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第十章 レッドアラート!
第259話 ソビエット! ソビエット!
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――十月二十四日。革命発生から十五日目。
キャランフィールドの執務室で、俺とじいは頭を抱えていた。
グンマー連合王国に、亡命者が続々とやってくるのだ。
最初はウーラのブンゴ隊長からの報告だった。
王都レーベから逃げてきた十二人のミスル王国貴族と家族が、亡命を希望していると対処要請が入った。
次は、フォーワ辺境伯から、そしてドクロザワの町から、また、ブンゴ隊長から……。
亡命希望者がひっきりなしに現れ、今、俺が把握しているだけで千人を超える。
最初は、ミスル王国貴族とその家族が亡命希望者だった。
今は、商人とその家族、商会の従業員が中心だ。
全部受け入れているが、千人単位の亡命者など、どう扱ったものか……。
「じい、どうする?」
「とりあえず、ミスルとの国境近くに仮住まいしてもらっては?」
「そうだな。じゃあ、サイターマ領に住んでもらうか……」
サイターマ領なら温暖だから、ミスル人でも住みやすいだろう。
亡命受け入れ作業で、エルハムさんを始めとした元ミスル貴族が現地へ行っている。
エルハムさんたちに指示を出そう。
そして相変わらず執務室の内外は人が多い。
「通して下さい! 通して下さい!」
廊下から切迫した声が聞こえてきた。
使いの若い男が入室し、じいにメモ書きを手渡す。
じいが、メモ書きを一瞥した。
「アンジェロ様! ギガランドでも革命が起こったようです!」
「えっ!?」
ギガランドは、ミスルの隣国で、千年戦争をやっていた。
革命の火が、隣国に飛び火したか……。
いや……、そんな簡単に革命が起こせるわけがない!
また、バタバタと沢山の人が執務室から飛び出して行くのを横目に、俺はじいに小声で話しかけた。
「共産主義革命組織が、ギガランドでも準備していたのか……?」
「恐らくそうでしょう……連中の組織力、あなどれませんな……」
すると、また廊下から声が聞こえた。
「通して下さい! 通して下さい!」
じいが、またメモ書きを受け取る。
「ミスル王国が、新しい国名を名乗ったそうです。ソ……ソビ……?」
「貸して!」
じいからメモ書きを受け取り、目を通す。
そこには、ミスルの新しい国名が書いてあった。
『ソビエト連邦』
*
俺は、ルーナ先生が火薬の実験をしている仮設の工房を訪ねた。
ソビエト連邦誕生のメモ書きを、ルーナ先生に渡す。
「ソビエット!」
「ソビエトです!」
ルーナ先生が、独特のイントネーションでソビエトを読み間違えた。
「面白い名前。気に入った!」
「俺は気に入りません」
まさか、異世界で共産主義の亡霊と出会うとは思わなかった。
ソビエト連邦――ソ連だよな。
俺が生まれる前に、崩壊した国だ。
教科書の中でしか見たことがない。
いや、むしろ、同志スターリンとか、ネット上ではネタだ。
ネタとしてなら、見たことがあるぞ。
「それで、アンジェロ、どうする?」
「様子を見ます。ソ連の出方を見ないと――」
「ソ連?」
「ソビエト連邦のことです」
「ソビエット!」
「だから、ソビエトですって!」
ルーナ先生のツボにはまったらしい。
俺は、話題を変えた。
「火薬の方は、どうですか?」
「魔方陣と印術を組み合わせた。爆発力アップ。殺傷力アップ。破壊力アップ」
嫌なアップ、アップだな。
怖いわ。
この仮設工房は、キャランフィールド郊外の荒れ地にポツンと建っている。
町の連中には、危険だから立ち入り禁止を言い渡した。
毎日、ドーン! ドーン! と、派手な爆発音がしているから、誰も近づこうとしない。
「もう、だいたい出来上がった。キューや酒樽と相談して、運用を考える」
ルーナ先生は、南方から入ってきた紅茶をすすりながら、今後の予定を説明してくれた。
リス族のキューとホレックのおっちゃんに相談するということは、異世界飛行機グースやケッテンクラートでの運用を想定しているのだろう。
「お任せします」
俺が頭を下げると、ルーナ先生はコクリとうなずいた。
「ソビエットとは、戦になる?」
「どう……ですかね……」
「歯切れが悪い」
「戦うとなると、ソ連の民衆全体を敵に回すことになります」
「ふむ。一国、皆殺しはキツイ」
正直、やりたくないな。
共産主義の善し悪しはおいておくとして、現在の旧ミスル王国――ソ連は、共産主義革命組織が民衆を煽動して革命を起こした。
ミスル王やミスル貴族は千年戦争を行い、民衆に安くない税を課してきた。
良い政治だったとは、言えない。
今、こちらからソ連に攻め込めば、ソ連の民衆はグンマー連合王国をどう思うか?
たぶん、ミスル王やミスル貴族が行った政治に戻そうとする勢力と見なすだろう。
つまり、人民の敵。
ソ連の民衆全てを敵に回すことになりかねない。
ルーナ先生に俺の推測を話すと、ゲラゲラ笑い出した。
「人民の敵アンジェロ! 民衆の敵アンジェロ! ソビエットの敵アンジェロ!」
「笑い事じゃないですよ~」
俺も苦笑いだ。
とにかく、ソ連との戦いはやっかいなことになりそうだ。
単なる武力のぶつかり合いではなく、俺の政治力も試されそうだ。
「ソビエット! ソビエット!」
「ルーナ先生! うるさいですよ!」
キャランフィールドの執務室で、俺とじいは頭を抱えていた。
グンマー連合王国に、亡命者が続々とやってくるのだ。
最初はウーラのブンゴ隊長からの報告だった。
王都レーベから逃げてきた十二人のミスル王国貴族と家族が、亡命を希望していると対処要請が入った。
次は、フォーワ辺境伯から、そしてドクロザワの町から、また、ブンゴ隊長から……。
亡命希望者がひっきりなしに現れ、今、俺が把握しているだけで千人を超える。
最初は、ミスル王国貴族とその家族が亡命希望者だった。
今は、商人とその家族、商会の従業員が中心だ。
全部受け入れているが、千人単位の亡命者など、どう扱ったものか……。
「じい、どうする?」
「とりあえず、ミスルとの国境近くに仮住まいしてもらっては?」
「そうだな。じゃあ、サイターマ領に住んでもらうか……」
サイターマ領なら温暖だから、ミスル人でも住みやすいだろう。
亡命受け入れ作業で、エルハムさんを始めとした元ミスル貴族が現地へ行っている。
エルハムさんたちに指示を出そう。
そして相変わらず執務室の内外は人が多い。
「通して下さい! 通して下さい!」
廊下から切迫した声が聞こえてきた。
使いの若い男が入室し、じいにメモ書きを手渡す。
じいが、メモ書きを一瞥した。
「アンジェロ様! ギガランドでも革命が起こったようです!」
「えっ!?」
ギガランドは、ミスルの隣国で、千年戦争をやっていた。
革命の火が、隣国に飛び火したか……。
いや……、そんな簡単に革命が起こせるわけがない!
また、バタバタと沢山の人が執務室から飛び出して行くのを横目に、俺はじいに小声で話しかけた。
「共産主義革命組織が、ギガランドでも準備していたのか……?」
「恐らくそうでしょう……連中の組織力、あなどれませんな……」
すると、また廊下から声が聞こえた。
「通して下さい! 通して下さい!」
じいが、またメモ書きを受け取る。
「ミスル王国が、新しい国名を名乗ったそうです。ソ……ソビ……?」
「貸して!」
じいからメモ書きを受け取り、目を通す。
そこには、ミスルの新しい国名が書いてあった。
『ソビエト連邦』
*
俺は、ルーナ先生が火薬の実験をしている仮設の工房を訪ねた。
ソビエト連邦誕生のメモ書きを、ルーナ先生に渡す。
「ソビエット!」
「ソビエトです!」
ルーナ先生が、独特のイントネーションでソビエトを読み間違えた。
「面白い名前。気に入った!」
「俺は気に入りません」
まさか、異世界で共産主義の亡霊と出会うとは思わなかった。
ソビエト連邦――ソ連だよな。
俺が生まれる前に、崩壊した国だ。
教科書の中でしか見たことがない。
いや、むしろ、同志スターリンとか、ネット上ではネタだ。
ネタとしてなら、見たことがあるぞ。
「それで、アンジェロ、どうする?」
「様子を見ます。ソ連の出方を見ないと――」
「ソ連?」
「ソビエト連邦のことです」
「ソビエット!」
「だから、ソビエトですって!」
ルーナ先生のツボにはまったらしい。
俺は、話題を変えた。
「火薬の方は、どうですか?」
「魔方陣と印術を組み合わせた。爆発力アップ。殺傷力アップ。破壊力アップ」
嫌なアップ、アップだな。
怖いわ。
この仮設工房は、キャランフィールド郊外の荒れ地にポツンと建っている。
町の連中には、危険だから立ち入り禁止を言い渡した。
毎日、ドーン! ドーン! と、派手な爆発音がしているから、誰も近づこうとしない。
「もう、だいたい出来上がった。キューや酒樽と相談して、運用を考える」
ルーナ先生は、南方から入ってきた紅茶をすすりながら、今後の予定を説明してくれた。
リス族のキューとホレックのおっちゃんに相談するということは、異世界飛行機グースやケッテンクラートでの運用を想定しているのだろう。
「お任せします」
俺が頭を下げると、ルーナ先生はコクリとうなずいた。
「ソビエットとは、戦になる?」
「どう……ですかね……」
「歯切れが悪い」
「戦うとなると、ソ連の民衆全体を敵に回すことになります」
「ふむ。一国、皆殺しはキツイ」
正直、やりたくないな。
共産主義の善し悪しはおいておくとして、現在の旧ミスル王国――ソ連は、共産主義革命組織が民衆を煽動して革命を起こした。
ミスル王やミスル貴族は千年戦争を行い、民衆に安くない税を課してきた。
良い政治だったとは、言えない。
今、こちらからソ連に攻め込めば、ソ連の民衆はグンマー連合王国をどう思うか?
たぶん、ミスル王やミスル貴族が行った政治に戻そうとする勢力と見なすだろう。
つまり、人民の敵。
ソ連の民衆全てを敵に回すことになりかねない。
ルーナ先生に俺の推測を話すと、ゲラゲラ笑い出した。
「人民の敵アンジェロ! 民衆の敵アンジェロ! ソビエットの敵アンジェロ!」
「笑い事じゃないですよ~」
俺も苦笑いだ。
とにかく、ソ連との戦いはやっかいなことになりそうだ。
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「ソビエット! ソビエット!」
「ルーナ先生! うるさいですよ!」
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