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第十章 レッドアラート!
第285話 ミスター・デンジャー
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――翌朝。
フルシチョフの寝室の扉をメイドが叩く。
「閣下! フルシチョフ閣下! 起きてください!」
政治将校たちが、ジトッとした目でその様子を眺めていた。
誰ともなくつぶやきがこぼれる。
「また、ハッスルか……」
そう、『また』である。
昨日に続いて、今朝もフルシチョフは大寝坊だ。
政治将校たちの表情は様々だ。
ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべている者もいれば、侮蔑の感情をあらわにする者もいる。
役職の一番高い政治将校は、眉間にしわを寄せていた。
『昨日、あれだけ怒っていたが、あれは照れ隠しなのだな……。しかし、同志が魔物と寝るのは問題だ。はて、どうしたモノか……』
この地域の共産党トップである同志フルシチョフが、マモナーであるとは……。
何とも頭の痛い問題である。
「ハア……。諸君、こうなっては仕方がない。同志フルシチョフにお叱りを受けるかもしれないが、寝室に踏み込もう!」
「「「「「オウ!」」」」」
政治将校たちは、意を決しフルシチョフの寝室に踏み込んだ。
すると昨日と同じく、いびきが二人分聞こえてきた。
「ぐお~! ぐお~! ぐお~!」
「GU-! GU-!」
「「「「「「……」」」」」」
また、である。
政治将校たちは思った。『いい加減にしろ』と。
だが、今日は昨日と少し様子が違っていた。
大きな寝台には、こんもりと毛布で山が出来ているのだが、昨日よりも一際山が大きいのだ。
誰ともなく、つぶやきが漏れる。
「何か不吉な予感がするな……」
部屋に踏み込んだ全員が同じ思いだった。政治将校たちが、護衛の兵士が、年若いメイドが、みな同じ気持ちだった。
全員の視線が、役職の一番高い政治将校に集まった。
「やはり私の役目なのか……」
役職の一番高い政治将校は、ぼやきながら毛布を一気にまくり上げた。
「セイッ!」
するとそこには、高いびきのフルシチョフ。
その隣には異形が……。
「ややっ!」
「やややっ!」
「ややややっ!」
「これは……」
「オ……オークだ!」
「ヒイッ! なんて恐ろしい!」
フルシチョフの寝室は大パニックになった。
某伯爵の某領地では、オークは豚肉扱いの魔物だが、一般的には強力な魔物である。普通の農民では太刀打ちが出来ない。
経験豊富な冒険者や訓練を受けた兵士が複数人で狩る危険度が高い魔物なのだ。
そのデンジャーな魔物が、謹厳実直な上司フルシチョフの隣にいる。
彼らが大騒ぎするにも無理はなかった。
さて、フルシチョフである。
耳元で大騒ぎをされては、さすがに目が覚める。
「ん……んん? なんだ、うるさいな……」
寝ぼけ眼で起き上がろうとすると、手に何かが触れた。
「なっ!? これは何だ!?」
フルシチョフは、自分の隣に寝転ぶオークに気が付いた。
派手な化粧をほどこし、スケスケのセクシーな服を身にまとい、全身を縄で縛られている。
これはもちろんグンマー連合王国情報部員とルーナ・ブラケットの共作である。
だが、この危険な現場に遭遇した面々は、そんな事情は知らない。普段、謹厳実直な上司がオーク相手に危険な火遊びをしていたと解釈した。
若い政治将校が、思わず叫んだ。
「ミ、ミスター・デンジャー……!」
「コラ! 妙なあだ名をつけるな!」
だが、若い政治将校は、ひるむことなく言葉を続ける。
「ご安心を! 私にお任せください! 同志フルシチョフは、ゴブリンに似た醜女やオークのように太った女がお好みのご様子ですので、私がそのような女を探して参ります!」
「馬鹿者! 安心出来ぬわ!」
フルシチョフは、細身で美形の女性が好みだった。この状況は、まったくもって安心出来ない。
若い政治将校は口をつぐんだが、年輩の政治将校が苦言を呈し始めた。
「同志。しかし、我々としても困ってしまいます。上司が魔物趣味……それもオークにこのような化粧と衣装を――ウップ……」
年輩の政治将校は、イロイロと想像をしてしまい吐き気を催したがギリギリで耐えた。
「それよりは、この者が申す通りに、ゴブリンやオークに似た女に相手をさせた方が、幾分かは心が安まるというものですぞ!」
完全に誤解をされている……。
なんとか誤解を解く方法はないものだろうか……。
フルシチョフは頭を抱えた。
そして、あることに気が付く。それは、若いメイドの冷たい目――それは、軽蔑と一目で分かる冷たさだった。
フルシチョフは、孫娘ほど年の離れたメイドに軽蔑されたことに動揺した。
自分は絶対的な立場、人に敬われ、人に恐れられる地位を得たのに、なぜ!
「――ハッ! 違う! 違うのだ! これは罠だ! 敵の罠なのだ!」
「閣下……。もう、言い訳も、隠し事もなしにしていただきたい。我々は――」
「だから、違うのだ! 違うと言っているではないか!」
涙目で否定するフルシチョフ。
その姿を天井裏からグンマー連合王国情報部員とルーナ・ブラケットがのぞき見ていた。
「ルーナ様……。効いてますね!」
「フフフ……。効いてる! 効いてる!」
ルーナは楽しそうだ。
まさに、非道である。
だが、グンマー連合王国情報部員とルーナ・ブラケットの非道な精神攻撃は、まだ続く。
ルーナは、目つきを厳しくして小声で宣言した。
「第三弾!」
「了解です! ルーナ様!」
フルシチョフの寝室の扉をメイドが叩く。
「閣下! フルシチョフ閣下! 起きてください!」
政治将校たちが、ジトッとした目でその様子を眺めていた。
誰ともなくつぶやきがこぼれる。
「また、ハッスルか……」
そう、『また』である。
昨日に続いて、今朝もフルシチョフは大寝坊だ。
政治将校たちの表情は様々だ。
ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべている者もいれば、侮蔑の感情をあらわにする者もいる。
役職の一番高い政治将校は、眉間にしわを寄せていた。
『昨日、あれだけ怒っていたが、あれは照れ隠しなのだな……。しかし、同志が魔物と寝るのは問題だ。はて、どうしたモノか……』
この地域の共産党トップである同志フルシチョフが、マモナーであるとは……。
何とも頭の痛い問題である。
「ハア……。諸君、こうなっては仕方がない。同志フルシチョフにお叱りを受けるかもしれないが、寝室に踏み込もう!」
「「「「「オウ!」」」」」
政治将校たちは、意を決しフルシチョフの寝室に踏み込んだ。
すると昨日と同じく、いびきが二人分聞こえてきた。
「ぐお~! ぐお~! ぐお~!」
「GU-! GU-!」
「「「「「「……」」」」」」
また、である。
政治将校たちは思った。『いい加減にしろ』と。
だが、今日は昨日と少し様子が違っていた。
大きな寝台には、こんもりと毛布で山が出来ているのだが、昨日よりも一際山が大きいのだ。
誰ともなく、つぶやきが漏れる。
「何か不吉な予感がするな……」
部屋に踏み込んだ全員が同じ思いだった。政治将校たちが、護衛の兵士が、年若いメイドが、みな同じ気持ちだった。
全員の視線が、役職の一番高い政治将校に集まった。
「やはり私の役目なのか……」
役職の一番高い政治将校は、ぼやきながら毛布を一気にまくり上げた。
「セイッ!」
するとそこには、高いびきのフルシチョフ。
その隣には異形が……。
「ややっ!」
「やややっ!」
「ややややっ!」
「これは……」
「オ……オークだ!」
「ヒイッ! なんて恐ろしい!」
フルシチョフの寝室は大パニックになった。
某伯爵の某領地では、オークは豚肉扱いの魔物だが、一般的には強力な魔物である。普通の農民では太刀打ちが出来ない。
経験豊富な冒険者や訓練を受けた兵士が複数人で狩る危険度が高い魔物なのだ。
そのデンジャーな魔物が、謹厳実直な上司フルシチョフの隣にいる。
彼らが大騒ぎするにも無理はなかった。
さて、フルシチョフである。
耳元で大騒ぎをされては、さすがに目が覚める。
「ん……んん? なんだ、うるさいな……」
寝ぼけ眼で起き上がろうとすると、手に何かが触れた。
「なっ!? これは何だ!?」
フルシチョフは、自分の隣に寝転ぶオークに気が付いた。
派手な化粧をほどこし、スケスケのセクシーな服を身にまとい、全身を縄で縛られている。
これはもちろんグンマー連合王国情報部員とルーナ・ブラケットの共作である。
だが、この危険な現場に遭遇した面々は、そんな事情は知らない。普段、謹厳実直な上司がオーク相手に危険な火遊びをしていたと解釈した。
若い政治将校が、思わず叫んだ。
「ミ、ミスター・デンジャー……!」
「コラ! 妙なあだ名をつけるな!」
だが、若い政治将校は、ひるむことなく言葉を続ける。
「ご安心を! 私にお任せください! 同志フルシチョフは、ゴブリンに似た醜女やオークのように太った女がお好みのご様子ですので、私がそのような女を探して参ります!」
「馬鹿者! 安心出来ぬわ!」
フルシチョフは、細身で美形の女性が好みだった。この状況は、まったくもって安心出来ない。
若い政治将校は口をつぐんだが、年輩の政治将校が苦言を呈し始めた。
「同志。しかし、我々としても困ってしまいます。上司が魔物趣味……それもオークにこのような化粧と衣装を――ウップ……」
年輩の政治将校は、イロイロと想像をしてしまい吐き気を催したがギリギリで耐えた。
「それよりは、この者が申す通りに、ゴブリンやオークに似た女に相手をさせた方が、幾分かは心が安まるというものですぞ!」
完全に誤解をされている……。
なんとか誤解を解く方法はないものだろうか……。
フルシチョフは頭を抱えた。
そして、あることに気が付く。それは、若いメイドの冷たい目――それは、軽蔑と一目で分かる冷たさだった。
フルシチョフは、孫娘ほど年の離れたメイドに軽蔑されたことに動揺した。
自分は絶対的な立場、人に敬われ、人に恐れられる地位を得たのに、なぜ!
「――ハッ! 違う! 違うのだ! これは罠だ! 敵の罠なのだ!」
「閣下……。もう、言い訳も、隠し事もなしにしていただきたい。我々は――」
「だから、違うのだ! 違うと言っているではないか!」
涙目で否定するフルシチョフ。
その姿を天井裏からグンマー連合王国情報部員とルーナ・ブラケットがのぞき見ていた。
「ルーナ様……。効いてますね!」
「フフフ……。効いてる! 効いてる!」
ルーナは楽しそうだ。
まさに、非道である。
だが、グンマー連合王国情報部員とルーナ・ブラケットの非道な精神攻撃は、まだ続く。
ルーナは、目つきを厳しくして小声で宣言した。
「第三弾!」
「了解です! ルーナ様!」
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