追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
43 / 358
第三章 領地開発

第43話 予想外の奴隷

しおりを挟む
「それではアンジェロ殿下。鍛冶師の奴隷を連れて参りますが……、その……、あの……、少々人格に問題がある男でして……」

 奴隷商人のベルントが、申し訳なさそうに話し出した。
 鍛冶師の奴隷は、犯罪奴隷だと言っていたが、人格にどんな問題があるのだろう?

 強面系とか?
 オラオラ系とか?

 ベルントの表情には、不安が窺える。
 ちょっと楽にしてあげた方が良いのかな。

「分かった。その辺りは会ってみてこちらで判断しよう。お前を不敬罪に問う事はせぬから安心せよ」

「ご配慮誠にありがとうございます。それでは連れて参ります」

 ベルントはホッとした様子で応接室から出て行くと、すぐに一人の男を連れて戻って来た。
 男は人族で細身、ボサボサの頭で目つきが悪い。
 部屋に入るなり小声で悪態をついた。

「ケッ! ガキじゃねえか!」

「これ! アンジェロ殿下に無礼だぞ!」

 いや、これダメだろう……。
 ベルントがせっかく探して来てくれたので、一応説明を聞いた。

 この態度の悪い男の罪状、つまり犯罪奴隷になった理由は婦女暴行だった。
 ますます好感度が下がった……、と言うより男に対する嫌悪感が増した。

 この男はお断りしよう。

「ベルント。折角用意して貰って悪いが、この男は遠慮しておこう」

「左様でございますか。ご不快な思いをさせてしまい大変申し訳ございません!」

 男はベルントに小突かれて部屋を出て行った。
 しばらくして、ベルントが戻って来て平身低頭している。

「ああ、ベルント、気にするな。鍛冶師は残念だったが……」

「本当に申し訳ございません! 鍛冶師と言えども、犯罪奴隷はダメでした……」

「うーん……。犯罪奴隷でも、心を入れ替えて真面目に働いてくれるなら受け入れても良かったのだが……」

「あの様子では、難しゅうございますね……」

「うむ。それに人族の鍛冶師だからな」

「やはりドワーフの鍛冶師がよろしいので?」

「そうだな。ドワーフの鍛冶師が必要だな」

 ドワーフと人族の鍛冶師では、レベルがかなり違う。

 鉄鉱石や銅鉱石から鉄や銅の塊を作れるのは、ドワーフの鍛冶師だけだ。
 二つ以上の金属を混ぜて合金を作る事が出来るのも、鉄剣や鉄鎧を作れるのもドワーフの鍛冶師だけだ。

 一方人族の鍛冶師は、メインテナンス系の鍛冶だ。
 剣を砥いだり、鎧の補修をしたりが仕事で、鉱石から金属を取り出したり、ゼロから鉄剣や鉄鎧を作る事は出来ない。

 もちろん人族の鍛冶師のメインテナンス仕事も大切な仕事だが、今アンジェロ領に必要なのはドワーフの鍛冶師だ。
 飛行機を作るのには、精密な金属部品の作成が欠かせないし、ウイスキー作りにも出番がある。

 仕方ない。
 鍛冶師を雇うのは宿題だ。

 奴隷商人のベルントとジョバンニが応接室の隅で、買い取り金額の交渉を始めた。
 今回買い取る奴隷は、農民家族が三人と木こり家族が四人の合計七人だ。

 以前ジョバンニから聞いた話だと、奴隷の相場は一人金貨二枚前後、日本円だと二百万円前後だという話だった。
 安くない買い物だ。

 おっ、交渉が終わったのかな?
 ジョバンニがこっちに来た。

「アンジェロ様、金額交渉が終わりました」

「いくらだったの?」

 ジョバンニからの報告だと合計額は金貨十五枚と銀貨四十枚、日本円だと一千五百四十万円だった。
 内訳は、こんな感じだ。


 農民 夫 金貨二枚と銀貨十枚《二百十万円》
 農民 妻 金貨二枚《二百万円》
 農民 女の子 金貨一枚《百万円》

 木こり 夫 金貨二枚と銀貨五十枚《二百五十万円》
 木こり 妻 金貨二枚《二百万円》
 木こり 息子 金貨二枚と銀貨八十枚《二百八十万円》
 木こり 娘 金貨三枚《三百万円》


「木こり家族が高いな」

「そうですね。夫が三十五才で息子が十八才と働き盛りで力がありますので、相場より高めです」

「なるほど。労働力として価値が高いという訳か」

「はい、そうです。それから娘はまだ十五才と若いですので。その……、若い娘は……」

「ああ、言わないで良い。わかるよ」

 そんなに可愛い娘さんじゃなかったけれど、それでも金貨三枚、日本円なら三百万円か。

「農民の女の子は安くないか? 金貨一枚だろ?」

「まだ五才ですので。これから病気で死ぬ可能性もありますし、大人になるまで食事を与えなくてはなりません。何より労働力になりませんので」

「ああ、それで安いのか……。わかった。その値段で良いよ。払ってあげて」

「かしこまりました」

 アイテムボックスから金貨と銀貨を取り出して、ジョバンニに渡す。
 ジョバンニから代金を受け取ったベルントが、満面の笑みで揉み手しながら寄って来た。

「アンジェロ殿下! お買い上げ誠にありがとうございます! 実はもう一人ぜひご覧頂きたい奴隷がおります! 非常に珍しく、貴重な奴隷でございます!」

 んん? なんだ?
 珍しい奴隷?

 ジョバンニを見たが首を振っている。
 どうもジョバンニも事前に聞いていなかったみたいだ。

「見るだけなら構わんが……」

「おお! ありがとうございます! きっとアンジェロ殿下のお気に召す事と存じます! 少々お待ちを!」

 ベルントはスキップして応接室から出て行った。
 しばらくしてベルントが女の子を一人連れて戻って来た。

 連れて来たのは飛び切り美形の女の子だ!
 透けるような白い肌に、サラサラの長い金髪、印象的な切れ長の瞳。
 白い薄いワンピース越しに体のラインが透けて見えるが、細身でスタイルも良い。

 特徴的なピンと尖った耳……って、あれ?

 尖った耳!?
 あれっ?
 あれれ?

「ちょっ! エルフじゃん!」

 思わず素で声が出てしまった。
 奴隷商人のベルントはニッコリと笑って嬉しそうに両手を広げて答えた。

「左様でございます! 今日のとっておき! エルフの奴隷でございます!」

 やばい!
 ベルントのヤツ何を考えているのだ!

「バカ野郎! エルフは奴隷にしないってのが、暗黙の了解だろうが!」

 エルフ族は同族意識が強い。
 エルフを迫害した者、奴隷にした者はエルフ族から復讐されると言われている。

 いわく、かつてエルフ族を迫害した王国があったが、王族は何者かに全て殺されてしまった。
 いわく、かつてエルフを奴隷にした領主がいたが、むごたらしい最後を遂げた。

 真偽の程はわからないが、エルフ族が密かに手を下したと言われている。
 少なくともこの大陸北西部、フリージア王国近辺の国では、エルフ族は奴隷にしない。エルフ族にいらぬちょっかいは出さないというのが不文律だ。 

 それに現実的な面でもエルフ族を敵に回すのは得策じゃない。

 魔道具はエルフ族だけが製造をしているのだ。
 エルフ族を敵に回せば貴重な魔道具が手に入りづらくなる。

 そんな理由でエルフ族自体は人口こそ少ないが、色々な影響力があるので、各国でそれなりに敬意を払われている。
 そのエルフを奴隷にするとか、正気の沙汰じゃない。

 俺が驚き固まっていると後ろで魔力が急速に盛り上がった。
 まずい! ルーナ先生だ!

「貴様! この下衆が! 死ね!」

 振り返るとゾッとするような怒りの表情をしたルーナ先生が右腕を振り下ろした。
 俺は魔法の発動を感知した。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...