追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
110 / 358
第七章 新たな住人

第110話 ケッテン

しおりを挟む
 ――四月一日、商業都市ザムザ。

 俺は十一才になった。
 北部王領に追い出されてから一年。
 思い返せば、怒濤の一年だったな。

 色々あったが、無事に誕生日を迎えられ嬉しい。

 今日は商業都市ザムザで、俺の誕生日パーティー兼第三王子府オープン記念パーティーを開催している。

 場所は商業都市ザムザの中心にある王領管理府。
 ここは立地が良く、建物も貴族館で良い。

 しかし、実務をこなすには向いてない建物なので、迎賓館として使うことにした。

 今日は、王領管理府改め迎賓館に、要人や関係者を集めて酒と料理を振る舞っているのだ。

「いやあ、アンジェロ殿下おめでとうございます!」

 開始早々俺に声をかけてきたのは、南の隣国イタロスの領事だ。
 細身の体に仕立ての良い貴族服をぴちっと着たナイスミドル。
 俺のような十一才の子供相手でも、低姿勢だ。
 侮っている様子がないのは、ポイントプラス1。

 俺は王子として、鷹揚な態度で応じる。

「イタロスの領事殿。商業都市ザムザは、私の領地になったが、これまで通りの交易をお願いする」

「もちろんでございます! ところで、アンジェロ殿下には、我がイタロスの血が入っているとうかがいましたが?」

「うむ。祖父がイタロス出身だ」

「おお! そうでしたか! 我が国はアンジェロ様を応援しております!」

「今日は、祖父も来ているので声をかけてやってくれ」

 イタロス領事が去ると、隣にいたじいが小声で解説してくれる。

「イタロスは商人の国でございます」

「ああ、知っている。王国じゃないよね?」

「左様です。イタロスの代表は、総督ですじゃ」

 イタロスは、商人たちが議会を作り、議会に選ばれた人物が『総督』という国家元首になる。
 商人だけとは言え、議会を作り代表者を選出するのだから、民主主義に近い印象だ。

「良さそうな国家制度に思えるけれど?」

 俺の肯定的な意見に、じいは渋い顔で答えた。

「議会の力が強くて、国としての方針がコロコロ変わるのは考え物ですじゃ」

「それは確かに考え物だね……」

「利に聡い商人が牛耳っている国ですじゃ。油断なりません」

「気をつけよう」

 イタロスは、俺が担当する国だ。

 父上は、メロビクス王大国とニアランド王国との外交で手一杯。
 アルドギスル兄上は、両国の侵攻に備えている。

 両国とはいまだ停戦合意も出来ていない。
 西部で戦闘は起きていないが、いつまた再戦となるかわからない状態だ。

 そこで俺が東部の担当になった。
 商業都市ザムザが俺の領地にしてもらう際に付けられた条件の一つが、ザムザ周辺各国への抑えだ。

 イタロスは、交易を通じて仲良くしておきたい。

 イタロスが終わると、ベロイア王国。
 ここは羊と農業が中心のノンビリした国だ。
 ベロイア領事は、朴訥な感じの人で農産品の輸入を増やすことを約束して友好的に別れた。

 次いで、ブルムント地方の中小領地貴族の挨拶を受け、商業都市ザムザの商人たちの挨拶を受ける。

 挨拶ラッシュが終わったところで、ホレックのおっちゃんがやってきた。

「アンジェロの兄ちゃんも大変だなあ……」

「王子だから仕方ないね。おっちゃん、今日はありがとうね。助かっているよ」

「お安いご用だ! 酒もあるしな!」

 今日は、アンジェロ領のメンバーをほとんど連れてきた。
 手分けして招待客のお相手をしてもらっているのだ。

 ホレックのおっちゃんは、ブルムント地方で鍛冶師として名が通っている。
 ブルムントからのゲストたちの話し相手を務めてくれた。

「アンジェロの兄ちゃん! 実は俺とキューから、誕生日プレゼントがあるんだよ!」

「えっ!? 本当に!?」

 これは嬉しいサプライズだ!
 二人とも仕事が忙しいなかで、よく準備してくれたな。

「ありがとう! 嬉しいよ! それで、何をもらえるの? オリハルコンの剣?」

「まあ、それは……キャランフィールドに帰ってからのお楽しみだな!」


 *


 ――数日後。

 俺たちは、アンジェロ領のキャランフィールドに帰ってきた。

 俺の誕生日プレゼントは、ホレック工房にあるそうだ。
 ホレックのおっちゃんと工房へ向かう。

「アンジェロの兄ちゃん。覚えてるか?」

「何を?」

「ほれ! 車を作っただろう? その時に、荒れ地で車を走らせるにはどうするって話よ!」

「ああ! タイヤやキャタピラー……」

 六輪自動車タイレルが完成した後におっちゃんと話したことを思い出した。
 六輪自動車タイレルは、舗装された道はスムーズに走る。
 土の道でも大丈夫だ。

 しかし、でこぼこの多い荒れ地やぬかるんだ土地で走らせるのは難しい。
 おっちゃんは、六輪自動車タイレルをもっと色々な場所で走らせたいと言った。

『国全体で見たら舗装されてない道や荒れ地の方が多いぜ』

『それには、タイヤやキャタピラーかな……』

『ほうほう』

『それと前に話したギヤだね。クラッチも必要かな』

『面白いな! 紙に書いてくれよ!』

 俺は自分の知っている限りを、紙に書いておっちゃんに渡した。
 それが、どうかしたのだろうか?

「俺とキューで試作してみた! 荒れ地だろうが、どこだろうが、走れる車をな!」

「えっ!?」

 なーんとなく悪い予感がする……。

 ホレック工房に着き、工房の扉を開けると六輪自動車タイレルが三台並んでいる。
 そして、その隣にもう一台……。

「これがアンジェロの兄ちゃんへの誕生日プレゼントだ!」

「これ……ケッテンクラートじゃねーか!」

「なに? けてん?」

「ケッテンクラート!」

 ケッテンクラートとは、第二次世界大戦時ドイツで利用されたバイクと砲塔のない小型戦車をくっつけたようなヘンテコな車だ。





 俺の目の前に鎮座しているのは、キャタピラー付の木製荷馬車にバイクを合体させたような車だ。
 本物のケッテンクラートとは、素材が違うし、サイズも違うが、ジャンル分けするならケッテンクラートだろう。

 なるほど……そうか……六輪自動車タイレルが進化するとケッテンクラートになるのか……。

 俺の心中に去来する言葉はただ一つ。

『なぜ、そうなる!』

 普通は自動車が進化すると、もっとこう……スタイリッシュになったり、大型化して積載量が多くなったり……。
 そういう方向性じゃないだろうか?
 なぜ、あさっての方向へ進化して、ケッテンクラートになるのか?

 俺が絶句して頭を抱えていると、ホレックのおっちゃんは俺の脇の下に手を入れケッテンクラートの荷台に放り込んだ。

 荷台にはリス族のキューがいた。

「キューちゃん……」

「誕生日おめでとうございます! ホレック殿と我々リス族からのプレゼントがこの車です!」

「あははっははあ」

 俺は変な笑いを漏らすしかなかった。

「じゃあ、ちょっと走るぞ!」

 ホレックのおっちゃんが、運転席に乗り込みケッテンクラートが『キュラキュラ』言いながら走り出した。

(ドワーフにケッテンクラートって、妙に絵になるな……)

 俺はそんな事を思いながら、誕生日プレゼントというのは単なる口実で、ホレックのおっちゃんやキューが作りたかっただけだろうと真実を見抜いていた。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...