追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

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第九章 グンマー連合王国

第249話 無限チンチンカイカイ地獄とは?

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 サンドスコーピオンに刺されると痛みとかゆみに襲われる。
 しばらくすると、ルーナが解毒魔法『キュア』でサンドスコーピオンの毒を解毒する。
 かゆみが治まったと思ったら、また、サンドスコーピオンに刺される。

 黒丸とルーナは、執拗にサンドスコーピオンを、奴隷狩りをしていた男二人にけしかけた。
 ルーナは、二人の男に無慈悲な宣告を行う。

「無限チンチンカイカイ地獄。一月でも、二月でも、ずっと続ける」

「「ヒイー! カユイ! カユイ! カユイヨー!」」

 ついに一人の男が根負けして、黒丸の質問に、いやいや答えだした。

「――すると、オマエたちの目的は、ミスル王国の王家を倒すことであるな? その資金集めの為に、奴隷狩りをしていたのであるな?」

「そうだ……」

「首謀者は、誰であるか? 画策している貴族の名は?」

「……」

 黒丸は、首謀者の名前を問うたが、男は答えを渋った。
 すかさずルーナが動く。

「ほれほれ! サンドスコーピオンだぞ~! チンチンカイカイ~!」

「ヒイー! よせ! やめろ! もう、カユイのは、嫌だ!」

「だったら、話すのである! 首謀者は誰であるか! 何という貴族であるか!」

「だから、貴族の首謀者などいないと言っているだろう! 俺たちがやろうとしているのは、革命だ! 王や貴族の政治を覆すのだ!」

「また、カクメイであるか……」

 黒丸は、ウンザリし始めていた。
 尋問は進むようになったが、『革命』で話が止まってしまう。

 革命とは何なのか?

 黒丸は分からずに困り果てていた。

「黒丸さん。私が、尋問やってもいいッスか?」

 ブンゴ隊長が尋問役を買って出た。

「えっと……。そのカクメイっていうのは、ミスル王国をイタロスみたいな国にするってことッスか?」

 イタロスでは、富裕な商人の代表者が政治を行う。
 それも都市ごとに、有力な商人たちが自治を行っているのだ。

 ブンゴ隊長が担当するウーラの町は、イタロスの都市の隣にある。
 その為、ブンゴは、イタロスの政治体制を理解していた。

 だが、若い男は、イタロスとは違うと言う。

「イタロスは、金持ち商人による支配だ! 俺たちが目指しているのは、労働者による政治だ! 労働者の国だ!」

 労働者の国。
 ブンゴ隊長は、よくわからないながらも、何とか言葉をひねり出した。

「それは……、えーと……、平民の国を作るってことッスか?」

「そうだ! 国王も、貴族もない! 金持ちも、貧乏人もない! 平民だけの国だ!」

「「「「「……」」」」」

 黒丸、ルーナ、イネス、ブンゴ隊長と部下、みんなが言葉を失った。
 平民だけの国というのが、イメージ出来ないのだ。

 しばらくして、黒丸が困惑しながら質問した。

「平民だけの国と言うが、税の計算や書類仕事は誰がやるのであるか?」

 この異世界に義務教育はない。
 平民で読み書き計算が出来るのは、商人くらいだ。

 だから、教育を受けた王族や貴族が政治を行っている側面があるのだが、この男はそれを真っ向から否定している。

 男がいう『平民だけの国』では、国として統治が出来ないだろうと黒丸は考えたのだ。

「等しく教育を与えるのだ! 平民でも読み書き計算が出来るようにするのだ!」

「で、あるか……」

 それは無理だろう……と、思いながらも、黒丸は一旦男の言うことをのみ込むことにした。
 そうでもしないと尋問が進まないと感じたのだ。

 続いて、ルーナが質問した。

「金持ちも、貧乏人もないと言った。どういう意味?」

「富は等しく分け与えるのだ!」

「等しく分け与えるとは?」

「等しく働き、等しく分配する!」

「それは不可能」

「俺たちはやる!」

 そこからは、男二人が夢中になって語り始めた。

 自分たちが、求める理想。
 自分たちが、目指す理想。
 自分たちが、作る理想の国。

 スッポンポンでつるされていることを除けば、大変ありがたいお話であった。

 ブンゴ隊長や部下たちは、現実感のない話を圧倒的な熱量で話し続ける二人を見て、不気味に感じていた。

 ルーナは、二人の話に飽きてしまい、途中からイセサッキたちとじゃれ始めた。

 黒丸は、二人に気持ちよく話させて、時々質問をした。
 そして、ミスル王国の鉱山に本拠地があり、リーダーらしき人物がいることを聞き出した。

「なるほど。よく分かったのである。オマエたちは、立派な考えを持って行動したのであるな?」

「「その通りだ!」」

 二人の男は、自信を持って大きな声で答えた。
 黒丸は、続けて問うた。

「オマエたちの言うカクメイを起こせば、素晴らしい国が出来るのであるな? 苦しんでいる奴隷や平民が幸せになれるのであるな?」

「「そうだ! 人々を王や貴族から解放するのだ!」」

 二人は、さらに自信を持って答えた。
 もっとも、二人の答えは、彼らのリーダーが仲間に植え付けた考えであるが、二人は自分の内から出た答えだと勘違いしている。

 黒丸は、二人が酔っているようだと感じだ。
 自分たちの考えや理想に酔っているのだと。

 そこで、一番聞きたかったことを質問した。

「では、なぜ、女子供をさらったのであるか? 奴隷商人に売り渡せば、奴隷として不幸な一生をおくるハメになるのである。平民である彼女たちは、オマエたちが守ってやらねばならない対象であるが? 彼女たちは、幸せにならなくてもかまわないのであるか?」

 黒丸は、二人が多少なりとも罪の意識を感じるかと思った。
 だが、二人は間髪入れずに答えた。

「「目的達成の為には、犠牲は必要だ!」」

 二人の答えに、黒丸だけでなく、ルーナも、ブンゴ隊長や部下たちも、大いに気分を害した。
 黒丸は腕を組み、深くため息をついた。

「はあ……。手前勝手な理屈であるな。自分たちの理想を実現する為には、他人を不幸にしても良いというのであるな……」

「革命の前では、全ては正当化されるのだ!」
「そうだ! 俺たちの革命の為には、やむを得ないことだ!」

「わかったのである。オマエたちは、クソである! 処刑するのである!」

 黒丸がオリハルコンの大剣を引き抜いたが、ルーナが止めた。

「ルーナ?」

「黒丸。この二人は、じいに渡す」

「情報部であるか……。なるほど……」

 じいことコーゼン伯爵なら、更に情報を引き出すかもしれない。
 黒丸はルーナの提案を受け入れ、二人の男をキャランフィールドの情報部に引き渡すことにした。

 そして、イネスは考えていた。

(革命……。カタロニア独立運動に利用出来ないかしら?)
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