メンヘラ×メンヘラ=恋、暴走中!?~お前なしじゃ生きられない!…いや、マジで無理だから!

中岡 始

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俺、こんなに尽くしてたのに!~愛が重すぎる男、フラれて酒に溺れる~

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「真尋ってさ、重いんだよね」  

静かなカフェの一角で、向かいに座る恋人にそう告げられた。  

「は?」  

真尋は思わず聞き返した。  

目の前の彼女は、申し訳なさそうな顔をしている。だが、その目はもう決意していた。  

「いや、だから……真尋って、恋人に対して重すぎるんだよ」  

「……いや、意味がわからん。俺、普通に恋人に尽くしてただけだろ?」  

「それが普通じゃないんだって」  

苛立ちが込み上げ、真尋は腕を組む。  

「待てよ。好きな人に尽くすのって当たり前じゃね? 好きなら、一緒にいたいと思うのも普通だろ」  

「それは、まあ……うん、そうなんだけど……」  

「じゃあ、何がダメなんだよ」  

「……例えばさ」  

彼女は視線を泳がせながら、冷めかけたカフェオレのカップを指でなぞる。  

「毎日LINEしてくるのとか……」  

「は? 付き合ってるんだから、毎日連絡するのは普通じゃね?」  

「でも、それにすぐ返信しないと『なんで?』って追撃LINEくるし……」  

「いや、それは単に忙しいのか心配だから聞いてるだけだし」  

「週に五回は会おうって言うのも……」  

「そりゃ恋人なら会うもんだろ? むしろ、それくらいが普通じゃね?」  

「普通じゃないよ!!」  

突然、強い口調で言われ、真尋は一瞬言葉を失う。  

「……なんでそんな強く否定するんだよ」  

「だって、私、真尋と付き合ってからずっと息が詰まりそうだったもん……」  

「は……?」  

彼女はカップを両手で包み込み、俯きながら言葉を続けた。  

「最初は、すごく大事にしてくれてるって思った。でも、だんだん、ちょっとしたことで不機嫌になったり、すぐに『なんで?』って聞いてきたり……」  

「いや、それは……」  

「重いんだよ、真尋」  

その言葉は、真尋の心臓を鋭くえぐった。  

「……俺、ただお前が好きだから、当たり前にやってただけなのに」  

「うん……でも、それが重いの」  

「……だったら、俺はどうすればよかったんだよ」  

彼女は答えなかった。ただ、申し訳なさそうに小さく首を振った。  

「ごめんね。私、もう耐えられない」  

そう言って、彼女はバッグを手に取り、席を立った。  

「待てよ」  

思わず手を伸ばそうとしたが、そのまま立ち尽くすしかなかった。  

カフェのドアが開き、閉まる。  

彼女の姿が消えた後、真尋は椅子に沈み込んだ。  

  

***  

  

「お前さぁ……そろそろ自覚したら?」  

「何を?」  

「お前、愛が重すぎるんだよ!!」  

居酒屋のカウンター席で、向かいに座る友人がため息混じりに言い放った。  

「は? 俺は普通だし!!」  

真尋は、手に持っていたジョッキを乱暴にテーブルに置いた。  

「恋人に尽くすのって、当たり前だろ?」  

「いや、それが“尽くす”のレベルを超えてるんだって」  

「は? 意味わかんねぇ」  

「……お前、別れ話されたときに、ちゃんと相手の話聞いた?」  

「聞いたよ。俺のことが重すぎるんだとさ」  

「ほらな」  

友人は、まるで答え合わせでもするように肩をすくめた。  

「お前さ、恋愛になると、完全に恋人に依存するタイプだよな」  

「依存とかじゃねぇし。好きだから、全力で向き合ってるだけだろ」  

「向き合う、ね……それって相手が同じ熱量なら成立するけど、温度差があったらキツいんだって」  

「……俺は普通だろ」  

「ほらまたそれ」  

友人はジョッキを空け、カウンターに置いた。  

「まあ、お前がそう思うなら、それでいいけど」  

「いいなら言うなよ」  

「忠告してるだけだよ。お前のためにな」  

それっきり、友人は何も言わなかった。  

しばらく沈黙が続き、先に立ち上がったのは友人だった。  

「じゃあ、俺帰るわ」  

「……俺はまだ飲む」  

「はいはい。飲みすぎて変なことすんなよ」  

適当に手を振り、友人は店を出て行った。  

真尋はジョッキの残りを一気に煽る。  

喉を焼くアルコールが、胸の奥のモヤモヤを少しでも消してくれる気がした。  

  

***  

  

どれだけ飲んだかわからないまま、気づけば夜の公園に座り込んでいた。  

酔いで頭がぼんやりする。  

冷たい風が頬を撫でたが、そんなもの気にする余裕もなかった。  

「俺、恋愛向いてないのか…?」  

誰に向けるでもなく呟く。  

街灯がぽつんと灯る公園のベンチに腰掛け、うなだれるように膝に肘をついた。  

黒のパーカーのポケットに手を突っ込み、体を丸める。  

いつの間にか足元に落ちた枯葉が、風に揺れた。  

「……あー、俺、終わったわ」  

頭を抱えながら呟いた声が、静まり返った夜に虚しく響いた。
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