Treasure of life

月那

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【3】Astrophyllite

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 今日は双子の誕生日。
 本当は家族だけでホームパーティーの予定だったが、双子の父が急遽泊まりの出張になってしまい。
 パパがいないと泣く双子に手を焼いた母、美香が「じゃあ、なるくんと玲子ちゃん呼ぼっか」と矢崎家にピンチヒッターをお願いしたのだった。

「ごめんねー、玲子さん。急な話で」
「んーん、とんでもない。元々二人にはプレゼント用意してたし、呼んで貰えて逆にありがとう、だよー」
 双子に果汁百パーセントのオレンジジュースを、翔と成親にはコーラを与えると、母二人はビールで乾杯して。
 美香が用意していたご馳走をみんなで堪能した後。
「りっくん、うーたん。はい、なるからの誕生日プレゼントだよー」
 学校から帰って突然言われたから、慌ててコンビニで買ってきた折り紙をプレゼントとして二人に手渡しながら、成親が言う。

「おりがみだー。りっくん、ほいくえんでひこうき、つくったー」
「うーたんも、ちゅうりっぷ、できるよ」
 予想以上に喜んでくれた双子が、競うように折り始める。
 意外にいい誤魔化しになったなと、翔に笑いかけた。
 だってもう、母達は飲むこととおしゃべりに夢中なようで、子守は完全に兄ズのお仕事になっているようだから。

「それ、そこのファミマで?」翔が訊く。
「ん。さすがに今日の今日で、なんも準備できなかったし。でも、二人とも楽しそう。しょーさんは? 何かあげたの?」
 なるもなんかつくって、と羽美に言われて鶴を折りながら翔に問いかける。
「似たようなモンだよ。俺はアイス。ガッコの帰りに買って帰った」
 二人して笑った。

「そいえば俺、中間でクラス一位採ったよ」
「お、まじか。よく頑張りました」
「えらいでしょ? なんか、ご褒美は?」
「何が欲しい?」
 成親は翔の耳に小さい声で「しょーさん」と囁いた。
 もちろん、ウィンクを綺麗に決めて。
 成親としては“何を言い出すんだ”と焦って照れまくる翔を予想して言ったセリフだったが。

「……いつか、ね」思った以上にその答えが冷めていて。
しかも表情が期待していたものじゃなかっただけに、眉根を寄せた。

「しょーさん?」
「今度、なるにはご褒美にケーキ買ったげようね」
 まるで、付き合う前のような、感情を載せない微妙な微笑み。
 どうしたの、と問いかけようとした瞬間。

「けえき? にいに、りっくんけえき、たべる!」
「うーたんも、うーたんも」
「あ、ほんとだ。陸と羽美の誕生日ケーキ、せっかくだからみんなで食べましょ」
 双子の声に美香が気付いて。
 成親の心に引っかかった小さな棘に、構っていられない状況になる。

「わーい、美香ちゃんの手作りケーキ」
 既にビールから焼酎のロックに変わっていた玲子が言うと。
「れーこちゃんが一番喜んでるじゃん」
 翔が、さっきの冷めた表情がまるで嘘のように、いつもの明るい声で成親の母に笑いかけた。

「だって翔くんたちはいつでも食べられるけど、あたしたちなんてそうそう食べられないじゃない?」
「いやいや、別に美香ちゃん毎日ケーキ焼いてるわけじゃねーし、俺らだってそうそう食べらんないって」
 双子が生まれた頃から翔は母を“美香ちゃん”呼びしている。もはや双子の第二のパパ状態である。
「てか、かーちゃん酒のアテにケーキ食うの?」
「そおよー、いけない?」
 言いながらも、玲子が美香を手伝う為にキッチンへと向かった。

 結局そのままケーキや、翔の用意したアイス――一口サイズの小さいヤツ――を食べたところで双子が半分寝ようとし始めてしまったので、バタバタと歯磨きさせたりパジャマを着せたりの怒涛の子守時間となり。
「玲子さん、私まだ飲み足りないし、せっかくだから二人とも泊ってってよ」
 なんて美香が言いだして。
「ちょっとツインズ寝かせてくるから、待っててね」
「一人で大丈夫? 美香ちゃん、寝ちゃわない?」
「じゃあ、玲子さん付き合ってくれる?」
「おっけーおっけー。寝かしつけなんて、なるがベビの時以来だわー」
 眠くてぐずっている双子をそれぞれ抱っこして、二人して寝室に行ってしまったので、急にリビングが静かになった。
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