追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
31 / 358
第二章 流刑地への追放

第31話 実験農場

しおりを挟む
 領主エリアに土魔法で建物を作り始めて三日が経った。
 制作は順調で、俺の作業は昨日終わった。
 
 ルーナ先生は、室内の階段、玄関、窓を魔法で作り出している。
 食堂の竈やキッチンは凝るつもりらしい。

 現在のアンジェロ領の領主エリアは、穴あきの箱が沢山並んでいる状態だ。
 明日から大工がドアや窓の取り付け作業に入る。ジョバンニが商業都市ザムザで手配したので、俺が朝夕転移魔法で送迎する。

 小さいながらもやっと自分の領地が動き出した実感があるよ!
 さて、俺は次の仕事だ……。



 領主エリアの方はルーナ先生にお任せして、俺はジョバンニと村に来た。
 領主として村の面倒も見ないとね。

 アンジェロ領唯一の村は、人口十二名の寒村だ。
 掘っ立て小屋が並ぶ村の住居エリアに、森を切り拓いて作った大して広くもない畑しかない。
 領主としては、もうちょっと何とかしてやらないと。

「これは! これは! ご領主様!」

 ジョバンニが村長を連れて来た。

「村長さん、今日は色々用事があって来ました。最初は農具から……」

 俺はアイテムボックスから、商業都市ザムザで調達した鉄の農具を取り出した。
 種類ごとに地面に置いていく。色々な道具をまとめ買いしたので、かなりの分量だ。

「ええっ! 領主様! 一体これは?」

「この農具や道具を村に貸し出します。クワ、鎌、ナタ、ノコギリ、手斧、斧、ナイフ、全部鉄製で各十ずつ用意しました」

「ええっ! よろしいのですか!? 鉄製の農具は高価と聞きますが、それをこんなに沢山!」

「ええ、良いのですよ。村の人数が減っちゃいましたからね。これで上手くやって下さい」

「ありがとうございます! これから大麦を育てる季節ですので、助かります!」

「鍛冶師を雇う予定なので、壊れたら鍛冶師に修理させます」

「はい! わかりました! ありがとうございます!」

 この村は若者が出て行ってしまったので、年寄りが多い。人口も半減した。
 だが、誰かが出て行った村人たちの畑を耕さなくてはならない。

 畑なんて、放っておけばすぐに雑草が生えて荒れ地になってしまうのだ。
 村の畑を維持するには、一人当たりの仕事効率を上げるしかない。

 しかし、村人が使っている木製の農具や石器みたいな道具じゃ効率が上がるわけがない。
 そこで、鉄製の農具や道具を俺が与えて、何とか効率的にやってもらおうと思う。

「ただし、税はちゃんと納める事。良いですね?」

 これはじいから注意された事だ。
 俺は最初鉄製の農具を村にプレゼントしようと思ったのだけれど、じいに反対された。

「何でもかんでも施すのはいけません。領民を甘やかす事になります。線を引くところはキチンと線を引いて下さい。鉄製農具は貸出とし、その代わりきちんと税を納めるようにお申し付け下さい」

 確かにじいの言う通りだよね。
 俺は領主の義務として、領民の面倒を見る。鉄製の農具を貸し出し、色々と村が住みやすいようにしてあげる。
 その代わりに領民も義務を果たす。つまり税を納めて貰わないと。

「……わかりました。それで……、税は……、どれほどお納めすれば……」

 しまった! そこはじいと打ち合わせてなかった!
 税ってどれ位取れば正解なのだ?

 うーん……。

 日本人だった時は、どうしていただろう?
 社員になった時は、税金と社会保険で二割くらい天引きされていた気がする。

 村長さんが暗い顔をしているな。
 税が高いか、安いかは死活問題だ。
 小さな村だし、取れる税なんてたかがしれているだろし……。
 うーんと……。

「じゃあ、農産物の二割で!」

「えっ!? それだけでよろしいのですか!?」

 あれ!? 安すぎ!?
 ジョバンニをチラッと見ると、天を仰いでいる。

 あー! やっちまたか!
 ど、どうしよう……。

 そういや江戸時代は、四公六民や五公五民だったって学校で習ったな。
 つまり当時の税率は四十パーセントから五十パーセント……。
 そ、そうか。俺の提示した二十パーの税率は安すぎだよな。

 また、じいにクドクドと小言を言われそうな予感が……。
 そ、そうだ!

「こ……、これは臨時の特別措置だ! 村人が減ってしまったからな。正式な税率は追って沙汰する!」

「ははー!」

 俺は精一杯威厳をつくろった。
 とりあえず今年は二割で様子を見て、収穫の具合を見てじいに決めて貰おう。

「それから……、ジョバンニ! 魔物の素材の買い取り分を渡そう!」

 俺はアイテムボックスから、塩の入った小ぶりな壺を取り出すとジョバンニに渡した。
 商取引は商人のジョバンニの担当だからね。俺はあくまでアイテムボックスに入れて運んだだけ。今後を考えて、話はジョバンニからさせる。

「村長さん、これが前回お預かりしたホーンラビット二匹分の毛皮と角の対価です」

 ジョバンニが小ぶりなツボを渡すと村長は中身を見て驚いている。
 壺にはコップ二杯分の塩が入っている。

「こ、こんなに塩を頂けるのですか!」

「はい。お受け取り下さい。手数料は頂いていますので、その塩は正当な村の受け取り分ですよ」

「あ、ありがとうございます! これでしばらく塩には困りません」

 村長はとても喜んでいる。
 前のレートは塩小さじ一杯だったからな。いくらなんでも少なすぎだろ騎士ゲー。

「それから、次に魔物を倒したら、アンジェロ様がお貸しなされた鉄製のナイフを使って、丁寧に魔物を解体して下さい。綺麗に解体すれば、高く売れますよ。他に欲しい物があれば、交換するので希望を言って下さいね」

「次は……、布……、服が欲しいですね」

「ちょっと高くなりますが、大丈夫ですよ」

 いつの間にか他の村人も集まって来ている。
 村長とジョバンニの話を聞いて、女性陣がヒソヒソ話しながら目をギラつかせている。

「何々?」
「えっ!? 塩がそんなに沢山!?」
「布と交換出来るの?」
「鍋とは交換出来ないかしら?」

 いいよ! いいよ!
 健全な物欲は、健全な経済を育てるからね!

 男性陣は鉄製の農具と道具に群がっている。
 年寄りが多いが、鉄製の道具を使えば、年寄りでもそれなりに働けるだろう。

「なあ、このナイフ鉄製だぞ!」
「俺たちが使ってよいのか?」
「このクワ! 先端が鉄だぞ!」
「すげえ! これで冬の薪割がはかどる!」

 喜んで貰って何よりだ。
 俺も嬉しい!

 男ってさ、大工道具とか見ると意味もなく燃えるよね。
 日本に住んでいた頃の話だけれど、ホームセンターに行くと使いもしないのに電動ドリルとか凄そうな工具が欲しくなったもん。

 ただ、今回農具を買ってきて俺も驚いたのだけれど、クワは日本にあるクワと形が違う。
 クワというよりもスコップの様な形をしていて、鉄製と言っても先端部分の木を鉄でカバーしただけの物だった。

 鍛冶屋いわく、これがフリージア王国で標準的なクワだそうだ。
 ちなみにお値段銀貨一枚、日本円で約一万円。
 農民の買えない値段じゃないと思うけど、ちょっと高いよね。

 こんなクワでも木製のクワよりもマシ……、なんだろうな。
 うーん、日本にあったL字型の鍬の方が、優れていると思う。先端の鉄の重みで鍬が深く畑に入るだろうしさ。

 ああ、思い出した。
 他にもクワの先端が櫛みたいになっているタイプもあったな。

 鍛冶師を雇えて時間があれば、日本のクワを制作させてみよう。
 ここの村で試してもらって……。

 うん、この村は実験農場的な位置づけにしても良いかもしれないな。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...