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知れば、知られる

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ダイヤのボタンを届けた侑梨に女性は微笑む。
その微笑みに不安を覚える。
「彼、最高よ。貴方も試してみたら?」
固まる侑梨の目尻をすっと撫でた。乾ききってない涙を拭う。女性はあの部屋で何があったのか理解したのだろう。急激に羞恥に襲われた。
もう、最低の1日だ。
パーティの片付けを途中放棄した状態になってしまって怒られるし、レイプされそうになるし、セクハラされるし…しかもマウロがあんな人だなんて…人格をどうこう言える間柄でもない。けれど見ず知らずの、しかも顔さえ見てない相手にあんなことするなんて。
次に会えるかもわからない状態で、その機会を不意にしてしまった。あまつさえ…叩いてしまったのだ。
でも…でも、でも、何度同じことが起こっても同じことをするだろう。だって、下着を脱がされそうになったんだよ⁈お尻を撫でられたんだよ!
いけない。もう取り敢えずは考えないようにしよう。
取り敢えず、今日だけはもうゆっくり眠りたい。
ふと、櫂さんを想う。
「会いたいな」
言葉が溢れた。
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