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血液型でわかる?わからん? 営業部男子の昼下がりトーク~それ、科学的根拠ないって知ってるけど言いたくなるやつ
それでも信じたい“型”がある
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夕方が近づき、会議室の窓にかかるブラインドの隙間からは、すこしだけ赤みを帯びた陽が差し込んでいた。
午前中の会議の熱はとうに冷め、コーヒーの香りもぬるくなった空気に溶けていく。
それでも、営業部の四人はその場に居続けていた。何かを話し終えるでもなく、ただ流れる空気に身を任せているような、そんな時間。
「型なんて関係ないって思うけどな」
ふと、榊がぼそりと口を開いた。
カップの底に残ったコーヒーを揺らしながら、どこを見るでもなくつぶやいた声だった。
「けど……当たってる言われると、ちょっと信じたくなる。なんやろな、不思議やけど」
陽翔が隣で少しだけ笑った。
その笑みには、榊の不器用さを受け止めるような柔らかさがあった。
「型に逃げるんじゃなくて、知るきっかけにはなるんでしょうね。
こういう人かもしれない、っていう仮のラベル。
でも、ちゃんと向き合うなら、それを外していかないといけないんでしょうけど」
榊は「仮のラベルか」と呟いて、指先でカップの取っ手をなぞった。
佐倉が背もたれに体を預けて、少し伸びをしながら言葉をつなぐ。
「血液型だけじゃなくて、相手の言葉も、表情も……全部見ていたいってことかな。
そういうの、大事にしたくなる時ってあるじゃないですか」
彼の声はどこまでもやわらかかった。
自分がそれを守ってきたという確信よりも、
それができているか時々不安になるような、そんな響きだった。
誰もすぐには返さず、そのまま一拍の間が空く。
瀬戸が、手にしていたマグカップを一度置いて、静かに口を開いた。
「……同じ型でも、違う人間ですから」
その一言は、彼らしい無駄のない言葉だった。
簡潔で、真っ直ぐで、けれどどこか深い。
佐倉が瀬戸のほうをちらと見て、唇を噛んで笑いを堪えたように見えた。
榊も「せやな」とだけ言い、言葉を飲み込んだ。
それぞれの価値観が、それぞれの静けさの中に置かれて、
それが否定されることも、過剰に肯定されることもなく、ただそこにあった。
しばらくの間、誰も何も言わず、空気だけがゆるやかに流れていた。
それを切ったのは、またしても榊だった。
「でも、B型は惚れたら一途やで」
声のトーンは変わらない。
しかし、その言葉の裏にある感情を、聞き逃せる者はいなかった。
陽翔は、すぐには反応せず、カップを口元に持っていっていたが、
飲む直前にふっと目を細めて笑った。
ほんの一瞬。
けれど確かに、笑っていた。
その反応を見た佐倉が、「はいはい」と言いながら立ち上がり、机の上のカップを集めはじめた。
瀬戸も何も言わず、隣のカップを彼のトレーに乗せて手伝う。
「……片付けてきますね」
佐倉がそう言ってドアのほうへ向かうと、瀬戸も無言のままついていく。
部屋に残されたのは、榊と陽翔だけだった。
静かに扉が閉まる音。
榊はカップをテーブルに置き直し、少しだけ身を乗り出した。
「……あいつら、気ぃ利くな」
陽翔は返事をしなかった。
ただ、目を伏せたまま、うっすらと笑みを残した横顔を、榊は横から見ていた。
血液型なんて、所詮はラベルでしかない。
けれど、そのラベルを通じて、少しずつ見えてくるものもある。
相手の気質、反応、そして何より、その人が大切にしているもの。
“惚れたら一途やで”――
たった一言が、すべてを伝えてしまうこともある。
それが血液型のせいだろうが、性格のせいだろうが、関係ない。
伝わるかどうかは、いつだって、言葉の奥にある“本気”にかかっている。
そんなことを思いながら、榊は窓の外へ視線を移した。
春の光はまだ残っていて、今日の終わりをやさしく照らしていた。
午前中の会議の熱はとうに冷め、コーヒーの香りもぬるくなった空気に溶けていく。
それでも、営業部の四人はその場に居続けていた。何かを話し終えるでもなく、ただ流れる空気に身を任せているような、そんな時間。
「型なんて関係ないって思うけどな」
ふと、榊がぼそりと口を開いた。
カップの底に残ったコーヒーを揺らしながら、どこを見るでもなくつぶやいた声だった。
「けど……当たってる言われると、ちょっと信じたくなる。なんやろな、不思議やけど」
陽翔が隣で少しだけ笑った。
その笑みには、榊の不器用さを受け止めるような柔らかさがあった。
「型に逃げるんじゃなくて、知るきっかけにはなるんでしょうね。
こういう人かもしれない、っていう仮のラベル。
でも、ちゃんと向き合うなら、それを外していかないといけないんでしょうけど」
榊は「仮のラベルか」と呟いて、指先でカップの取っ手をなぞった。
佐倉が背もたれに体を預けて、少し伸びをしながら言葉をつなぐ。
「血液型だけじゃなくて、相手の言葉も、表情も……全部見ていたいってことかな。
そういうの、大事にしたくなる時ってあるじゃないですか」
彼の声はどこまでもやわらかかった。
自分がそれを守ってきたという確信よりも、
それができているか時々不安になるような、そんな響きだった。
誰もすぐには返さず、そのまま一拍の間が空く。
瀬戸が、手にしていたマグカップを一度置いて、静かに口を開いた。
「……同じ型でも、違う人間ですから」
その一言は、彼らしい無駄のない言葉だった。
簡潔で、真っ直ぐで、けれどどこか深い。
佐倉が瀬戸のほうをちらと見て、唇を噛んで笑いを堪えたように見えた。
榊も「せやな」とだけ言い、言葉を飲み込んだ。
それぞれの価値観が、それぞれの静けさの中に置かれて、
それが否定されることも、過剰に肯定されることもなく、ただそこにあった。
しばらくの間、誰も何も言わず、空気だけがゆるやかに流れていた。
それを切ったのは、またしても榊だった。
「でも、B型は惚れたら一途やで」
声のトーンは変わらない。
しかし、その言葉の裏にある感情を、聞き逃せる者はいなかった。
陽翔は、すぐには反応せず、カップを口元に持っていっていたが、
飲む直前にふっと目を細めて笑った。
ほんの一瞬。
けれど確かに、笑っていた。
その反応を見た佐倉が、「はいはい」と言いながら立ち上がり、机の上のカップを集めはじめた。
瀬戸も何も言わず、隣のカップを彼のトレーに乗せて手伝う。
「……片付けてきますね」
佐倉がそう言ってドアのほうへ向かうと、瀬戸も無言のままついていく。
部屋に残されたのは、榊と陽翔だけだった。
静かに扉が閉まる音。
榊はカップをテーブルに置き直し、少しだけ身を乗り出した。
「……あいつら、気ぃ利くな」
陽翔は返事をしなかった。
ただ、目を伏せたまま、うっすらと笑みを残した横顔を、榊は横から見ていた。
血液型なんて、所詮はラベルでしかない。
けれど、そのラベルを通じて、少しずつ見えてくるものもある。
相手の気質、反応、そして何より、その人が大切にしているもの。
“惚れたら一途やで”――
たった一言が、すべてを伝えてしまうこともある。
それが血液型のせいだろうが、性格のせいだろうが、関係ない。
伝わるかどうかは、いつだって、言葉の奥にある“本気”にかかっている。
そんなことを思いながら、榊は窓の外へ視線を移した。
春の光はまだ残っていて、今日の終わりをやさしく照らしていた。
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