追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第五章 メロビクス戦争

第73話 ポポ兄上の愛に感動(棒)

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 俺、第一王子のポポ兄上、第二王子のアルドギスル兄上の三人が、軍のど真ん中で睨み合いをしている。
 そこに宰相のエノー伯爵が割って入って来た。

「まあまあ! 王子様方がそんな風に睨みあっていては、臣下の我らが困ります」

「エノー! 私が総司令官だぞ! アンジェロとアルドギスルは、総司令官である私に楯突いているのだ! 処罰せよ!」

 ポポ兄上が吠えるけれど俺もアルドギスル兄上もビビって引いたりはしない。
 いや……、もう、お互いに引けないのだ。

 なぜなら既に俺たちの周りには、フリージア王国の貴族連中が集まり取り囲んでいる。

 ポポ兄上の後ろに立っているのは隣国ニアランド王国と仲の良い貴族たちだろう。
 アルドギスル兄上の後ろには、内政派の貴族たちが立ち並んでポポ兄上に厳しい視線を飛ばしている。
 それぞれの支持基盤になっている貴族たちが見ている前で、二人とも引くわけにはいかない。

 え? 俺の支持基盤はどうしたって?
 ルーナ先生とじいとサラとボイチェフとキューですが? 何か?

「こんな所で立ち話も何ですから、大天幕に移動いたしましょう」

 宰相エノー伯爵に促されて大天幕で御前会議が開かれた。
 戦場まで来て会議かよ……とも思うけれど、『フリージア王国軍の総司令官が誰なのか?』という重要な問題だから、きちんと決めなくちゃならない。

 ――そして会議の結果。

 総司令官:国王の父上
 総司令官代理:第一王子のポポ兄上
 副総司令官:第二王子のアルドギスル兄上

 と決着が付いた。

 話しをまとめたのは、第一王子派――ポポ兄上の派閥――の宰相エノー伯爵だ。

 第一王子派――ポポ兄上の派閥、宰相エノー伯爵たち――から俺への風当たりはかなりキツイね。
 ポポ兄上たちとしては、フリージア王国の総司令官としてこの戦いでハクを付けたかったのだろう。

 それを俺が邪魔した訳だから、面白いはずがない。
 そのせいもあってか、第三王子の俺には何の役職も付かなかった。

 まあ風当たりが強いのは仕方ないね。
 俺も特に役職は要求しなかったし、まあ、いいよ。

 そして総司令官代理たるポポ兄上からは、強い口調でこう言われた。

「ふん! アンジェロは好きにいたせ!」

 これはつまり……、『愛する弟よ! あなたの好きに行動して良いですよ!』と言う意味だよな?

 さすが長男だなあ。(棒)
 三男の俺に自由裁量を与えてくれるなんて、懐が深く兄弟愛に溢れているなあ。(棒)
 いやあ、ポポ兄上が好きになりそうだなあ。(棒)

 それじゃあ早速好きにさせて貰いますよ!

 予定していた通りに、今夜メロビクス王大国で奴隷にされているエルフを密かに奪還する。
 異世界飛行機や蒸留酒造りに協力してくれたエルフたちとの約束を果たさなければならないからな。

 目標はエルフたちが奴隷として捕らわれているメロビクス王大国の王領だ。
 じいが集めた情報によると奴隷のエルフたちは、王領にある農場近くの屋敷にいるらしい。その屋敷は、転生者と思われるハジメ・マツバヤシの屋敷だ。

 夜の闇に乗じ少数精鋭で突入し救出する。
 俺、じい、ルーナ先生、サラ、ボイチェフ、キュー、この六人で行く。

 だが、今はまだ昼間だ。
 行動を開始する夜まで休んでおこう。

 俺たちは指定された位置――軍の一番後方――で天幕を張ると、後はリス族のパイロットたちに任せて昼間から寝た。

 夜になったら忙しくなるからな。


 ZZZ……。


 ZZZ……。


 ZZZ……。


「アンジェロ王子! 夜になりました! お目覚めを!」

 ぐっすり寝ていた俺はリス族の隊長に起こされた。

「ふう。夜になったか……。寝ている間に来客はあった?」

「いえ。どなたも訪ねて参りませんでした」

 フリージア王国軍の中で俺の事――つまり第三王子の事――は、早くも忘れられているだろう。
 ちょっと寂しいが、今夜の行動には好都合だ。

 天幕の外で良い匂いがしている。
 外に出てみるとルーナ先生が土魔法で作った竈でスープを煮込んでいた。

「アンジェロ。起きたか。丁度スープが煮えた所だ。『みねすとろね』だ」

 ルーナ先生が差し出した木のカップには、野菜たっぷりのミネストローネがこぼれるほど入っていた。
 一口すするとトマトベースのスープに野菜の甘味が染み出していてうまい!
 寒い冬にアツアツのミネストローネは、良く合うな。

「美味しそう! 私にもちょうだい!」
「あー、旨そうな匂いがしてるだあ~! なんまらあ~たまらないだあ~」
「ご相伴に預かります!」

 サラ、ボイチェフ、キューも自分たちの天幕から出て来た。
 三人ともパンを片手にミネストローネを胃袋に流し込むと、すぐにおかわりをした。

 ワイワイとパンとミネストローネで食事をしているとじいがやって来た。

「アンジェロ様。陣中を一回りして参りました」

「ご苦労様。どうだった?」

「まだしばらくは睨み合いが続きそうだと、皆話しております」

 とりあえず今夜は夜襲・夜戦の心配はなさそうな感じだ。
 俺は声を潜めた。

「じゃあ、予定通りに……」

「はっ! エルフ奪還作戦は今夜決行ですじゃ!」

 俺はコクリと肯いた。

 ルーナ先生がコップを手に近づいて来る。

「じい殿。みねすとろね」

「これは美味そうですじゃ。頂くといたしましょう」

 ルーナ先生の目つきが険しい。
 エルフは誇り高く同族意識が強い種族だ。
 ルーナ先生は同胞が奴隷にされている事に、ずっと強い怒りを感じている。今日という日を待ちに待っていたのだ。

「アンジェロ。決行か?」

「ええ。支度をして下さい」

「わかった。アンジェロ!」

「はい」

「……ありがとう」

 ルーナ先生が小さな声で俺に礼を告げた。

 暫くして突入メンバーが武装を整えて来た。
 みんな目立たないように、黒い頭巾をかぶり、黒い服に濃い色の革鎧姿だ。

「さて! そろそろ行こうか!」

「「「「「おう!」」」」」

 俺は転移魔法を発動してゲートをメロビクス王大国の王領へと繋げた。
 エルフ奪還作戦が始まった。
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