Treasure of life

月那

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【3】Astrophyllite

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 翔は、その区画に立ち入るのは実は、初めてである。

 学校敷地内の、東側に位置する工業科の校舎群。
 放課後だけあって、部活に向かう者や帰宅する者たちが校舎からちらほら出てきている。
 補講に出ないのも初めてだが、とにかく相手が校内にいるうちに接触するには夕方の補講をサボるしかなかった。
 武道場のある建物と並んでいるせいか、雰囲気がかなりイカツいと思うのは、少しだけ偏見かもしれないと、翔は内心頭を振った。

 基本的に工業科に対する偏見は持っていないつもりだ。
 土木、機械、情報の主に三コースに分かれている工業科には、それぞれにまた分化したクラスがある。
 例えば情報だけでも、システム系の技術クラスや、マスコミに進む方向へ特化したクラスもあるので、工業科は多種多様な人たちが集まってそれぞれの資格取得の為の勉強をしているのだ。

 その中、ある意味最下層だと位置づけられているのが土木、である。
 当然その中には大手の建設会社に名指しで迎え入れられる者もいるくらい、優等生が大半なのは確か。
 進む道が大学ではないだけで、高卒で就職を決める者たちがどれだけ真剣に将来に向き合っているのか、なんて考えれば、翔にとっては尊敬に値する。
 しかも工業科は、この学校が進学率と共に就職率も高いと言われている所以でもあるから、建設大手に進む者たちはこの学校にとって大事な柱でもある。

 が、だからといって全員がそうかと言われれば、それは否定せざるを得ない。
 何故なら、普通科に入れなかった者の受け皿的措置として、この学校の校名をブランドとして捉える者を迎え入れるのがこの工業科の土木コースだからだ。
 ある意味、一番クラス内の格差が激しいのもこのコースと言えるだろう。

 そんな土木コースの専門校舎の前で、翔はジャケットを脱いだ。
 本来なら校内では名札着用が義務付けられている。
 けれど翔の名札には“特選科”の印があり、工業科が“特選科”に対していい印象を抱いていないことは翔にもわかっているから。
 幸いもうジャケットの必要がない時期でもあり、カッターシャツでうろついている者なんて全然不自然ではない。
 名札さえなければ、工業科の校舎内にいてもなんら問題はないだろうと思ったのだ。

 そして、何故翔がこの場所にいるか。
 それは。

「ちょいごめん、佐伯皇って、いる?」

 彬の相手を探った。
 自分の人脈を駆使し――そこは生徒会役員なので――、特選科の彬が唯一関わりのある工業科という不自然な繋がりに気付き、さらに探りを入れたら浮上してきたのが、土木三年の佐伯皇だったのだ。
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