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第五章 メロビクス戦争
第89話 メロビクス王大国軍戦1
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メロビクス王大国軍は、少しずつ動きを活発化させた。
最初は構築した野戦陣地への威力偵察だった。
一人の魔法使いと二十人の大盾を持った重装備兵士のチームが、何度かちょっかいをかけてきた。
俺たちフリージア王国魔法使いが構築した石壁を、敵魔法使いが崩そうと試みたのだ。
何度か『砂化』の土魔法を発動して、石壁を崩そうとしていたが、石壁には印術を施してある。
敵の魔法使いも印術に気がつき、重装備の兵士に守られながら撤退していった。
あちこちの石壁に仕掛けてきたので、おそらく穴になる崩せそうな石壁を探していたのだろう。
お生憎様。
こっちは、偉大なるハイエルフ――ルーナ先生が、スパルタ方式で魔法使いを指導し、指示を出しているのだ。
フリージア王国軍に所属する俺以外の魔法使いにとっても、何百年も生きているルーナ先生は偉大な先達だ。
言うなれば――マスター・オブ・ザ・マジシャン。
「そこ! 印術はしっかり切る! 手を抜かない!」
ルーナ先生に、叱られれば、どの魔法使いも背筋を伸ばして指導に従う。
あのジト目が、フリージア王国軍陣中ににらみをきかしているのだ。
俺たちフリージア王国軍の魔法使いが、石壁作りに手を抜ける訳がない。
三日もすると、メロビクス王大国軍側も石壁を崩すのが難しいと判断したらしく、次の手を打ってきた。
木製の馬防柵に火をつけるのだ。
二十人ほどの敵歩兵隊が、馬防柵に油をかけて撤退する。
そこへ遠距離から弓隊が火矢を放つ。
しかし、丸太を積み上げた馬防柵は、乾燥しきれていないので、なかなか燃えない。
木材で組んだ馬防柵に火がつけば、味方の魔法使いが急行し水魔法で消火する。
俺たちが受けた被害は、馬防柵を五つ燃やされただけで済んだ。
馬防柵への攻撃は、二日で終わった。
そして今日になって、メロビクス王大国軍の雰囲気が変わった。
朝食を食べているとルーナ先生が、気がついたのだ。
「炊煙が多い……」
「炊煙?」
「食事を作る際に出る煙の事。メロビクス王大国軍の炊煙が昨日より多い」
アンジェロ隊全員の目が、メロビクス王大国軍に注がれる。
なるほど、確かにルーナ先生の言う通り、メロビクス王大国軍陣地から沢山の炊煙が上がっている。
「兵糧不足から回復しましたね。さては、本国から補給が到着したな」
「ふむ。兵士の体力が、回復したと見るべきである」
俺の言葉に黒丸師匠が見解を付け加える。
そして、じいがうなる。
「これは来ますな……」
従軍経験のあるルーナ先生と黒丸師匠が、じいの言葉にうなずく。
「いよいよ来るか……」
俺たちは、急いで朝食をかき込み戦闘に備えた。
それから一時間もしないうちに、メロビクス王大国軍の本格的な攻撃が始まった。
戦場に角笛の音が響き渡り、メロビクス王大国軍が前進した。
アンジェロ隊では、異世界飛行機グースを発進させた。
「一番機から順次発進せよ!」
隊長機を先頭にして、次々にグースが空へ舞い上がっていく。
今日のグースはいつもと編成が違う。
パイロットは今までと同じリス族だが、後部座席には魔法使いを乗せている。
シメイ伯爵と第二騎士団長ローデンバッハ男爵から派遣された魔法使いだ。
一~三番機は、シメイ伯爵隊所属の魔法使いが乗る。
四~六番機は、第二騎士団所属の魔法使いが乗る。
シメイ伯爵隊、第二騎士団ともに前線にいる。
アンジェロ隊のグースは、上空からこの二隊を援護だ。
魔法使いには、アンジェロ領の三日月草を原料にした魔力回復薬を持たせてある。
長時間に渡って活動が可能だろう。
グースの発進を見届けた後、俺、ルーナ先生が飛行魔法で上空へ。
黒丸師匠も続いて空へ上がる。
俺たち『王国の牙』は予備戦力になっているので、上空から戦況を眺めるのだ。
平原の東西で両軍が対峙している。
地図で見ると左側、西にメロビクス王大国軍。
地図で見ると右側、東にニアランド・フリージア王国連合軍。
ニアランド王国軍は、東側でも北よりに陣取り。
フリージア王国軍は、東側の南に陣取っている。
-----------------
メロビクス王大国軍:▲
ニアランド王国軍:○
フリージア王国軍□
▲ ○
▲ ○
▲ ○
▲ □
▲ □
▲ □
-----------------
メロビクス王大国軍の先頭は、大盾を構えた歩兵部隊だ。
後ろに弓隊が続く。
昨日と同じく馬防柵の破壊を開始したが、昨日と違うのは、敵兵士数の多さだ。
馬防柵に油をかけて火をつける。
ロープを引っかけ引き倒し、大槌でたたき壊そうとする。
対して、味方の歩兵が馬防柵越しに槍を振るい、矢を放つ。
そこへメロビクス王大国軍の弓隊の矢が降り注ぎ、味方の反撃の矢がメロビクスの弓隊に降り注ぐ。
ルーナ先生が落ち着いた口調で解説をしてくれる。
「戦況は安定している。敵は馬防柵や石壁を崩せない。味方がしっかり守っている」
「なるほど」
「敵の矢によって、味方に被害が出ている。けれど、味方も反撃しているので問題ない」
「五分と言う所でしょうか?」
「柵や石壁の内側にいる分だけ、味方が有利」
ルーナ先生の解説を聞きながら、改めて前線を見る。
確かに敵の被害が大きい。
メロビクス王大国軍とニアランド・フリージア連合軍の兵数は、五分だ。
このまま時間が経過して、馬防柵や石壁を挟んだ戦闘が続けば、消耗するのはメロビクス王大国軍。
気になるのは、敵主力の重装騎兵だ。
「ルーナ先生。重装騎兵は?」
「敵は馬防柵や石壁を崩さない限り、重装騎兵を投入できない。今のところ敵主力――重装騎兵を、戦わずして無力化している」
重装騎兵は強力だが、その力を生かすには突撃を行う障害物のないスペースが必要だ。
フリージア王国軍は、馬防柵や石壁で野戦陣地を構築している。
どうやら、立ち上がりは俺たちフリージア王国軍優勢と言うことらしい。
シメイ伯爵、第二騎士団の方を見る。
この二隊は一番南側、フリージア王国軍の外側に配置された。
両隊とも問題なさそうだ。
グースも上空から、魔法攻撃を行い、それが良い牽制になっている。
フリージア王国軍中央は、第二王子アルドギスル兄上派閥の貴族が固めている。
ここが一番敵の攻撃が激しいが、味方の兵数も多い。
味方に被害が出ているが、上手く予備の兵士と入れ替えを行い、戦線を維持している。
「はっはー! みんな頑張れ! 頑張れ!」
アルドギスル兄上は、前線に近いところに出て味方を鼓舞している。
怖がって後ろにいるかと思ったけれど、アルドギスル兄上は意外と度胸があるな。
指揮は部下任せだが、そこに立っているだけで立派だし、味方も励まされるだろう。
「ポポの所は、攻撃が少ない」
ルーナ先生の指摘で、フリージア王国軍の一番北側――ニアランド王国軍に一番近い位置に視線を移す。
ポポ兄上の所は、馬防柵が少ない。
俺から木材や丸太を、あまり買っていないからだ。
魔法使いが石壁を作ってあるが、フリージア王国軍の中でも守りが薄いエリアだ。
メロビクス王大国軍の歩兵攻撃が、ほとんど行われていない。
注意して見ると、隣に陣取るニアランド王国にも敵の攻撃が少ない。
「敵に何か狙いがあるのか?」
「あれであるな! 重装騎兵が動いているのである!」
黒丸師匠の指さす先を見る。
メロビクス王大国軍の後方に控えていた重装騎兵が、北側へ動いている。
「配置変更?」
「おそらく北側のニアランド王国軍とポポ隊に、重装騎兵をぶつけるのである」
「あそこは守りが薄いですからね……」
ポポ兄上の陣は馬防柵が少ないが、ニアランド王国軍陣地はもっと少ない。
「重装騎兵を突撃させるのかな?」
「そうであるな。横一列は無理でも、突撃する隙間はあるのである。それがしなら、そこからこじ開けるのである」
俺たち三人は、上空から戦闘を注視した。
*
第一王子のポポは陣中で、落ち着かないでいた。
初陣の緊張と味方を裏切る罪悪感に押しつぶされそうであった。
ポポの隣に控える宰相エノー伯爵が、ポポにしか聞こえない小声で話しかけた。
「ポポ殿下。落ち着ついて下さい。兵士が見ておりますぞ」
「う、うむ……」
「メロビクス王大国軍は、示し合わせた通りの動きをしております」
「そう……なのか?」
「はい。他の箇所に比べて、我らの隊への攻撃は薄いです」
「では、そろそろか……」
ポポは椅子から立ち上がり、座り直した。
宰相エノー伯爵は、ポポを励ます。
「何のご心配もございません。我らはメロビクスとニアランドに押されたフリをして、後退すれば良いのです。誰も裏切りとは気がつきますまい」
「そ、そうだな……上手くいくだろうか?」
「大丈夫です。ご安心を」
「……わかった」
ポポは真っ青な顔で、水を飲む。
宰相エノー伯爵は、艶々した血色の良い顔で、野戦食の干し肉を噛み千切った。
最初は構築した野戦陣地への威力偵察だった。
一人の魔法使いと二十人の大盾を持った重装備兵士のチームが、何度かちょっかいをかけてきた。
俺たちフリージア王国魔法使いが構築した石壁を、敵魔法使いが崩そうと試みたのだ。
何度か『砂化』の土魔法を発動して、石壁を崩そうとしていたが、石壁には印術を施してある。
敵の魔法使いも印術に気がつき、重装備の兵士に守られながら撤退していった。
あちこちの石壁に仕掛けてきたので、おそらく穴になる崩せそうな石壁を探していたのだろう。
お生憎様。
こっちは、偉大なるハイエルフ――ルーナ先生が、スパルタ方式で魔法使いを指導し、指示を出しているのだ。
フリージア王国軍に所属する俺以外の魔法使いにとっても、何百年も生きているルーナ先生は偉大な先達だ。
言うなれば――マスター・オブ・ザ・マジシャン。
「そこ! 印術はしっかり切る! 手を抜かない!」
ルーナ先生に、叱られれば、どの魔法使いも背筋を伸ばして指導に従う。
あのジト目が、フリージア王国軍陣中ににらみをきかしているのだ。
俺たちフリージア王国軍の魔法使いが、石壁作りに手を抜ける訳がない。
三日もすると、メロビクス王大国軍側も石壁を崩すのが難しいと判断したらしく、次の手を打ってきた。
木製の馬防柵に火をつけるのだ。
二十人ほどの敵歩兵隊が、馬防柵に油をかけて撤退する。
そこへ遠距離から弓隊が火矢を放つ。
しかし、丸太を積み上げた馬防柵は、乾燥しきれていないので、なかなか燃えない。
木材で組んだ馬防柵に火がつけば、味方の魔法使いが急行し水魔法で消火する。
俺たちが受けた被害は、馬防柵を五つ燃やされただけで済んだ。
馬防柵への攻撃は、二日で終わった。
そして今日になって、メロビクス王大国軍の雰囲気が変わった。
朝食を食べているとルーナ先生が、気がついたのだ。
「炊煙が多い……」
「炊煙?」
「食事を作る際に出る煙の事。メロビクス王大国軍の炊煙が昨日より多い」
アンジェロ隊全員の目が、メロビクス王大国軍に注がれる。
なるほど、確かにルーナ先生の言う通り、メロビクス王大国軍陣地から沢山の炊煙が上がっている。
「兵糧不足から回復しましたね。さては、本国から補給が到着したな」
「ふむ。兵士の体力が、回復したと見るべきである」
俺の言葉に黒丸師匠が見解を付け加える。
そして、じいがうなる。
「これは来ますな……」
従軍経験のあるルーナ先生と黒丸師匠が、じいの言葉にうなずく。
「いよいよ来るか……」
俺たちは、急いで朝食をかき込み戦闘に備えた。
それから一時間もしないうちに、メロビクス王大国軍の本格的な攻撃が始まった。
戦場に角笛の音が響き渡り、メロビクス王大国軍が前進した。
アンジェロ隊では、異世界飛行機グースを発進させた。
「一番機から順次発進せよ!」
隊長機を先頭にして、次々にグースが空へ舞い上がっていく。
今日のグースはいつもと編成が違う。
パイロットは今までと同じリス族だが、後部座席には魔法使いを乗せている。
シメイ伯爵と第二騎士団長ローデンバッハ男爵から派遣された魔法使いだ。
一~三番機は、シメイ伯爵隊所属の魔法使いが乗る。
四~六番機は、第二騎士団所属の魔法使いが乗る。
シメイ伯爵隊、第二騎士団ともに前線にいる。
アンジェロ隊のグースは、上空からこの二隊を援護だ。
魔法使いには、アンジェロ領の三日月草を原料にした魔力回復薬を持たせてある。
長時間に渡って活動が可能だろう。
グースの発進を見届けた後、俺、ルーナ先生が飛行魔法で上空へ。
黒丸師匠も続いて空へ上がる。
俺たち『王国の牙』は予備戦力になっているので、上空から戦況を眺めるのだ。
平原の東西で両軍が対峙している。
地図で見ると左側、西にメロビクス王大国軍。
地図で見ると右側、東にニアランド・フリージア王国連合軍。
ニアランド王国軍は、東側でも北よりに陣取り。
フリージア王国軍は、東側の南に陣取っている。
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メロビクス王大国軍:▲
ニアランド王国軍:○
フリージア王国軍□
▲ ○
▲ ○
▲ ○
▲ □
▲ □
▲ □
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メロビクス王大国軍の先頭は、大盾を構えた歩兵部隊だ。
後ろに弓隊が続く。
昨日と同じく馬防柵の破壊を開始したが、昨日と違うのは、敵兵士数の多さだ。
馬防柵に油をかけて火をつける。
ロープを引っかけ引き倒し、大槌でたたき壊そうとする。
対して、味方の歩兵が馬防柵越しに槍を振るい、矢を放つ。
そこへメロビクス王大国軍の弓隊の矢が降り注ぎ、味方の反撃の矢がメロビクスの弓隊に降り注ぐ。
ルーナ先生が落ち着いた口調で解説をしてくれる。
「戦況は安定している。敵は馬防柵や石壁を崩せない。味方がしっかり守っている」
「なるほど」
「敵の矢によって、味方に被害が出ている。けれど、味方も反撃しているので問題ない」
「五分と言う所でしょうか?」
「柵や石壁の内側にいる分だけ、味方が有利」
ルーナ先生の解説を聞きながら、改めて前線を見る。
確かに敵の被害が大きい。
メロビクス王大国軍とニアランド・フリージア連合軍の兵数は、五分だ。
このまま時間が経過して、馬防柵や石壁を挟んだ戦闘が続けば、消耗するのはメロビクス王大国軍。
気になるのは、敵主力の重装騎兵だ。
「ルーナ先生。重装騎兵は?」
「敵は馬防柵や石壁を崩さない限り、重装騎兵を投入できない。今のところ敵主力――重装騎兵を、戦わずして無力化している」
重装騎兵は強力だが、その力を生かすには突撃を行う障害物のないスペースが必要だ。
フリージア王国軍は、馬防柵や石壁で野戦陣地を構築している。
どうやら、立ち上がりは俺たちフリージア王国軍優勢と言うことらしい。
シメイ伯爵、第二騎士団の方を見る。
この二隊は一番南側、フリージア王国軍の外側に配置された。
両隊とも問題なさそうだ。
グースも上空から、魔法攻撃を行い、それが良い牽制になっている。
フリージア王国軍中央は、第二王子アルドギスル兄上派閥の貴族が固めている。
ここが一番敵の攻撃が激しいが、味方の兵数も多い。
味方に被害が出ているが、上手く予備の兵士と入れ替えを行い、戦線を維持している。
「はっはー! みんな頑張れ! 頑張れ!」
アルドギスル兄上は、前線に近いところに出て味方を鼓舞している。
怖がって後ろにいるかと思ったけれど、アルドギスル兄上は意外と度胸があるな。
指揮は部下任せだが、そこに立っているだけで立派だし、味方も励まされるだろう。
「ポポの所は、攻撃が少ない」
ルーナ先生の指摘で、フリージア王国軍の一番北側――ニアランド王国軍に一番近い位置に視線を移す。
ポポ兄上の所は、馬防柵が少ない。
俺から木材や丸太を、あまり買っていないからだ。
魔法使いが石壁を作ってあるが、フリージア王国軍の中でも守りが薄いエリアだ。
メロビクス王大国軍の歩兵攻撃が、ほとんど行われていない。
注意して見ると、隣に陣取るニアランド王国にも敵の攻撃が少ない。
「敵に何か狙いがあるのか?」
「あれであるな! 重装騎兵が動いているのである!」
黒丸師匠の指さす先を見る。
メロビクス王大国軍の後方に控えていた重装騎兵が、北側へ動いている。
「配置変更?」
「おそらく北側のニアランド王国軍とポポ隊に、重装騎兵をぶつけるのである」
「あそこは守りが薄いですからね……」
ポポ兄上の陣は馬防柵が少ないが、ニアランド王国軍陣地はもっと少ない。
「重装騎兵を突撃させるのかな?」
「そうであるな。横一列は無理でも、突撃する隙間はあるのである。それがしなら、そこからこじ開けるのである」
俺たち三人は、上空から戦闘を注視した。
*
第一王子のポポは陣中で、落ち着かないでいた。
初陣の緊張と味方を裏切る罪悪感に押しつぶされそうであった。
ポポの隣に控える宰相エノー伯爵が、ポポにしか聞こえない小声で話しかけた。
「ポポ殿下。落ち着ついて下さい。兵士が見ておりますぞ」
「う、うむ……」
「メロビクス王大国軍は、示し合わせた通りの動きをしております」
「そう……なのか?」
「はい。他の箇所に比べて、我らの隊への攻撃は薄いです」
「では、そろそろか……」
ポポは椅子から立ち上がり、座り直した。
宰相エノー伯爵は、ポポを励ます。
「何のご心配もございません。我らはメロビクスとニアランドに押されたフリをして、後退すれば良いのです。誰も裏切りとは気がつきますまい」
「そ、そうだな……上手くいくだろうか?」
「大丈夫です。ご安心を」
「……わかった」
ポポは真っ青な顔で、水を飲む。
宰相エノー伯爵は、艶々した血色の良い顔で、野戦食の干し肉を噛み千切った。
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