追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第七章 新たな住人

第125話 ゴブリン集団掃討戦

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 ――昼食後。

 俺たちは山側のエリアに総攻撃をかけた。
 ゴブリンが大量に出現したと聞いていたが、百を超えている。

 森の奥にどれだけいるのか……。

「正面は『エスカルゴ』と黒丸! ボイチェフたちは右! 白狼族は左! 『白夜の騎士』は弱いところを遊撃!」

 ルーナ先生の戦闘指示が次々に飛ぶ。

「アンジェロ! 土魔法を三連! 撃て!」

「ストーンショット!」

 ルーナ先生の指示を受け、俺は散弾の土魔法を広範囲に発動する。
 扇状に放たれた無数の石弾が、ゴブリンを撃ち抜き、一度で数十体が倒れた。

 この異世界では、ゴブリンは害獣、いや害虫扱いだ。
 畑を荒し、家畜や子供を襲う。
 繁殖のメカニズムは不明だが、放っておくとあっと言う間に数を増やす。

 だから、この異世界の人たちは、ゴブリン相手に一切容赦しない。
 俺も同じ気持ちだ。

 広範囲攻撃をする土魔法ストーンショットを、三連続でゴブリンの集団に撃ち込んだ。
 ざっと見たところ、五十は倒したが、木の陰にいたゴブリンにストーンショットは当たっていない。

「突撃!」

 ルーナ先生の号令で、俺たちは三方向からゴブリン集団に襲いかかる。
 木が戦闘の邪魔になるので、みんな小回りの利く得物に持ち替え一体ずつ着実に倒す。

 黒丸師匠も愛用のオリハルコンの大剣から、鉄製のショートソードに持ち替え、普段とは違う戦い方をしている。

「丁寧に一体ずつ倒すのである! 敵は多いのである! 足にしがみつかれないように、気をつけるのである!」

 黒丸師匠のいうとおりだ。
 一体、一体は弱くても、数の暴力は恐ろしい。

「前衛交代! 正面は『砂利石』とアンジェロ!」

 俺は細かな魔法のコントロールが苦手なので、こういう細々した現場は向いていない。
 大型ミサイルのような魔法使いだから、広範囲に大規模魔法を行使したり、単体で強力な魔物と戦ったりするのが得意なのだ。

 その点、ルーナ先生は、魔法のコントロールが抜群なオールラウンダー。
 今もピンポイントで土魔法を行使して、次々とゴブリンにヘッドショットを決めている。

「アンジェロ、前に出ます!」

 だから、今日は、状況に合わせて前衛で剣を振るうのだ。
 俺が黒丸師匠とスイッチし、『エスカルゴ』と『砂利石』がスイッチする。

 強面のミディアムたちが、俺に軽口を叩く。

「おう! おう! 王子様が大丈夫かよ?」
「後ろで見学していて、かまわねえぜ!」
「前衛はド迫力だぜ! ちびんなよ!」
「お帰りは、あちらよーん!」

 じいなら顔を真っ赤にして怒りそうだが、俺は気にしない。
 と言うより、この程度を気にしていたら冒険者などやっていられない。

 今の言葉は、『こんにちは』で『がんばれよ』だ。
 彼らなりの挨拶と応援だ。

 俺も言葉を崩して、ご挨拶だ。

「ざけんな! 見とけ!」

 言いざま正面のゴブリンを切り伏せ、右から来たゴブリンに蹴りを見舞う。
 蹴り飛ばされたゴブリンは、木に後頭部をぶつけて無様に倒れた。

 一瞬の動きにミディアムたちから、感嘆の声が上がる。

「やるじゃねえか! 悪かねえ!」
「お見事!」
「伊達に王子やってねえな!」
「そっちは、任せたぜ!」

 ミディアムたちと並んで、ひたすらゴブリンを叩き潰す。

 俺は子供の体だから力はそれほどないが、剣は黒丸師匠に鍛えられた。
 それなりの腕前はある。

 ミディアムたちも、落ち着いてさばいているので、安定した前衛だ。

「前衛交代! 正面は『氷の刃』と『黄金の五人』!」

 しばらくしてルーナ先生から交代指示が出た。
 新人パーティー二組と交代だ。
 交代した二組の動きが、ぎこちない。

 とは言え、ゴブリンは次から次へと出てくるのだ。
 新人に任せて、休憩を取ろう。

「アンジェロ少年、どうであるか?」

「数は多いですが、攻め方は単純ですね。後ろに回り込むゴブリンはいないですし」

「アンジェロ少年も、そう感じるであるか。ゴブリンキングは、いないであるな」

 ゴブリンキングは、個体の強さ自体は、たいしたことはないが、頭が回るのでやっかいだ。
 いない方が助かる。

「そうすると……、このエリアで増殖したゴブリンをひたすら倒す……ですか……」

「我慢比べである」

 俺と黒丸師匠は水筒の水を飲みながら、うんざりだと肩をすくめた。

「うわあ!」

 前衛から悲鳴だ!

「どうしたのである!?」

「チィ! 『黄金の五人』の一人が引きずり込まれた!」

 黒丸師匠の問いかけに、ミディアムが舌打ち交じりに答えた。
 すぐにルーナ先生から指示が飛ぶ。

「隊列を崩すな! 『砂利石』は前衛の穴を埋めろ! 救出は『エスカルゴ』、黒丸、アンジェロ! 急げ!」

「「「「「了解」」」」」

 俺、黒丸師匠、『エスカルゴ』の戦士二人と盗賊が前に出る。

 引きずり込まれた冒険者が見えた!

 何匹ものゴブリンが馬乗りになり、石斧であちこち叩かれている。
 血も流しているし、急がないと!

「それがしとアンジェロ少年で、周囲を蹴散らすのである!」

「わかりました!」

 俺と黒丸師匠は、引きずり込まれた冒険者にこれ以上ゴブリンが近づかないよう、剣を振るう。
 ルーナ先生の土魔法の回転が上がり、ゴブリンの頭が秒速で吹き飛ぶ。

「しっかりしろ!」
「今、助けてやるぞ!」
「ゴブリンを引き剥がせ!」

 ミシェルさんたち『エスカルゴ』の三人がかりで、ゴブリンを引き剥がし怪我をした冒険者を肩に担ぐ。

「撤収! 撤収だー!」

 ミシェルさんの号令で、俺と黒丸師匠も剣を構えゴブリンの集団を牽制したまま後ずさる。
 前衛が作る隊列の隙間に入るとミディアムがボソリとつぶやいた。

「後は、任せろ!」

「頼むよ!」

 今のを見てもビビらないか。
 ミディアムは思ったよりも胆力がある。

 引きずり込まれた冒険者は、『エスカルゴ』の魔法使いに回復魔法をかけてもらっていた。
 回復魔法で元の顔に戻ったが、相当やられていたからな……。

 あのゴブリンの中に引きずり込まれたら危険だ。

 引きずり込まれた冒険者は、『黄金の五人』のまだ若い男冒険者だ。
 名前はジャック。
 装備からして剣士だろう。
 メンバー四人が、心底心配そうに寄り添っている。
 新人冒険者としては、本人もパーティーメンバーも怖かっただろうな。

 黒丸師匠がジャックにコンディションの確認をとる。

「ジャック、どうであるか?」

「ありがとうございます! 大丈夫です! あのゴブリン野郎! ぶっ殺してやる!」

「よしである! 次も行くである! アンジェロ少年、予備の剣を貸してやって欲しいのである」

「わかりました」

 ジャックは、まだ興奮状態だ。
 アドレナリンが出まくっているな。

 だが、黒丸師匠に『黄金の五人』のジャック以外のメンバーがかみついた。

「ちょっと! ギルマス! 何を考えてるんですか!」
「ジャックが可愛そうよ!」
「大怪我だったじゃないか! 休ませてくれ!」
「そうだよ! ジャックは休みだ!」

 四人はジャックの身を案じているらしい。
 だが、黒丸師匠が一喝した。

「ダメである! こういうことが起きたら、時間を置かず前線に出す方が良いのである!」

「そんな!」
「ヒドイ!」

 いや、ひどくはない。
 一見すると厳しい対応だが、ここでジャックを労りすぎると、ジャックは戦うのが怖くなってしまう。

 一種のPTSDだと思うが……。
 恐ろしい戦闘体験をした後にブランクが空くと、戦うこと自体が出来なくなる冒険者がいるそうだ。

 黒丸師匠はジャックが、この状態になってしまうことこそを心配している。

 戦えなくなった冒険者は、違う仕事を探すしかない。
 違う仕事とは言っても、この異世界ではそう簡単に見つからない。
 そうなれば、盗みなど犯罪に走り、奴隷落ちもある話なのだ。

 ある程度経験を積んだ冒険者なら知っている話で、ジャックのような目にあったら、下手に労るよりも、間を置かず実戦に連れて行く方が良い。

『俺はやれる!』

 ――と自信を回復させてやるのだ。

「俺と黒丸師匠で脇を固めましょう。ジャック! 行こう!」

「そうであるな! それがしたちが、ジャックをフォローするのである」

 俺と黒丸師匠はジャックを連れて前衛に出た。
 新人冒険者パーティー『氷の刃』の戦闘時間が長くなっている。
 もう、彼らの息が切れそうだ。

「変わるのである!」

「た、頼みます! 助かった!」

 前衛交代した俺、黒丸師匠、ジャックの三人で、ゴブリンを削る。
 最初はぎこちない動きだったジャックだが、時間が経つにつれ自信に満ちた動きになった。

「ジャック! いいぞ!」

「良い動きである!」

「さあ! おかわりだ! もっと来い!」

 ジャックは、すっかり自信を取り戻した。

 俺たちは交代しながら二時間も戦い続け、ゴブリンを撃退し、山の麓に小さな洞穴を見つけた。
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