追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第七章 新たな住人

第137話 フリージア王国への再出兵

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 ――十月初旬。

 グース改の開発は、何度もトライアンドエラーを繰り返した。
 それでもベースになる技術的な問題がクリアされたので、魔道具士のエルフたちの表情は明るかった。

 そして、ついにグース改が完成した。
 グース改を見たじいが、うなり声を上げる。

「むう……こういう形になりましたか……」

「うん……」

 自分でも、なぜこうなったのかわからないが……。
 グース改は、特殊部隊用の乗り物になってしまった。

 グース改の機体は、旧型グースの約二倍。
 定員は六名で、後部に固定魔法攻撃装備を持つ。

 乗員の内訳は、下記の通り。


 ・操縦士 一名
 ・ガンナー 一名
 ・特殊部隊員 四名


  操
 特 特
 特 特
  ガ


 垂直離着陸機能と増速機能を持つので、敵の後背へ迅速に移動し奇襲することが可能だ。
 要人への襲撃、糧食の焼き討ちや補給路への攻撃などを想定している。

 グース改を操縦してみたが、飛行機というよりは、ヘリに近い動きだ。

 左手側にコントロールレバーがついている。
 このレバーを前方にスライドさせると主翼への魔力供給が行われ、機体が浮き上がる。

 また、ブーストボタンが追加され、ブーストボタンを押すとプロペラに刻まれた風属性の魔法陣に魔力が供給され、大幅に増速する。
 主として離陸時と敵地離脱時に使用する機能だ。

 ちなみに魔導エンジンは、旧型を採用した。
 新型の魔導エンジンは、パワーアップしているが回転数は変わらないので、二枚羽根のプロペラなら旧型で十分だ。
 新型は自動車の方へ回そうと思う。

 ガンナーが扱うのは、エルフが製作した土属性攻撃魔法を打ち出す魔道具だ。
 隠密行動を想定しているので、火属性ではなく土属性の攻撃魔法を選択した。

 さて、乗員が増え、機能が増え、良いことずくめに見えるグース改だが、燃費は大幅に悪くなった。

 特に垂直離着陸をすると燃料の魔石が大幅に減る。
 ラッキー・ギャンブルによれば、風属性の魔石がベストらしいが、経済的な理由で却下した。

 無属性の魔石なら、ゴブリンからでもとれるし、ミスリル鉱山に山ほど生えている。
 値段の高い風属性の魔石を、湯水のように溶かされてはたまらないのだ。

「アンジェロ様。この機体の名前は?」

「ブラックホーク! 機体も黒く塗ってくれ!」

 グース改は、ブラックホークと命名することにした。
 落ちないぞ!


 *


 メロビクス王大国の王宮では、重臣や有力な領地貴族を集めて御前会議が開かれていた。
 十月初旬になり、各地から作物の収穫量が報告され、今年は昨年を超える収穫量である。

「今年は大豊作! 続いてフリージア王国への出兵について議論をいたします。異論がある方は? まあ、いないと存じますが?」

 御前会議を仕切る宰相ミトラルが、決意のこもった眼差しを一同へ向ける。
 宰相ミトラルは、フリージア王国との先の戦で息子のシャルル・マルテ将軍を失っていた。
 彼は復讐の機会を欲しているのだ。

「賛成です! 今度こそフリージアのやつばらに、目に物を見せてやりましょうぞ!」
「然り! フリージアを打つべし!」
「出兵だ!」

 多くの重臣が出兵に賛成をした。
 領主貴族からも賛成の声があがっている。

 そんな中、一人の領主貴族が手を上げた。
 北西の雄、ギュイーズ侯爵だ。

「お待ち下さい。私は出兵に反対です」

 ギュイーズ侯爵は、穏やかな口調だが明確に出兵に反対した。
 宰相ミトラルは、内心で舌打ちしつつも、続きを促した。

 いくら宰相といえども、大物領主貴族の発言を無視など出来ないのだ。

「残念ですな……。ギュイーズ侯爵は、反対ですか? 理由をうかがっても?」

「先の戦でどれだけの将兵を失いましたかな? もう少し慎重な検討が必要ではありませんか?」

 御前会議の場がざわついた。
 これまで遠慮をしていた者が、慎重論を唱え始めた。
 慎重論に後押しされて、ギュイーズ侯爵の発言に力がこもる。

「私の調べたところでは、先の戦で……我が軍は全滅した! と……調査員から報告を受けたのですが……。これは事実ですかな?」

 ギュイーズ侯爵と宰相ミトラルの視線が交差する。

 先の敗戦。
 地域大国であるメロビクス王大国としては、とても受け入れられない内容だった。

『シャルル・マルテ将軍以下、将兵一万五千人が全滅。ハジメ・マツバヤシ伯爵ら従軍した貴族も全て討死。生存者は、輸送任務に従事していた十数名のみ』

 宰相ミトラルは、息子の死とあまりの損害に発する言葉がなかった。

 メロビクス王大国国王キルデベルト八世にいたっては、報告を聞くと手に持っていた高価なガラス製の杯を床に叩きつけた。

 それほどに屈辱的であり、大国として受け入れられない結果であった。

 そこで、国王キルデベルト八世と宰相ミトラルは、情報操作を行う。

『シャルル・マルテ将軍が討ち死にした事によって、指揮系統が混乱し敗戦した。損害は兵士千程度であるが、将軍の死を悼み、兵を戻した』

 生き残った十数名の兵士は、口封じの為に処刑された。
 こうして国内に向け大国としての面目を保ったのである。

 宰相ミトラルは、ギュイーズ侯爵の質問に取り合わない態度を貫く。

「そのような事はありません。将兵の損害は千程度です。どこからそのようなデマを?」

「私の領地に出入りする商人からです。複数の商人が、『我が軍全滅』と伝えておりますが?」

 ギュイーズ侯爵が、真実を追究する。
 だが、宰相ミトラルは、あくまで操作した情報を正とする姿勢を崩さない。
 逆撃を試みる。

「はて? ギュイーズ侯爵は、宰相たる私の言葉よりも、商人の言葉を信じるのでしょうか?」

「では、先の戦で生き残った将兵を、この場にお呼び下さい。詳しい戦況報告を希望します。ああ! 従軍された貴族でも構いませんよ? 例えば……ハジメ・マツバヤシ伯爵とか?」

「彼らは療養休暇中です……。遠隔地にいる為、会議に出席できません」

「それは残念! いや、療養休暇でしたか! きっと……長くなるのでしょうな……」

 ギュイーズ侯爵は、ある程度で矛を収めた。
 彼は宰相ミトラルと対立するつもりはない。
 あくまで、孫娘の婿であるアンジェロへの援護射撃なのだ。

 会議が荒れ出し、あちこちで勝手な発言や議論が行われる。

 宰相ミトラルは、流れを引き戻すべく動いた。

「みなさん! まず、作戦計画をお聞き下さい! それから出兵の可否について判断してもよろしいのでは?」

 会議の場が静まり、軍の参謀が作戦の説明を始めた。
 それは大規模な多拠点同時攻撃作戦だった。


 一 メロビクス王大国海軍とニアランド王国海軍の陸戦隊が、キャランフィールドへ接岸上陸、攻撃を行う。

 二 ニアランド王国陸軍が、フリージア王国アルドギスル領アルドポリスへ攻撃を行う。

 三 メロビクス王大国陸軍が、フリージア王国王都へ攻撃を行う。

 四 メロビクス王大国陸軍が、シメイ街道からシメイ伯爵領へ攻撃を行う。

 五 赤獅子族と青狼族が、商業都市ザムザへ攻撃を行う。


「なお、ニアランド王国、赤獅子族、青狼族などへの根回しは、ミトラル宰相閣下により既に終わっております」

 参謀の説明が終わると、会議の場はどっと盛り上がった。
 そして、国王キルデベルト八世が立ち上がり発言したことで、会議の流れは決した。

「我らは大国メロビクスである。流された血は、等しい量の血であがなわれなければならない! 勇敢なる諸君の参陣を期待する!」

 ギュイーズ侯爵は、孫娘と婿のアンジェロに手紙を書かなくてはならなくなった。
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