追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
42 / 358
第三章 領地開発

第42話 気の毒な家族作戦

しおりを挟む
 奴隷商人のベルントが、応接室に戻って来た。
 ベルントの後ろから、ぞろぞろと奴隷が応接室に入って来る。

 みんなちゃんと洗った清潔な平民用の服を着ている。血色も良い。ちゃんと食事もさせているのだろう。
 うん、管理は行き届いているみたいだな。

 全員人族だ。ぱっと見朴訥そうな田舎の人って感じで見た目は普通だ。
 奴隷と言っても『りっしんべん』の方じゃなく、労働力の方だからね。

「アンジェロ殿下。ここにおりますのは、農民と木こりでございます」

 いち、にい、さん、しい……七人いる。

「ベルント、人数が多いようだが? 必要な奴隷は、使用人にする農民一人と、木こり一人。二人もいれば良いと思っていたのだが」

「はい。ジョバンニさんから、伺っております。しかし、家族ごと買ってしまった方が、殿下のご領地の住民が増えて良いと思いまして、ご用意させていただきました」

「ああ、そういう事か」

 まあ、確かにアンジェロ領は住民が少ないからな。
 奴隷とは言え人が増えるのは悪い事じゃない……。

 ん?
 ん、ん、ん?

 いやいや、待てよ!
 食料問題があるから、やたら人を増やすわけにもいかないな!

 アンジェロ領の農地は、あの小さな村の農地だけだ。
 だから食料を自給出来ない。

 基本的に食料は外部購入。今は商業都市ザムザで買っている。
 とすると、人数をやたら増やすのは悪手か?

「ちょっと待て! 食料調達の問題があるから、やたらと人数は増やせないぞ!」

 俺が強い口調で告げると、ベルントは大袈裟に驚いて見せた。

「ええ!? そうなのですか? わかりました。それではご入用な者だけをお買い上げください。それでは、奴隷をご紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」

 いや、いや、いや、ベルントはさ。
 俺が王子でお金持ちだから、沢山奴隷を買わせようと思っているだろう。

 商人だから売れそうな所には、バンバン押し込もうって魂胆が見え見えだ。
 その手には引っかからないぞ!

「……始めてくれ」

「かしこまりました。まずこちらが使用人候補の農民の家族でございます。夫が二十三才、妻が二十一才、娘が五才でございます」

 娘は五才って……。
 あんな小さな子も売り物なのかよ……。
 不安そうな顔で母親の足にしがみついている。
 見ているだけで胸が痛い。

「この家族は非常に真面目でございまして、働き惜しみをいたしません。年も若いですから長くお使い頂ける奴隷でございます」

 奴隷商人ベルントのセールストークが続く。
 笑顔で身振り手振りを交えて、見た目は普通の営業トークなのに、扱っている商品は人間……。

 しかし、ちょっと疑問なのは、この家族は真面目なのに奴隷として売りに出されたって事だ。
 真面目に働いていれば税も払えるだろう。

 どういう経緯で奴隷になったのだろう?
 質問してみるか。

「ベルント。そこの者は真面目で働き惜しみをしないと言うが、それなら何故奴隷として売られたのだ? 税が納められないから、領主に売られたのではないのか?」

「はい。ブルムント地方は、ここ数年不作でございまして……。税を納められない者が増えております」

「不作……。なるほど……。では、彼らは怠けていた訳ではないのだな?」

「左様でございます。まだ若い夫婦ですので、村から割り当てられた農地も少なく、その上不作で……。ちょっと気の毒な農民家族なのでございます」

「うーむ。なるほど」

 そういう事情なのか……。
 それで家族丸ごと、税のカタに売りに出されるのは気の毒だな。
 まだ子供も小さいのになあ。
 領主も税を待ってやれば良いのに!

 俺が考え込んでいるとジョバンニがプッシュして来た。

「アンジェロ様、この者たちは領主エリアの使用人としてお買い求め下さい。荷物の整理や日常の細々した事を片付けるのに人手が必要です」

「うーん、確かにそうだが。人をやたらと増やすのはな……」

「それに彼らは農民です。将来農地を拡張した際は、土地を与えて農民として住まわせる事も出来ます」

「うーん、まあ、そうだね……」

 ああ、そんな話しが出たな。
 まあ、農地拡張はかなり先になると思うから、しばらくは使用人か。

 しかし、三人も必要か?
 やはり食料調達面が気になるなあ。

「ベルント、次の紹介を」

「次は木こりの家族でございます。夫と妻は三十五才、息子は十八才、娘は十五才でございます。この家族が奴隷となりましたのは、少々気の毒なケースでございまして……」

 また気の毒なのか!
 さっきから気の毒アピールをされている気がする。
 なんか同情を誘って売りつけようとしていないか?

 奴隷商人ベルントは、目をウルウルとさせながら悲壮感たっぷりに語る。まったく! クサイ芝居をしやがって!

「この家族の兄が賭け事で借金を作ってしまいまして……。その兄が先日亡くなってしまったのです。この夫が借金の保証人になっていた為に、借金のカタで奴隷に売られてしまったのです」

 それは気の毒だな。
 日本でも借金の連帯保証人になった為に、家屋敷を取られたなんて話を聞いた記憶がある。

「そんな事情でございますので、本人たちには何も問題がございません。人格はいたって健全、仕事ぶりは真面目で体も丈夫です。一番のオススメといたしましては、息子も木こりなので、父親と二人でご領地の森林開発に従事させられます。さらに、製材も出来るのですよ!」

「製材か……それは良いな……」

 父と息子の二人で木こり……、労働力が二倍だ。
 さらに製材も出来るって事は、切り倒した木を木材に加工して貰える訳だ。
 領地エリア北側の台地に生えているナラの木や森の木を活用できるぞ。

 二人ともガッチリした体格で体も大きい。ベルントの言う通り体が丈夫そうだ。
 これはアタリの人材だな!

「木こりは、良い人材だ」

「ありがとうございます!」

「しかし……、二家族買うとなると全員で七人か……。うーん、あんまり人を増やしたくないな……」

 アンジェロ領の本拠地エリアに住むのは、俺、ルーナ先生、ジョバンニ、じいの四人だよな。
 そこに七人加わると、十一人か……。金はあるが、食料の調達が心配だ。

「ジョバンニ、人が増えると食料が心配だ。他にも鍛冶師や陶工もこれから雇うしな……」

「アンジェロ様、食料が心配なのはわかりますが、ここ商業都市ザムザで調達すれば問題ありません。商業ギルドには、食品商を紹介してもらっております。食料調達はご心配無用です」

「うーん……、そうか……。なあ、ジョバンニ。知っての通り、俺はあまり奴隷を買うのに気が進まない。それも……、あんな小さい子供も買うなんて……。男だけ買えば良くないか?」

 そうだな。俺の気が進まない原因は食料問題もあるが、元日本人の倫理観もある。
 どう考えてもあんな小さい子供を売り買いするなんて、間違っていると思う!

「アンジェロ様! お優しい気持ちは尊いですが……。家族ごと買い取らねば、家族はバラバラになり、かえって可哀そうな事になりますよ!」

「えっ!? そうなの?」

「そうですよね? ベルント殿?」

「はい、その通りです。もちろん、男だけ買い取る事も可能です。そうすると、残った女房と女の子は別の所に売る事になります」

「別の所?」

「まあ、例えばですが、娼館ですとか」

「ええっ!? 娼館!?」

 さっきから農民と木こりの家族が、不安そうな顔をしている。
 木こりの方の十五才の女の子は、泣きそうな顔をしているし、農民の五才の女の子は涙目になっている。

 にもかかわらずベルントはデカイ声で話して……、あっ!
 それ俺に話しているんじゃなくて、奴隷家族の方にわざと聞かせているだろう!

「あの、私たちも真面目に働きますので、夫と一緒に買ってください」

 木こりの奥さんが、必死になってアピールして来た。
 娘も続く。

「掃除でも洗濯でも何でもやりますのでお願いします! 家族一緒にお願いします!」

 ううううんん。そんなに必死に頼まれると……。

「お手伝いします! お父さんとお母さんと一緒にいさせて!」

 ああ、小さい女の子までアピールかよ。
 参ったな。

 俺が対応に困っていると、突然ルーナ先生が声を上げた。

「料理は出来るか?」

 両家族の女性陣が、必死で返事をする。

「出来ます! 田舎料理ですが出来ます!」
「料理だけじゃなくて、山鳥を解体することも出来ます!」
「私も手伝い出来ます!」

「アンジェロ。女は私が使いたい。『はんばぐ』を覚えさせる。子供は手伝わせる。だから家族ごと買っても無駄にならない」

 珍しくルーナ先生がジト目でなく、やさしい目をしている。
 家族愛とか、そういうのに弱いのか?
 ちょっとした新発見だな。

 ああ、奴隷家族がすがる目で俺を見ている。
 そうだよな。家族がバラバラになるのは、悲劇だよな。
 むううう……。

「わかった! 全員買おう!」

 奴隷家族がワッと喜びの声をあげた。
 食料問題はあるけれど、まあ、喜んでくれるから良いか。
 人が増えれば出来る事も増えるだろう。

 しかし、まんまと奴隷商人ベルントの『気の毒な家族作戦』にやられた気がする。

 次は鍛冶師の奴隷だな。
 確か犯罪奴隷だったし、きちんと見極めなくちゃ。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...