俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始

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元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です

この人生は、お前と歩きたいんだ

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特別なことがあったわけではない。  
大きな出来事があった日でも、何かを決意した瞬間でもなかった。  

ただ、さっきカフェでふたり並んで飲んでいたコーヒーの味が、思っていたよりも優しかった。  
何気ない言葉のやり取りのなかに、未来の話が自然と混ざっていた。  
その“自然さ”が、思いがけず心に残っている。

「好き」や「運命」なんて、たぶん本当に特別な瞬間にしか感じられないものだ。  
でも、毎日を共に生きるというのは、もっと静かで、穏やかで、気がつけばそこにあるものなんだと今は分かる。  

朝起きて、同じタイミングでカーテンを開ける。  
昼は別々の場所で過ごして、夜にはまた同じテーブルを囲む。  
そのサイクルが当たり前になることが、“幸せ”と呼ばれるものなのかもしれない。  

ずっと、“誰かの人生に入り込むこと”が怖かった。  
責任とか、期待とか、裏切ることとか、そんなことばかりを考えていた。  
でも今は、少しだけ違う。

たとえば、疲れて帰った日でも、部屋に明かりがついていたらほっとする。  
何かあったわけじゃなくても、「ただいま」と言う場所があることに、理由もなく安心する。  

それは、重荷ではなく、支えだった。  
足を引っ張るものではなく、歩幅を揃えてくれるものだった。  

きっと、これからもすれ違うことはあるだろう。  
考えの違いに戸惑う日も、同じ道を選べないことだって出てくるかもしれない。  
だけど、そういう“違い”を受け入れながら並んで歩いていくことを、初めて怖いと思わなくなった。

それは、隣にいる人が、どんなときでも変わらないまなざしでいてくれたからだ。  
急かさない。追い越さない。ただ、同じ速度で歩いてくれる。  
そんな人と出会えたことが、自分にとっての“奇跡”だったのかもしれない。

少しずつ言葉にしていこうと思う。  
未来のこと、仕事のこと、親のこと。  
一度には言えないけれど、ゆっくりなら伝えられる気がしている。  

それが、ふたりで未来をつくるということなのかもしれない。

誰かと一緒に生きていくっていうのは、誰かに合わせて自分を削ることじゃない。  
自分自身でいながら、もうひとつの軸をもらうことなんだ。  
それを持つことで、ようやくひとりきりのときには見えなかった道が見えてくる。

その道の先に何があるのかは分からない。  
でも、隣に誰がいるかを知っている。  
それだけで、この人生に向き合う勇気が湧いてくる。

この人生は、誰かから与えられたものじゃない。  
前の人生がどうだったかなんて、もう関係ない。  
今、ここで生きている自分が、“どう生きたいか”を選んでいい。

そして今、確かに思っている。  
この人生は、お前と歩きたい。  
誰かのものでもなく、過去の記憶に引っ張られたものでもなく、  
今の自分が選ぶ、このたったひとつの人生を。

歩きながら、肩が触れた。  
そのわずかな接触だけで、ちゃんとそこに未来があると思えた。  
あたたかくも、まだ少し不安定な感覚。  
けれどそれでいいと思えた。

未来は、これから築くものだから。  
そしてそれを、“ふたりで”築いていけると思えたことこそが、すべての始まりだった。
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