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知れば、戻れない

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深夜を大幅に超えてどうにかホテルが見えた。
遠くからでも存在感を示す有数の高さが、見えるのに届かない苛立ちを強める。
靴は途中で脱いだ。
あと少しだと言うのに身体が動かない。
そういえば最近、あんまり食べてなかったかも。と自身の健康管理の問題点を挙げる。
ダメだ。あと少しだけど一旦休憩しよう。
「送って行こうか?」
マウロの言葉に結構ですと言った自分を呪いたくなる。
まぁ何度でも断るとけれど。
雨が避けれる地べたに座り込む。

…マウロとも対立する関係は望んでいなかった。
ただ、父の話を聞きたかっただけで
…対等に話したかった。
なんでこんなになっちゃったんだろう…。
身体が痛い…眠たい…寒い…寒い…ねむ…い…

「バカな子だね」

穏やかな声に目を向けると、マウロがいた。
シャツとベスト姿で彼もびしょ濡れだ。
…ちょっと今は喋る気力もないの。
ごめんマウロ。貴方のドレスダメにしちゃった…
…そこで思考は途切れた。

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