恵那がやっぱり大好きで。
だから。
こうやって、何かしら企んでいるのだろうけれど。それでも恵那の傍にいたいと思うから。
涼は恵那の隣にぴったりとくっついて、いつもの笑顔を見せた。
「りょーお。帰ろ」と部活帰りに声を掛けてきた恵那は、あざと可愛い顔で笑っている。
わざと、である。
涼にはすぐ、わかる。このお調子者が、わざと自分に対してべったり甘えてくるのは、絶対何か、ある。
そう思って冷ややかな視線を送ると。
「バスまで、まだ時間あるだろ? バス停でデートしようぜ」
当たり前に肩を抱くから、
「もお、何? なんか欲しいものでもあんの?」と軽く睨む。
スキンシップは嫌いじゃないけれど、こういう何か企んでいるのが見えると、ちょっと身構える。
「んー、そだなー。そろそろ涼ちゃんの熱いキッスが欲しいかなー」
耳元に囁くように言う。
「……そんなの、二人きりの時しか、しないもん」
少しだけ、照れて目を伏せて涼が答える。
キスは、だって嫌いじゃない。恵那が優しく伝えてくれる“好き”の気持ちがいっぱい詰まっているそれは、涼だって一番嬉しいものだから。
でもそんなの、こんな誰もが見ている前でするようなことでは決してないから。
恵那の部屋に泊まったり、あるいは自分のベッドに恵那が泊まる時。そんな甘い空間で、恵那はいつも“好きだよ”と言ってキスをくれる。
ただし、寝相激悪な恵那だから、そんな風に甘いキスをして腕の中に抱きしめて寝るくせに、朝にはいつだってベッドから落っこちているわけだけど。
キス以上、先に進むことはもう、諦めている。というか、恵那がその優しさで堪えてくれているだけだけど。
でも、まだ自分が子供過ぎて、どうしても先に進むことを怖がってしまうから。
恵那は“まだいいよ”と言って、ただキスだけして抱きしめて寝てくれるのだ。
嬉しくて、幸せだけど。でも、ちょっとだけ申し訳なくて。
本当は全部受け入れたいのに。
恵那を好きな気持ちは、こんなにも恵那を求めているのに。
なのに、何故か体は言うことをきいてくれないから。
恵那の優しさに甘える。
その甘えさえも、恵那が受け入れてくれるから。
優しくて、大きな恵那がやっぱり大好きで。
だから。
こうやって、何かしら企んでいるのだろうけれど。それでも恵那の傍にいたいと思うから。
涼は恵那の隣にぴったりとくっついて、いつもの笑顔を見せた。
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