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第四章 ウイスキーと異世界飛行機の開発
第67話 領都キャランフィールド
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「それではである! 冒険者ギルド『キャランフィールド支部』オープンなのである!」
黒丸師匠の元気な掛け声で、俺と黒丸師匠がテープカットをした。
今日はアンジェロ領の冒険者ギルドオープン日だ。
黒丸師匠が掛け合ってくれたお陰で、冒険者ギルド大陸北西本部の許可が早く下りアンジェロ領に冒険者ギルドが出来ることになった。
俺はこの街をキャランフィールドと名付けた。
有名なウイスキーの名前から、『キャラン』を拝借して、荒れ地が広がっているから『フィールド』をくっ付けた。かなり安直なネーミングだ。
この街から将来売り出すウイスキーは、『キャランフィールド三年物』、『キャランフィールド十年物』と呼ばれる。
異世界ウイスキーの名産地として、この異世界にキャランフィールドの名前を響かせたい。
「アンジェロ領の領都キャランフィールド。響きは悪くないですな」
じいも気に入ってくれたようで、報告書を王宮に上げて貰う事にした。
ちなみに川の近くの村は、『リバフォ村』と名付けた。名前の由来は、川と森、リバーとフォレストの近くにあるから、『リバフォ村』だ。
安直だけど良いのだ。村長さんは村に名前が付いたって喜んでいたしさ。
とにかく俺は忙しくて、ネーミングに時間を掛けているヒマがない。
好材料なのは、冒険者ギルドが出来上がった事で俺の手元から少し仕事が離れてくれる。
獣人たちが持ち込む魔物素材や薬草は、冒険者ギルド『キャランフィールド支部』で買い取る事になった。
今までは俺とジョバンニで対応していたので、少し楽になる。
「さて、建物の中であるな。領主閣下をご案内するのである」
「恐れ入ります。ギルド長閣下」
冒険者ギルド『キャランフィールド支部』のギルドマスターは、黒丸師匠が商業都市ザムザの冒険者ギルドと兼任する。
黒丸師匠の案内で冒険者ギルド『キャランフィールド支部』に入った。
この建物はルーナ先生が全部設えたので、俺は今日初めてだ。
壁は優しいクリーム色に仕上げられ、出来立ての木製の床からは木の匂いがする。ルーナ先生らしい温かみのある仕事振りだ。
作りはオーソドックスで、奥に受付カウンター、手前側にはホール、右手に休憩スペース、左手に依頼を張り出す掲示板が設置されている。
「いらっちゃいませー!」
受付カウンターから元気な声が聞こえた。
農民奴隷の小さな娘がお手伝いで受付カウンターに座っている。
「地元雇用が冒険者ギルドの方針なのである。アンジェロ領は人が少ないので、お嬢ちゃんにお手伝いを頂くのである」
黒丸師匠がカウンターの女の子の頭を撫でながら説明してくれる。
「スタートしたばかりの小さな支部であるが、所属パーティーは粒揃いなのである!」
「王国の牙、エスカルゴ、白夜の騎士ですね」
キャランフィールド支部に所属する冒険者パーティーは三パーティーだ。
エースは、俺、黒丸師匠、ルーナ先生の『王国の牙』で全員ミスリルゴールド級。
破壊力なら異世界一のパーティーと自負している。ドラゴンが出たら俺たちの獲物だ。
中堅がメロビクス王大国でじいを護衛してくれた四人組『エスカルゴ』。
全員が冒険者ランク2級で、盗賊、戦士、戦士、魔法使いとバランスが良い。
護衛任務をはじめ様々な任務の経験豊富なので任せて安心だ。
そして新人の『白夜の騎士』。
白狼族サラの冒険者パーティーで、白狼族の女の子五人組だ。白狼族は美形が揃っとる。良きかな良きかな。
パーティー名はルーナ先生が名付け親で、獣人最北の地に住む白狼族のエリアでは白夜があるそうだ。その白夜にちなんだパーティー名だ。
なぜ、女騎士にしなかったのか聞いたら『先々男が加入しづらくなるから』だそうだ。
心配事もあって『白夜の騎士』は、メンバーの役割分担が不明だ。
フォーメーションをどうするのか? とサラに聞いたら、『全員攻撃!』とか、いつかどこかのオランダサッカーみたいな事を言っていたので聞き流す事にした。
しばらく『エスカルゴ』と一緒に仕事して貰えば色々覚えるだろう。
「では、依頼をお願いします!」
俺が依頼を記入した用紙を黒丸師匠に渡す。
黒丸師匠が恭しく受け取り、『エスカルゴ』のリーダーミシェルに渡す。
「よーし! 依頼を受けたぞ! 出発する!」
冒険者ギルドキャランフィールド支部の初仕事は、水車を設置するリス族の護衛任務だ。
リス族から手先の器用な人材を十人送って貰えたので、異世界飛行機『グース』の開発と水車の開発に割り振った。リス族は手先が器用だし、木工が上手い。
水車は早く完成したので、リバフォ村近くの川に取り付けて調整をして貰う。
あの辺りは魔物が出るが、『エスカルゴ』と『白夜の騎士』とでリス族の護衛をすれば万全だろう。
この辺りの地理に明るい『白夜の騎士』が先頭、リス族と水車を背負った熊族のポーターが続き、『エスカルゴ』が殿を務める。
俺と黒丸師匠は、出発を見送るとそれぞれの仕事に戻った。
キャランフィールドの街は、色々と忙しいのだ。
*
「キャランフィールド? 知らんなあ……」
フリージア王国の王宮で宰相エノー伯爵は、部下からの報告書に目を通りしながら呟いた。
そばに控えていた部下が直ぐに補足説明をする。
「第三王子アンジェロ殿下が治められている北部王領の領都の名前だそうです。新しく街を作り、殿下が命名されました」
「街? あの流刑地にか? 人がおらんだろう?」
エノー伯爵は困惑した。
何を隠そうこのエノー伯爵こそがアンジェロを元流刑地の北部王領に追いやった張本人なのだ。
第一王子のポポを王位につける為に、成長著しかった第三王子のアンジェロを追放に近い形で僻地に追いやった。
僻地で乾き死ぬだろうと思っていた第三王子が、その僻地に新たに街を作ったというのだ。エノー伯爵は北部王領で何が起こっているのかまったく想像が付かなかった。
「少々気になるな……。事情に詳しい者は……」
「それなら騎士ゲーと申す者が、第一王子派閥入りを希望して面会に訪れております」
「騎士爵風情など……」
宰相であるエノー伯爵は、下級貴族と会う事を嫌った。
エノー伯爵の気持ちを察した部下が、すかさず提案をする。
「それでしたら私が面会して参りましょう。騎士ゲーは、アンジェロ殿下の南側に領地を構えておるそうです。北部王領やアンジェロ殿下の様子も聞いて参ります」
「うむ。そのようにいたせ」
――翌日。
騎士ゲーと面談した部下がエノー伯爵に報告を始めた。
「どうも北部王領はひどい所で、寒村が一つあるだけだそうです。その寒村からも村人が多数流出していると」
「ひどい物だな……」
エノー伯爵は自分がやった事とは言え、アンジェロを気の毒に思った。
「この報告書によりますと、その村はリバフォ村と名付けられたそうです」
「じゃあ、領都キャランフィールドというのは?」
「ええと……、もっと北の方に新たに街を作ったと報告書にあります。騎士ゲーの話しでは、北部王領は農業に適さない荒れ地が広がっているそうです」
「そうか。まあ、いずれにしろ酷い所なんだろう」
「恐らくは」
この時点でエノー伯爵はアンジェロに対する警戒を完全に緩めてしまった。
街を作ったと報告を受けて警戒したが、所詮は僻地の第三王子だ、もう死に体であろうとタカをくくったのだ。
「それと婚約の報告が記されております」
「婚約? 誰と誰がだ?」
「アンジェロ殿下と魔法の教師だったルーナ・ブラケット殿だそうです」
「ああ、そうか。それはお前の方で処理しておいてくれ」
既にエノー伯爵の興味は違う事に移っていた。
エノー伯爵から処理を任された部下は、国王の侍従にアンジェロ婚約の件を伝えた。
エノー伯爵は後々この事を後悔する事になるが、この時はそんな事になろうとは露ほども考えなかった。
黒丸師匠の元気な掛け声で、俺と黒丸師匠がテープカットをした。
今日はアンジェロ領の冒険者ギルドオープン日だ。
黒丸師匠が掛け合ってくれたお陰で、冒険者ギルド大陸北西本部の許可が早く下りアンジェロ領に冒険者ギルドが出来ることになった。
俺はこの街をキャランフィールドと名付けた。
有名なウイスキーの名前から、『キャラン』を拝借して、荒れ地が広がっているから『フィールド』をくっ付けた。かなり安直なネーミングだ。
この街から将来売り出すウイスキーは、『キャランフィールド三年物』、『キャランフィールド十年物』と呼ばれる。
異世界ウイスキーの名産地として、この異世界にキャランフィールドの名前を響かせたい。
「アンジェロ領の領都キャランフィールド。響きは悪くないですな」
じいも気に入ってくれたようで、報告書を王宮に上げて貰う事にした。
ちなみに川の近くの村は、『リバフォ村』と名付けた。名前の由来は、川と森、リバーとフォレストの近くにあるから、『リバフォ村』だ。
安直だけど良いのだ。村長さんは村に名前が付いたって喜んでいたしさ。
とにかく俺は忙しくて、ネーミングに時間を掛けているヒマがない。
好材料なのは、冒険者ギルドが出来上がった事で俺の手元から少し仕事が離れてくれる。
獣人たちが持ち込む魔物素材や薬草は、冒険者ギルド『キャランフィールド支部』で買い取る事になった。
今までは俺とジョバンニで対応していたので、少し楽になる。
「さて、建物の中であるな。領主閣下をご案内するのである」
「恐れ入ります。ギルド長閣下」
冒険者ギルド『キャランフィールド支部』のギルドマスターは、黒丸師匠が商業都市ザムザの冒険者ギルドと兼任する。
黒丸師匠の案内で冒険者ギルド『キャランフィールド支部』に入った。
この建物はルーナ先生が全部設えたので、俺は今日初めてだ。
壁は優しいクリーム色に仕上げられ、出来立ての木製の床からは木の匂いがする。ルーナ先生らしい温かみのある仕事振りだ。
作りはオーソドックスで、奥に受付カウンター、手前側にはホール、右手に休憩スペース、左手に依頼を張り出す掲示板が設置されている。
「いらっちゃいませー!」
受付カウンターから元気な声が聞こえた。
農民奴隷の小さな娘がお手伝いで受付カウンターに座っている。
「地元雇用が冒険者ギルドの方針なのである。アンジェロ領は人が少ないので、お嬢ちゃんにお手伝いを頂くのである」
黒丸師匠がカウンターの女の子の頭を撫でながら説明してくれる。
「スタートしたばかりの小さな支部であるが、所属パーティーは粒揃いなのである!」
「王国の牙、エスカルゴ、白夜の騎士ですね」
キャランフィールド支部に所属する冒険者パーティーは三パーティーだ。
エースは、俺、黒丸師匠、ルーナ先生の『王国の牙』で全員ミスリルゴールド級。
破壊力なら異世界一のパーティーと自負している。ドラゴンが出たら俺たちの獲物だ。
中堅がメロビクス王大国でじいを護衛してくれた四人組『エスカルゴ』。
全員が冒険者ランク2級で、盗賊、戦士、戦士、魔法使いとバランスが良い。
護衛任務をはじめ様々な任務の経験豊富なので任せて安心だ。
そして新人の『白夜の騎士』。
白狼族サラの冒険者パーティーで、白狼族の女の子五人組だ。白狼族は美形が揃っとる。良きかな良きかな。
パーティー名はルーナ先生が名付け親で、獣人最北の地に住む白狼族のエリアでは白夜があるそうだ。その白夜にちなんだパーティー名だ。
なぜ、女騎士にしなかったのか聞いたら『先々男が加入しづらくなるから』だそうだ。
心配事もあって『白夜の騎士』は、メンバーの役割分担が不明だ。
フォーメーションをどうするのか? とサラに聞いたら、『全員攻撃!』とか、いつかどこかのオランダサッカーみたいな事を言っていたので聞き流す事にした。
しばらく『エスカルゴ』と一緒に仕事して貰えば色々覚えるだろう。
「では、依頼をお願いします!」
俺が依頼を記入した用紙を黒丸師匠に渡す。
黒丸師匠が恭しく受け取り、『エスカルゴ』のリーダーミシェルに渡す。
「よーし! 依頼を受けたぞ! 出発する!」
冒険者ギルドキャランフィールド支部の初仕事は、水車を設置するリス族の護衛任務だ。
リス族から手先の器用な人材を十人送って貰えたので、異世界飛行機『グース』の開発と水車の開発に割り振った。リス族は手先が器用だし、木工が上手い。
水車は早く完成したので、リバフォ村近くの川に取り付けて調整をして貰う。
あの辺りは魔物が出るが、『エスカルゴ』と『白夜の騎士』とでリス族の護衛をすれば万全だろう。
この辺りの地理に明るい『白夜の騎士』が先頭、リス族と水車を背負った熊族のポーターが続き、『エスカルゴ』が殿を務める。
俺と黒丸師匠は、出発を見送るとそれぞれの仕事に戻った。
キャランフィールドの街は、色々と忙しいのだ。
*
「キャランフィールド? 知らんなあ……」
フリージア王国の王宮で宰相エノー伯爵は、部下からの報告書に目を通りしながら呟いた。
そばに控えていた部下が直ぐに補足説明をする。
「第三王子アンジェロ殿下が治められている北部王領の領都の名前だそうです。新しく街を作り、殿下が命名されました」
「街? あの流刑地にか? 人がおらんだろう?」
エノー伯爵は困惑した。
何を隠そうこのエノー伯爵こそがアンジェロを元流刑地の北部王領に追いやった張本人なのだ。
第一王子のポポを王位につける為に、成長著しかった第三王子のアンジェロを追放に近い形で僻地に追いやった。
僻地で乾き死ぬだろうと思っていた第三王子が、その僻地に新たに街を作ったというのだ。エノー伯爵は北部王領で何が起こっているのかまったく想像が付かなかった。
「少々気になるな……。事情に詳しい者は……」
「それなら騎士ゲーと申す者が、第一王子派閥入りを希望して面会に訪れております」
「騎士爵風情など……」
宰相であるエノー伯爵は、下級貴族と会う事を嫌った。
エノー伯爵の気持ちを察した部下が、すかさず提案をする。
「それでしたら私が面会して参りましょう。騎士ゲーは、アンジェロ殿下の南側に領地を構えておるそうです。北部王領やアンジェロ殿下の様子も聞いて参ります」
「うむ。そのようにいたせ」
――翌日。
騎士ゲーと面談した部下がエノー伯爵に報告を始めた。
「どうも北部王領はひどい所で、寒村が一つあるだけだそうです。その寒村からも村人が多数流出していると」
「ひどい物だな……」
エノー伯爵は自分がやった事とは言え、アンジェロを気の毒に思った。
「この報告書によりますと、その村はリバフォ村と名付けられたそうです」
「じゃあ、領都キャランフィールドというのは?」
「ええと……、もっと北の方に新たに街を作ったと報告書にあります。騎士ゲーの話しでは、北部王領は農業に適さない荒れ地が広がっているそうです」
「そうか。まあ、いずれにしろ酷い所なんだろう」
「恐らくは」
この時点でエノー伯爵はアンジェロに対する警戒を完全に緩めてしまった。
街を作ったと報告を受けて警戒したが、所詮は僻地の第三王子だ、もう死に体であろうとタカをくくったのだ。
「それと婚約の報告が記されております」
「婚約? 誰と誰がだ?」
「アンジェロ殿下と魔法の教師だったルーナ・ブラケット殿だそうです」
「ああ、そうか。それはお前の方で処理しておいてくれ」
既にエノー伯爵の興味は違う事に移っていた。
エノー伯爵から処理を任された部下は、国王の侍従にアンジェロ婚約の件を伝えた。
エノー伯爵は後々この事を後悔する事になるが、この時はそんな事になろうとは露ほども考えなかった。
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