追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第九章 グンマー連合王国

第192話 リーダーの使命

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 ――一月二日。

 大晦日、新年の大騒ぎも終わり、キャランフィールドは、早くも通常営業だ。

 俺も執務に精を出す。
 執務室で書類を片付けていると、ルーナ先生と黒丸師匠がやってきた。

 俺は仕事の手を止めて、二人を応接ソファーに案内する。

 ルーナ先生が、いつにも増してジトッとした目で真面目に話し出した。

「大事な話がある」

「伺いましょう」

「新年を寿ぐ宴は、いつ?」

「一月十五日を予定しています」

 この異世界にも暦はある。
 一年を十二の月に区切り、一月は三十日だ。

 そして、フリージア王国では、一月に王宮で『新年を寿ぐ宴』が開催される。
 フリージア王国の貴族が集まり、社交が行われるのだ。

「では、国王の退位やグンマー連合王国の発足は、その場で?」

「はい。新年を寿ぐ宴で、発表します」

「アンジェロ。リーダーの使命が何かわかる?」

「えっ!? リーダーの使命ですか!?」

 リーダーの使命ね……。
 あまり考えたことがなかった。

 チラッとルーナ先生と黒丸師匠を見るが、かなり真面目な顔をしている。
 いつもの冗談ではなさそうだ。

 ちゃんと答えておこう。

「うーん……。良い政治を行う……でしょうか?」

「それは国王の仕事。私の問いは、リーダーの使命」

「リーダーの使命……」

 抽象的だな。
 何だろう?

「決断するとか……、判断するとか……?」

「それはリーダーの仕事」

 俺はしばらく考えたが、答えを思いつかなかった。

「降参です。リーダーの使命とは何でしょう?」

「リーダーの使命は、進むべき道を示すこと」

「進むべき道ですか?」

「そう。アンジェロは、グンマー連合王国の総長、みんなのリーダーになる。私たちが進むべき道を示す」

「道を示す……」

 うーん、ルーナ先生の言うことは、何となくわかるが、それでも抽象的だ。

 ルーナ先生と黒丸師匠が、俺のことを心配して、大事なことを伝えに来たのはわかった。
 それが、リーダーの使命なのかな?

 しかし、これまでの話では、具体的に何をすれば良いのかわからない。
 進むべき道と言われてもなあ……。

 俺が考え込んでいると、黒丸師匠が話し出した。

「アンジェロ少年。我々の戦闘を思い出すのである」

「我々の戦闘? 『王国の牙』のですか?」

「そうである。我々の戦闘指揮はルーナである。ルーナは、戦い方を決めてあるのである」

 俺たちの基本的なパターンは、黒丸師匠が前衛で魔物を引きつけ、俺とルーナ先生が魔法で仕留める。

「ええ。黒丸師匠が前へ出ますよね?」

「そうである。それがしは、前へ出て敵とガンガン打ち合えば良いのである。戦闘の方針が決まっているので、迷うことがないのである」

「なるほど……」

 言いたいことが、わかってきたぞ。
 進むべき道とは、国の方針とか、基本的な考え方のことだな。

「わかりました。つまり、お二人はグンマー連合王国発足を発表するまでに、みんながどうすれば良いか悩まないように、国の基本方針などを定めておけと?」

「そうである。手足となって動くのは、じい殿やシメイ殿、第二騎士団の面々がいるのである。アンジェロ少年は、彼らが何をすれば良いか、わかりやすくしてあげるのである」

 そう言うと黒丸師匠は、ニッコリと笑った。
 弟子に物を教える優しい師匠の顔だ。

 俺の受け持つ範囲――領土や領地は広範囲になった。
 最初に北部王領を開発していた頃のように、気心の知れたメンバーとこまめに話し合いながら領地経営を進めるのは難しいだろう。

 俺が転移魔法であちこち移動するとしても限界がある。
 ルーナ先生と黒丸師匠が言う進むべき道を示し、その方針にそって現場で判断実行してもらわなければ。

 けれど、ルーナ先生と黒丸師匠が言うことは難しくないか?

「しかし……それって、難しいですよね?」

 俺が腕を組んで唸りながら質問をすると、ルーナ先生が優しい口調で答えてくれた。

「難しく考えることはない。アンジェロが、『国をこうしたい』と思ったことを言葉にすれば良い」

「じゃあ、例えば『ガンガン戦争をして、大陸を統一する』とか?」

「アンジェロがそうしたければ、そう言えば良い」

「……」

 俺はかなり物騒な発言をしたのだが、止めないのだな。

 俺がどうしたいか?
 そうだな……。

「戦争は……、もう、遠慮したいですね。沢山人が死にましたし、俺も沢山殺しました」

 降りかかる火の粉は払うが、アレクサンダー大王やチンギスギスハンじゃあるまいし、『地の果てまで征服する』なんて野望を、俺は持っていない。

 俺は言葉を続ける。

「平和にみんなが仲良く暮らせる国になると良いですねえ……。それで商取引がバンバン増えて、みんな儲かって、食べたいものを食べて、欲しい物を買って……。クリスマスみたいなイベントも増やしたいですね」

 そうすれば、この世界が文化的に向上するだろうし、女神ジュノー様に頼まれた『この世界のポイントをアップする』になる。
 女神様たちからの頼み事も達成できる。

 ルーナ先生と黒丸師匠は、目を細めた。

「とても素敵。私も、そんな国に住みたい」

「良いのであるな。アンジェロ少年に力を貸した甲斐があるという物である」

 そう言ってもらえると嬉しいな。

「ルーナ先生、黒丸師匠。ありがとうございました。新年を寿ぐ宴までに、もう少し考えて、具体的な形にしてみます」

 俺の宿題が増えた。
 それも急いで片付けなければならない宿題だ。

 けれど、俺は悪くない気分だった。


 *


 その晩、ルーナ・ブラケットと黒丸は、食堂で酒を酌み交わした。

「新しい国に!」

「アンジェロ少年に!」

 二人は、自分たちの弟子が建国することに喜び、また、自分たちが建国に関わったメロビクス王大国が滅ぶことに一抹の寂しさを覚えていた。

「ルーナ。メロビクス王大国は、正式に、いつなくなるのであるか?」

「じい殿に聞いた。新年を寿ぐ宴で、メロビクス王大国の解体が発表される」

「そうであるか……。メロビクスは残念だったのである」

 黒丸は木製のカップに入ったワインを飲み干す。
 ルーナは、食堂のテーブルにのせられたツボから、黒丸のカップにワインを注ぐ。

「新しい国は、どうなるであるか?」

「支配領域が広い。メロビクス王大国よりも広いのだから、統治が大変」

「ふむ……。そこでアンジェロ少年の連合王国構想であるな」

「そう。良いと思う。あとは、技術開発が進めばもっと良い」

 今度は、ルーナが木製のカップに入ったワインを飲み干した。
 黒丸がツボから、ルーナのカップにワインを注ぐ。

「次は、何の技術であろうか?」

「アンジェロとちょっと話したら、世界を狭くすると言っていた」

「世界を狭く? それは魔法の話であるか?」

「違う。アンジェロいた世界では、グースのような飛行機が沢山飛んで、ケッテンクラートのような自動車が沢山走っていたらしい」

「ニッポン国であるな」

「そう。それで移動時間が短くなって、自分の行きたい所へ、誰でもすぐ行けるようになった」

「それが世界を狭くするという意味であるか!」

「そう。楽しみ。行ったことがない国に行く」

「それは楽しみであるな!」

 二人は、他愛のない話を続けながら杯を重ねた。
 これから平和で楽しい時間が続くと、長命種の二人は喜ぶのだった。
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