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 一月、雪が局地的に猛威を振るった。
ラウリーが迷いの森に囲われてから、数週間。公国も一部雪に覆われ一面白銀の世界になるところもあった。


 そんな中、王国国内では来月に行われる学院の卒業パーティーの来賓を纏めている最中であった。
他国から多くのものが集まる、それは第一継承のウィリエールも卒業生であるからという理由が濃い。がそれだけではなくこういった場に出ることで恩を売れたらと考えるものも多いだろう。

 招待状は可否問わず返事は来るもの。一件一件人の手で確認しなければならない為、この時期の管理などはあわてふためく。
そんな中、さらに多くを慌てさせたのが普段王国と犬猿の仲である公国ならびに帝国が揃って卒業パーティーの来賓に参加すると返事を出したということ。


「王国嫌いの公帝国が来るとなると、荒れるのでは」


 一部のものは流石に何かの陰謀でも渦巻いているのではと疑ったが胸のうちなど他人にはわかるはずもない。
急ぎ知らせが届いた皇后、王も悩むとはいえ断れない。

 聖女が居なくなったことを馬鹿にでもしに来るのかと王は怒りを顕にし、皇后も下手に言葉は口から出せなくなってしまったと頭を抱えた。


 学院の中には一切として来賓の話は出ることはない。
日程を見ながら、いつ何処で何があるのかをカレンダー目安に動く。
卒業さえ出来てしまえば此方のものだ、ウィリエールの浅ましい考えも多くの者が感じ取れる。
 多くの者が卒業パーティーの衣装や装飾の話に盛り上がる。


 図書室の端で、ラウリーが好きだった本を読みながら、肩を並べる二人の令嬢。
この場所だけは誰にも害せない、静かで落ち着いた場所。

「……ミルワール嬢、私ね。あの方が居なくなってから自分が恥ずかしくて堪らないの。
何もかもを知っていながら、あの方の『大丈夫』が大丈夫でないことも理解してそれでも止めることが出来なかった。
あの方が生きていらっしゃるかもわからないけれど、どちらにしてももうあの方に顔向け出来ない。
……卒業パーティーで、国王陛下に私提言するつもりよ」

「…ッ、シェルヒナ嬢の気持ちはわかるわ、私だって父に怯えて何も出来なかった。今だって何も……シェルヒナ嬢は強いわ。私もシェルヒナ嬢と共に戦うわ。私なんかで出来ることは無いかもしれないけれど、それでも例えこの国から追い出されても…独りでなければ私は戦えるもの」


 二人が共通して思い出すのは、エトワール家は学年の中でも王族を除き一、二を争う爵位の持ち主でありながら下の爵位の者に敬語を使う。
 彼女を異端のように見る好奇の視線。
それらをまるで気にしないように一蹴して彼女は多くに手を差し伸べた。

 シェルヒナ嬢は虐めから、ミルワール嬢は婚約者から守られた。
お礼もままならぬまま、彼女は存在が消えてしまった。
 見つかるのなら、見つけるためにならどんな犠牲だってと意気込んでいたというのに。学院のカーストに上がったアンヒス嬢は常軌を逸した独裁国家を作り上げ、それに逆らえば待つ未来がラウリーと同じ可能性に怯え誰も何も出来なくなっていた。
することすら諦めていたというのが正しいのかもしれないほどに、学院生活を楽しいと思えるのは媚びを売り成功した者達だけ。

 早くこの世界から逃げたくて、終わらせたくて。
たった一度、最初で最期の反抗としてシェルヒナ嬢とミルワール嬢は卒業パーティーのドレスの色をラウリーの瞳と同じとても澄んだ蒼いものにすると胸に近った。


 それぞれが卒業パーティーで、全てを終わらせようとしているのは明白でもその誰もが心を内に秘めたまま。
内の炎は燃え盛るように、決意を堅くした。
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