追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
41 / 358
第三章 領地開発

第41話 奴隷商人ベルント

しおりを挟む
 ――二か月が経ち、六月になった。

 この異世界にも暦がある。
 三十日で一月、十二か月で一年だ。

 王都から北部王領に追放同然で放り出されてから、あっという間の二か月だ。
 六月と言ってもそれほど暑くなく、まだ長袖で過ごしている。

 ここは大陸のかなり北側に位置しているからな。
 日本で言うと北海道や東北地方に気候が近いのだと思う。
 日本との違いは、梅雨がなく、空気が乾燥としている所だ。かなり過ごしやすい。

 この二か月で、領主エリアに俺たちの住む館が出来た。
 俺とルーナ先生が土魔法で作った石の外壁に、商業都市ザムザから来た大工たちが窓枠やドアを取り付けて完成だ。

 毎朝毎晩、大工たちを転移魔法で商業都市ザムザから送り迎えした甲斐があったよ。

 さて、北部王領改めアンジェロ領に住むところが出来た。
 次に必要なのは、住む人だ。
 アンジェロ領の住人は増やしたいが、元流刑地に住みたがる物好きはいない。

 そこで、今日は奴隷を買いに商業都市ザムザにやってきた。俺に同行するのは、ルーナ先生と商業担当のジョバンニだ。

 俺は商業都市ザムザの大通りを歩きながら、深いため息をつく。

「アンジェロ様。やはり奴隷を買うのは、お嫌ですか?」

 ジョバンニが俺に気を遣う。

「大丈夫。ちゃんと納得しているよ」

 奴隷を買う事に、俺は納得している。理屈の上では。
 アンジェロ領を発展させるには、働き手になる住人が必要で、手っ取り早いのは奴隷購入だ。俺たちの住むフリージア王国でも奴隷は当たり前に沢山いる。

 だが、俺は奴隷制度が、どうしても好きになれない。
 転生前の日本人としての記憶、感覚、倫理観、道徳観が、俺の中に存在しているからだろう。
 転生前の二十二年間を奴隷制度のない日本で過ごしていたのだ。こればかりは、どうしようもない。

「ジョバンニ! 購入した奴隷は、ちゃんと扱うのだぞ! ちゃんとした奴隷商人から買うのだぞ!」

「はい。アンジェロ様のお申し付け通りに!」

 この世界での奴隷は物だ。
 人間ではなく、あくまで主人の所有物なのだ。
 なかには、馬以下のひどい扱いをする主人もいると聞く。

 奴隷商人に中には、『人狩り』をするけしからん商人もいるらしい。

 俺は、そんなのは認めない。奴隷を買うなら、ちゃんとした奴隷商人から買って、ちゃんとした扱いをしたい。偽善かもしれないが、そうでもしないと俺の日本人倫理観と折り合いがつけられないのだ。

 ジョバンニが一軒の店の前で立ち止まった。

「こちらの店です」

「大きい店だね……」

 大通りに面した木造三階建ての立派な商館だ。素人目にも、良い建材を使っているのがわかる。
 奴隷商は、儲かるのだな。

 扉の前には、槍を持ったゴツイ面構えの大男二人が番をしている。
 ジョバンニの姿を見ると、すぐに主人に取り次いでくれた。

「これは! これは! アンジェロ殿下! お待ちしておりました! どうぞ中へ! さあ、どうぞ!」

 主人はマジで揉み手をして俺たちを迎えた。
 久しぶりに偉い人扱いをされた気がする。
 最近は白狼族のサラに『オマエ!』、『オイ! アンジェロ!』を連発されていたからな。

 さて、今日は王子らしく振舞うか。

「うむ、世話になる」

「はは~!」

 主人は大きな体を卑屈なくらい屈めて俺に頭を下げた。
 商人にしては、かなり体格が良い。年は三十才くらいか?
 背が高く、金髪、彫の深い顔……、うん、この人はたぶんブルムント地方の人だね。

 店の中の応接室に通されて、ソファーに座る。
 ルーナ先生とジョバンニは、立ったまま俺の後ろに控えている。
 主人も立ったままだ。

 なんか居心地が悪いな……。
 元日本人感覚が強い俺としては、オマエ扱いされた方が過ごしやすいと再確認した。

 さて、商談の前に世間話でもして、少し場をほぐしますか。

「ご主人はブルムント地方のご出身か?」

「左様でございます。ブルムントのシャーレの出でございます」

 ブルムント地方は、フリージア王国の北東側、地図で言うと右上の地域だ。
 小国が乱立していて、戦争が多い。

「シャーレと言うと、ここザムザから近いな」

「はい、殿下。内海を渡って、少し北に行った所でございます」





「名を聞いておこう」

「ベルントと申します」

 主人のベルントは、徐々に緊張がほぐれて来たようだ。
 ジョバンニが発言の許可を求めて来たので、自由に話すようにジョバンニにも奴隷商人ベルントにも申し渡した。

「アンジェロ様。ベルント殿は、ブルムントから奴隷を仕入れているのです。今日ご覧頂くのはブルムントで買い付けた奴隷です」

「大丈夫なのか? 外国から奴隷を入れても問題ないのか?」

 奴隷商人のベルントが胸を張って請け負った。

「ご安心ください、殿下! 当商会は正規の手続きを経た奴隷のみを取り扱っております!」

 ベルントは、誠実そうな印象だし、店も小ぎれいにしていて清潔感がある。
 この商会と取引しても良いだろう。

 俺がそんな事を考えていると、ベルントが色々と説明を始めた。

「――という事でございます。ジョバンニさんから、奴隷のご相談を受けました中で、農民、木こり、鍛冶師を手配いたしました」

「うむ」

 おっ! 鍛冶師に木こり!
 ポイント高いな!


「ブルムント地方は寒冷な地域ですので、アンジェロ様の御領地でも問題なく住まう事が出来ると思います」

 なるほど。気候か。
 アンジェロ領は、フリージア王国の最北にある。暖かい地方出身の奴隷では、なじまないかもしれない。
 それで、寒冷なブルムント地方出身の奴隷商人ベルントを選んだのか。

「良いだろう。奴隷は全員ブルムント出身者か?」

「左様でございます。殿下。私は、ブルムント地方の領主に顔が利きますので、仕入れも間違いありません」

「間違いないと言うのは、犯罪まがいに連れて来た奴隷ではないという意味か?」

「左様でございます。ご安心してお取引いただけると自負しております」

「わかった。良いだろう」

 ベルントが恭しく頭を下げた。

「ありがとうございます! 本日は新鮮な奴隷を取り揃えておりますので、きっとご満足いただけるかと存じます」

「新鮮?」

「はい。奴隷になって日が浅い者たちでございます!」

 ベルントはニッコリと笑って答えた。
 ベルント自体は、真面目な奴隷商人なのだろうが……。
 ベルントの笑顔は、見事なシャイニースマイルなのだが……。

 これだ! これだよ!
 人間を生鮮食品扱いだよ!
 これだから、奴隷制度はクソだ!


 ベルントは購入候補の奴隷を連れに、応接室から出て行った。
 俺は深くため息をつくとジョバンニと打ち合わせを始めた。

「今回、購入する奴隷は、どういう人たちなのだ?」

「農民と木こりは、税が払えず奴隷落ち。領主が売りに出したと聞いています。ただ……、鍛冶師は犯罪奴隷でして……」

 む? 犯罪奴隷?
 うーん、大丈夫なのか?

「申し訳ありません。鍛冶師は、なかなか見つからず……」

「まあ、鍛冶師はどの国でも大事にされるからな。武器防具から農具まで、仕事にあぶれる事はない。そりゃ、奴隷でも鍛冶師は、なかなか見つからないよな」

「はい。おっしゃる通りです。商業ギルドにも紹介を頼んでおりますが、なかなか見つけられません。そこで、犯罪奴隷でも良いからと……」

「とりあえず会ってみよう」

 俺は奴隷商人ベルントが戻って来るのを待った。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...