Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

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終章

LAN上層部の総括

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LANの上層部である真崎と川原は、案件完了を受けて、優子への返還額の詳細や今後の方針について静かに意見を交わしていた。真崎が報告書に目を落としながら、慎重に口を開いた。

「今回の優子さんのケースでは、被害額が500万円に対して、最終的に600万円の補填が実現できました。単に損失を回収するだけでなく、余裕を持たせた額を返すことで、金銭的な安心感も与えられたと思います」

川原は頷きながら、記録を見つめて言葉を選んだ。

「確かに、経済的に余裕のある補填を実現できたのは、LANとしても良い結果です。しかし、金銭的な補填以上に重要なのは、優子さんが心から安心し、新たな一歩を踏み出せるかどうかでしょう。彼女が最初に訪れたときは大きな不安と失望の中にいましたが、これで少しでも救われたと感じてくれるなら…」

真崎は同意するように小さく頷いた後、優子に対する心理的ケアの面にも目を向けた。

「今回の返還が彼女にとって財産の回復だけでなく、心の支えになることを願いますね。ただ、依頼者が経済的補填を得ても、すぐに過去の傷が癒えるわけではありません。むしろ、お金の問題が解決した後に、失った信頼や裏切りからくる孤独感が深く残るケースも多い。こうした心理的な負担を取り除くサポートが、今後はよりLANの重要な課題になるでしょう」

川原は資料に視線を落としながら、LANがこれまで手掛けてきた多くの案件を思い返していた。

「心理ケアの充実は、私たちの次のステップと言えますね。特に今回のようなケースであれば、依頼者が本当に心から安心できるように、フォローアップを通じた継続的な支援も検討するべきです。今後も、状況に応じた柔軟な対応が求められるでしょう」

真崎も川原の指摘に深く頷いた。そして、今後の方向性について改めて方針を述べた。

「依頼者にとって、単に補填されるだけでなく、精神的にも支えを感じられること。それこそが私たちの最終的なゴールです。LANが依頼者にとって頼れる存在であり続けるために、今後は心理カウンセリングの提携先も増やし、フォロー体制を強化しましょう。事件が解決しても、依頼者が再び新しい生活に向かうための橋渡しをするのが我々の役目ですから」

川原はその言葉に賛意を示し、LANが依頼者に提供すべき価値について改めて確認した。

「依頼者に寄り添い、人生を取り戻す一助となること。それがLANとして果たすべき使命ですね。今回の優子さんのケースが良い例です。このような案件を今後も適切に対応していくために、さらに支援体制を整備し、信頼を築いていきましょう」

二人は静かに視線を交わし、LANとしての方向性が共にあることを再確認した。そしてこの会話を終えると、彼らは依頼者たちのより良い未来を支えるため、日々の業務に戻っていった。
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