追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
2 / 358
第一章 王子への転生と冒険者修行

第2話 魔力造血幹細胞

しおりを挟む
 俺は無事に転生したらしい。
 めでたい!

 めでたい事だが……、困った!
 転生したら、赤ん坊なのだよ。

 いや、生まれ変わったのだから、当たり前なのかもしれないが、不便な事この上ない。
 まだ目がよく見えないし、体もロクに動かせない。

 周囲の音や話し声が聞こえるけれど、知らない言葉で何を言っているのかさっぱりだ。
 ストレスがハンパない!

 さっきお乳を飲まされたわけだが、ついこの間まで二十二才の成人男性だった俺だ。
 授乳プレイをされているみたいで、恥ずかしい事この上なかった。

 今はベッドか何か柔らかい布団の上だと思う。
 目が見えないから本当に不便だ。

巧良輔たくみりょうすけ、聞こえるか?』

 誰だろう?
 女性が俺に話しかけて来た。
 何で巧良輔たくみりょうすけって、俺の名前を知っているのだろう?

『私は女神ミネルヴァ。女神ジュノーの部下だ。君の心に直接話しかけている。返事をしてくれるかな?』

 心に直接……!
 テレパシーとか、念話とか言うヤツかな?
 とにかく返事をしてみますか、頭の中で言葉をイメージしたら良いのかな?

『はい。聞こえています。私がたくみです』

『うむ。ちゃんと聞こえていて良かった。無事転生したな。おめでとう』

 おお! ちゃんと通じたよ!

『ありがとうございます。でも、赤ちゃんからやり直しですね。ちょっと不便で……』

『まあ、それは仕方ないな。それより、君の希望を叶えに来たぞ』

『希望?』

『転生する前に、女神ジュノーに話していただろう? 魔法を使えるようにしろと』

 おお! そうだ! そうだ!
 転生前に女神ジュノー様に話したけれど、すぐに転生させられてしまった!

『思い出しました! ええ! この世界には魔法があるとのお話でしたので、出来れば魔法を使えるようにして欲しいのです! それも強力なのを使えるとありがたいです!』

『うむ。自分の身を守るのに必要だしな。この世界で上手くやって行くにも必要な事だろう。その願い聞き届けた。ほら』

 おお!
 何だろう……。
 体がポカポカするような感じがする……。

『何か体が暖かくなった気がします』

『今、君に魔力を与えた』

『魔力ですか? それはどういった物なのでしょうか? 角が生えるとか?』

『安心しろ。角は生えないぞ。魔力は魔法を行使する時のエネルギー源だ』

 魔法のエネルギー源……。
 それが俺の体の中に入って来たのか。
 わかるような、わからないような……。

『あの~、その魔力ですが、使うと減るのですか?』

『減る。だが体内で生成される』

『体内で生成……。それは、魔力用の内臓があるとか……。そう言う事でしょうか?』

『赤血球は、わかるかな?』

『はい。血液の中に入っている……。何と言うのかな……。血液を構成している物質、細胞の一種ですよね』

『うむ、そうだ。赤血球がわかるなら、理解が早いぞ。魔力は赤血球と同じように、人間の血管の中を循環している』

『なるほど』

『赤血球は、骨髄の中にある造血幹細胞で作られるのだ。魔力も同じ原理で作られるのだ』

 あー、造血幹細胞って聞いた事があるな。
 確か骨髄移植のニュースで……。骨髄バンクとか……。
 病気で血液が上手く作れない人にする治療法のニュースだったな。

『じゃあ、魔力造血幹細胞みたいな物を俺の体内に入れたのですか?』

『魔力造血幹細胞か! 上手い表現だな! 私は魔力のもとと呼んでいたが、魔力造血幹細胞の方がより医学的で良いな。これからは、そう呼ぼう。それで君の体には、骨髄に魔力造血幹細胞を流し込み、血液内に魔力が循環するようにした。あれ……? あっ!』

『どうしましたか?』

『うーむ。普通の量を流し込んだつもりだったのだが……、我々神の普通基準で流し込んでしまった……』

 神の普通基準?
 つまりそれは……。

『つまり普通の人間よりも量が多いと?』

『うむ』

『いや、まあ、魔力が多い分には困らないですよ。魔法をバンバン使えるって事ですよね? 逆に助かります。ちなみに普通の人間の何倍くらいですか?』

『いや……。その……。一兆倍……、いや、百兆倍とか……。たぶんそれ以上……』

 はい!?
 百兆倍以上!?

『それって人間超えていますよね? 人間やめるレベルですよね?』

『まあ、我々神基準だからな~』

『それって実害はないですよね? 魔力が多すぎて死んだりしないですよね?』

『うん? うん、まあ、大丈夫だろう……。魔力は赤血球より遥かに微小だし……』

 今、目を反らしたでしょこの人!
 言葉のトーンでわかった。

『取り出す事は出来ないのですか?』

『一度流し込んだ魔力造血幹細胞は、取り出せない……。魔力造血幹細胞は、骨の中にあるわけだし……』

 女神ジュノー様も雑だったけれど、この女神ミネルヴァ様も雑だなあ~。
 神コンビ大丈夫なのかよ

『まあ、今後も私が要ウォッチして行こう! 安心しろ!』

 本当に大丈夫なのかよ~。
 不安だな……。
 まあ、女神ミネルヴァ様がウォッチしてくれるなら……。
 いや! 逆に不安か?

『まあ、とにかく君の希望は叶えられた!』

『そ、そうですね……。ありがとうございました……。しかし、女神様でも間違える事があるんですね』

『うむ。私が作った仕組みではないからな』

『……え? それは一体……。ここは女神様達が作った世界じゃないのですか?』

『違う。私とジュノーは約千七百年前から、この世界を管理している』

『じゃあ、その前は?』

『別の神がこの世界を作り管理していた。だから、私達もこの世界の事を全て把握出来ていないのだよ』

『あー、それで魔力のもとなんて呼び方を……』

『うむ。正式名称は知らんのだ』

 なるほどね。
 あれ?
 じゃあ、前の神様はどうした?

『あの~、差し障り無ければですが、前の神様はどうされたのでしょうか?』

『平たく言うとクビだな。態度が悪かったらしい』

『ああ、神様の世界も厳しいですね』

『うむ。だから、君もしっかり頼むぞ! 私たちの評価は君の活躍にかかっているのだ! 文化文明レベルを上げ、人口を増やし、人々を幸せにし、始祖の神からの評価ポイントをアップしてくれ!』

『わかりました! 鋭意努力いたします!』

 ……と言っても、まだ赤ん坊だから何にも出来ないけどね。

『君は魔力を得たが、まだ赤子だ。魔力の使い方は、もう少し成長したら教えよう。今は体内に流れる魔力を感じ取るように努力してみてくれ。それが魔法の訓練にもなるのだ』

 それなら赤ん坊でも出来そうだな。
 まあ、やる事もないし。
 しばらくは、それをやってみよう。

『ミネルヴァ様、あと一つお願いがあるのですが……』

『うん?』

『周りが何を話しているのか、さっぱりわかりません。これは何とかなりませんか? 赤ん坊に生まれ変わりましたが、中身は大人なので流石にこの状態は辛いです』

『良いだろう。この世界の言葉を分かるようにしてやろう。ほら』

 うお!
 急に頭に情報が流れ込んで来た!

 うお!
 おおお!
 ああー!

 なるほど、わかった。
 言葉を理解出来たな。

『ありがとうございます! それと聞きたかった事があるのですが――』

『おっと! 誰か来た! では、またな』

 えっ? 『またな』って、もう行っちゃうんですか?
 いや、もう少し色々と話し合ってですね。
 密な打ち合わせを……。

「きゃ!」
「あっ! 黄金のフクロウ!」

 若い女性の声だ。俺の世話係かな?
 よし! 話している事が分かるぞ!

「ねえ、黄金のフクロウって、女神ミネルヴァ様の化身よね?」
「そうだわ! きっと女神ミネルヴァ様が王子様を祝福しに来たのよ! みんなに知らせなくちゃ!」

 世話係たちの足音が遠ざかって行く……。

 あのー、実はさ~。
 さっきから用を足したくなってきているのですが……。
 黄金のフクロウを報告するよりも、こっちを優先して欲しいな……。

 ああ、どうしよう。

 ああ。

 ああ。



 あああああああああ!


 *


 女神ミネルヴァは神の住むところ、天界に戻った。
 この世界の管理責任者たる女神ジュノーは机に向かい忙しそうに書類に目を通し、部下の下級神たちに指示を出していた。

 やがて部下の下級神たちが全て出払い、女神ジュノーと女神ミネルヴァ二人きりになった。
 女神ジュノーが話し出した。

「お疲れ様、ミネルヴァ! 早かったわね!」

「魔法と医学は、私の担当だからね。これ位どうという事はない。魔法を使えるようにして来たよ。あの子はこれからも私が様子を見よう」

「あら! 随分気に入ったみたいね! じゃあ、お願いするわ。……内密にね」

「もちろんだ。違う世界で死んだ人間の魂を、こちらの世界に引っ張って来た事がバレたら大モメになるからな。特に地球の神々はうるさい。君は、また地球世界に行くのか?」

「ええ。良い子を見つけて連れてこなくちゃ! 留守中は頼むわよ!」

「バレないように気を付けろよ」

「大丈夫よ~」

 そう言うと女神ジュノーは、姿を孔雀に変化させ飛び立って行った。
 一人残された女神ミネルヴァは、溜息混じりに独りごちる。

「こっちは戦力が少ないのだ。ホントに、バレないでくれよ……」
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...