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§ あなたは、わたしの何ですか?

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 並べただけの惣菜を囲み、打ち合わせの成果報告と新規の仕事を缶ビールで祝う。忙しいのは辛いが安定して仕事があるのはありがたい。とはいえ、のんびり談笑している時間も無いので三十分ほどで食事会はおしまい。皆、さっさと自分のマシンに戻り、作業を再開した。

 私は、俊輔の話を思い出し、メールをチェック。やはり、あいつが何通も出したと言っていたメールは、メールボックス内には見当たらない。もしやと思い、迷惑メールフォルダを開いてみると、リストいっぱいの怪しげなメールに紛れて、やはりいかにも怪しげな、『俊輔』というタイトルのメールが点在していた。

 普段、メールフォルダはこまめな整理を心がけているのだが、ここしばらく仕事が立て込んでいたため、放置していた。そのため、自動的に迷惑メールフォルダに振り分けられてしまったあいつのメールに、全く気づかなかったのだ。

 古いものから順を追って、開いてみる。一番最初のメールはほぼ三週間前のものだ。

 ——連絡遅くてごめん。今、忙しくて毎日残業。週末も接待があって時間が取れそうにない。おまえは大丈夫か? いつ寝てるかわかんないから電話しないけど、メールくらいよこせよ。あんまり無理すんな。またメールする。
 ——ごめん。木曜から出張。戻りは日曜の夜。今週も無理だな。土産欲しいか? 欲しかったら連絡しろ。またメールする。

 ここからは、もう先週のもの。

 ——生きてるか? 週末は大丈夫そうだ。夜なら平気だから電話していいぞ。
 ——なんで返事が無いんだ? 忙しくたってメールくらい出せるだろ? 返事くらいしてこいよ。
 ——おい! いい加減にしろよ。無視することないだろ?
 ——怒ってるのか?
 ——おーい、波瑠!
 ——おまえ何様? ふざけんな!
 ——おまえなんか知らねえ!
 ——もういい
 ——<本文なし>

 はじめの一通二通はまだ普通だが、先週になってからのこれは、正に迷惑メールそのものではないか。最後の一通を開いたときには、腹が捩れるほどに笑い転げてしまった。

「波瑠、どうしたの? なに笑ってるの?」

 弥生さんが不思議そうに私のモニタを覗き込んでくるが、開いているのは最後の一通<本文なし>のみ。誰が見ても何の変哲も無い迷惑メールだ。彼女は笑いを止められないでいる私の顔を不思議そうに見て、意味わかんない、と呟き、自席へ戻って行った。


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