追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
124 / 358
第七章 新たな住人

第124話 ゴブリン掃討作戦五日目

しおりを挟む
 ――ゴブリン掃討作戦五日目。

 俺たちは、ゴブリン掃討作戦の最中だ。
 もう、五日目の昼になるが、いまだ巣を見つけられないでいる。

 俺たちが思っていたよりも、ゴブリンの数は多く、また、広範囲に散らばっているのだ。
 前人未踏の魔の森だからだろうか?
 とにかく、ゴブリンの数が多い。

「俺が上空からデカイ魔法をブチ込みましょうか?」

「私はそれでも良いが、エルハムから森を焼くなと言われている」

 指揮をとるルーナ先生に、俺は魔法でドンを進言したが却下されてしまった。

 木材不足――キャランフィールドの街は住人が増えた為、木材の需要が急増している。
 建物は土魔法で作ったが、窓枠やドアは木で作る必要がある。
 テーブルや椅子など家具も必要だし、フォークやスプーンだとか細かな生活用品も木製だ。

 木こり親子が製材にベタ付きだが、原材料になる丸太が足らない。
 切り倒した木は、すぐには木材に出来ないからだ。
 数ヶ月寝かせなくてはならない。

 そこで、メロビクス戦役の戦場に転移魔法で移動して、戦場に放置してある丸太や馬防柵をアイテムボックスに回収してきた。

 一度、俺が売った物だが、放置しているということは不要なのだろう。
 うん、きっとそうだ。
 俺が回収して再利用しても問題はないはずだ。
 ニアランド王国の領土内だけれど、パッと行って、パッと回収して戻ってくればセーフだ。
 歴史的上位国さんは、怒らないですよね。(棒)

 細かな問題としては、あちこち血が付いている。
 血の跡を見て、木こり親子が震えていたが、まあ、がんばってくれ。
 木は、木なのだ。

 助かっているのは、ウォーカー船長が連れてきたアリー・ギュイーズさんだ。
 優秀という触れ込みは本当で、領主館で仕事をドンドン片付けている。

 お陰でエルハムさんは、クイック製造に専念出来るようになった。
 人も増えたので、クイック製造設備も増設する予定だが、そこで働く人材教育に力を入れてもらっている。

「ゴブリン掃討作戦が終わりましたら、あのエリアは解放地帯とし、畑を作りましょう」

「解放地帯?」

「はい。メロビクス王大国で習ったのですが、魔物を駆除し魔物がいなくなった地帯を解放地帯と呼ぶのだそうです」

「へえ」

「メロビクスは何百年もかけて、解放地帯を少しずつ増やし、農地を増やしたそうですわ。今、掃討作戦が行われているエリアは、川が近いので畑に適しております」

 メロビクス王大国は、農業大国でもあるわけだけれど、長い年月をかけて解放地帯を増やしたとは知らなかった。
 アリーさんは、物知りだ。

「領地の特産品を増やして、収益を上げる方針に、私も賛成ですわ。しかし、キャランフィールドは、人口に比して農地が少なすぎます。外から食料を買い付けるにしても、飢饉が起きれば食料は値上がりいたします。もう少し農地を増やしたいですわ」

 アリーさんは、色々計算した書類を見せてくれた。

 この人は優秀で、俺は要らない子じゃなかろうか?
 そんな事が思い浮かび、アリーさんの有能さにちょっと嫉妬した自分がいた。

 その時、思い出したのは、アルドギスル兄上だ。

『ハッハー! 僕は無能だからね! 仕事は優秀な者に丸投げさ!』

 アルドギスル兄上は、部下の能力に嫉妬したりしない。
 アルドギスル兄上の振る舞いって、出来そうで出来ないよな。

 俺もアルドギスル兄上を見習うことにした。

「わかった。そのあたりは、まかせるので、アリーさんの好きに進めて下さい」

「ありがとうございます」

 アリーさんに色々丸投げしたお陰で、俺はゴブリン掃討作戦に専念できるようになった。

 本部の天幕で待機していると、上空監視の異世界飛行機グースが高度を落としてきた。
 後部座席のリス族が、大声で緊急事態を告げる。

「アンジェロ殿! 『砂利石』の担当エリアで大量のゴブリンを視認しました! ミディアムたちが囲まれそうです!」

 ミディアムたち『砂利石』には、山側のエリアを担当してもらっている。
 あいつらが囲まれるほど、ゴブリンが出たのか。

 どうしようかと、ルーナ先生と相談を始めると、黒丸師匠が名乗り出てくれた。

「それがしが、行って来るのである。『エスカルゴ』を借りるであるよ」

 メロビクス王大国出身の冒険者パーティー『エスカルゴ』が、ちょうど探索を終えて本部に帰ってきている。
 黒丸師匠と彼らなら問題ないだろう。

 ルーナ先生も俺と同じ考えらしく、黒丸師匠に出動を要請した。

「黒丸! 頼む!」

「安心するのである!」


 *


 冒険者パーティー『砂利石』は、大量のゴブリンと対峙していた。
 リーダーのミディアムが、メンバーに檄を飛ばす。

「隊列崩すなよ! 崩れたら一気に来るぞ!」

「「「了解!」」」

 ゴブリンを一体ずつ確実に倒す。
 だが、森の奥に目をやると、次から次へとゴブリンが湧いてくる。
 リーダーのミディアムは、ショートソードでゴブリンの額をかち割りながら考えた。

(ちっ……キリがねえ……。ここが当たりくじ……か?)

 当たりくじ、つまり、自分たちの担当エリアにゴブリンの巣があるのかと、ミディアムは考えた。
 太陽は真上に差し掛かり、『砂利石』の四人は、暑さと空腹でスタミナ切れを起こしそうだ。

「ミディアム! ゆっくりと退くのである!」

 ミディアムの背後から黒丸が現れた。
 中堅冒険者パーティー『エスカルゴ』が脇を固める。

 苦しかった戦いに思わぬ援軍。
 ミディアムは、喜びの声をあげた。

「黒丸のダンナ! 『エスカルゴ』も!」

「上空のグースが教えてくれたのである」

 ミディアムが空を見上げると、一機のグースが旋回している。
 後部座席のリス族がミディアムに手を振ってみせた。

(なるほど! こういう時の為に、あれは空を飛んでいたのか!)

 ミディアムたちがゆっくりと後退すると、ゴブリンも同じだけ距離を詰めてくる。
 ゴブリンたちの隊列が、縦に崩れた。

 そこを横合いから『エスカルゴ』の二人の戦士ミシェルとマルセルが剣で殴りつけた。

 オレンジ色の髪を振り乱し、次々にゴブリンを叩き潰す。
 ゴブリンたちが、明らかにひるんだのを見て、リーダーのミシェルが号令をかける。

「よし! こんなもんか! 昼メシを食いに戻ろう!」

 ミディアムたちは、無事に脱出した。


 *


 天幕で手書きの地図をのぞき込んでいると、黒丸師匠たちが『砂利石』の救出から戻ってきた。

「みんな無事である。エスカルゴが良い働きをしたのである」

「お疲れ様でした。巣はどうですか? ありそうですか?」

「恐らく、あのエリアに巣があるであるな」

「上空から見た限り、なかったですが……」

 俺、ルーナ先生、黒丸師匠で空を飛び、本部近辺のエリアを一通り偵察している。
 その時は、ゴブリンの巣は見つからなかった。

「恐らく山の斜面に穴でも掘ったのである。木が遮蔽物となり、空からは見えないのである」

「なるほど。ルーナ先生、どうしましょう? 砂利石の担当エリアに戦力を集中しますか?」

 ルーナ先生の目が、ギラリと光った。

「そうする。昼食の後、全ての戦力を山側のエリアに投入する。ゴブリンを掃討し、巣を探し、潰す」
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...