わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都

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§ すべてはここから始まった。

08

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 母親たちは、やっと息子と娘が片付いて肩の荷が下りたと手放しで喜び、結婚式の計画。白無垢かウエディングドレスかで激論を戦わせている。

 美咲ちゃんは、栞里に先輩ヅラで夫の躾け方と子育ての極意、出産後も如何に上手く親を当てにし、自分のライフスタイルを保つか等々、こっそりと伝授している。

 見た目こそ子供の頃の逞しかった美咲ちゃんから妖艶な美女に変身しているが、そういうところ、しっかりというかちゃっかりしているのは相変わらずだ。

 栞里は栞里で私たちのことには我関せずで、周囲と適当に話を合わせているだけ。あの性格だ。誰がどうなろうとたいして興味も無いだろうことは、はじめからわかっている。

 美咲ちゃんの息子、拓たくちゃんは、なぜかずっと俊輔の膝の上。父たちはビールしか無いのか酒が足りないと騒ぎ始め、何処かで飲み直そうと相談を始めた。

 私と俊輔も限界だ。飲み過ぎではなく、我慢の、だが。

 銘々勝手なようでいて空気を読むことには長けているこの爺婆たちは、私たちふたりの顔色をチラチラと伺いそろそろ雲行きが怪しくなりそうだと思ったのか、帰り支度を始めた。

「私たち帰るから、あとはふたりでね」
「頑張れよ!」
「ちゃんと家にも顔出しなさいよ」

 あとはふたりで、この惨状を片付けさせられるのかと溜め息をついたとき、俊輔に貼り付いていた拓ちゃんが愚図りだした。

「いやっ! たくちゃんかえんない!」
「拓、なに言ってるの? お家に帰ろう?」
「おうちやーだー!」
「拓、今日はパパ帰ってくるからちゃんとお家で待ってなきゃ」
「パパいらない! しゅんちゃんがいいのー! わぁあああ」
「拓、良い子だから、ね。じゃあ今日はお婆ちゃん家で一緒に寝んねしようか?」
「ババちゃんいあなーいー! しゅんちゃんとねゆーー! びえぇえええ」

 全員が取り囲む中、俊輔にがっしりとしがみついている拓ちゃんが泣き始めた。

 美咲ちゃんが宥め賺し俊輔から引き剥がそうと試みるが、今度は俊輔の足に縋り付き、さも悲しげに泣いている。子供って、ホント、大変だ。俊輔から離れることを拒絶する拓ちゃんを眺めながら、気が付いた。

「ねえ、もしかして、あんたが仕事場に入り浸ってたのって……」
「へへ……バレた?」
「やっぱり。変だと思ってたんだ。来たり来なかったり不定期で……」
「美咲は嫁にいったくせに実家に入り浸りだからな。拓は可愛いんだけど、俺から離れなくて夜もロクに寝かせてもらえねえから……」
「だったら、仕事場に来る前はどうしてたの?」
「どうしようもないときは、車ん中とか、会社に泊まり込みとか……」
「うわ、悲惨。同情するわ」


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