追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
290 / 358
第十章 レッドアラート!

第290話 アリー・ギュイーズとウォーカー船長

しおりを挟む
 その頃、領都キャランフィールドでは、アンジェロの婚約者アリー・ギュイーズが大忙しで仕事を片付けていた。

 食料、魔石、鉱石など、戦争に必要な物資の調達をアリー・ギュイーズが担当しているからだ。

 アリー・ギュイーズの下には多数の文官が配属されており、大量の物資を調達しては前線や工房へ送っていた。

 領主館内にあるアリー・ギュイーズの執務室は拡張され、昼夜を問わず稼働し鉄火場となっていた。

 アリー・ギュイーズは文官たちにテキパキと指示を出す。

「ここで調達した食料は前線へ優先して送って下さい」

「連合王国南部で食料が不足しがちですが、いかがいたしましょうか?」

「商業都市ザムザにいるジョバンニさんに連絡を取って下さい。王国南部の食料は、大陸東部からの輸入をあてがいます」

「前線から『魔石をもっと送れ!』と催促が来ています」

「黒丸さんにお願いして、冒険者ギルドからの調達量を増やして下さい。予算をかけて構いません」

「ウォーカー船長がおいでです」

「お通しして下さい」

 顔見知りのウォーカー船長が入室してきたことで、アリー・ギュイーズは少し気を緩めた。
 ニコッと可憐な笑顔をウォーカー船長に見せた。

「ウォーカー船長。お久しぶりですね」

「アリー様! エリザ女王国から食料を買い付けてきました! 大型船五隻分、港で荷を下ろしています!」

「まあ、ありがとう!」

 周りの文官たちは、アリー・ギュイーズとウォーカー船長の会話を聞き笑顔を浮かべた。食料は、彼らにとって弾丸である。

『これで弾切れにならずに済む』

 睡眠不足で目の下にクマをこしらえた文官たちが笑顔になり、アリー・ギュイーズの執務室の空気が和らいだ。

「みなさん。少しお休みをいたしましょう」

 アリー・ギュイーズが手元にある銀製のベルを揺らすと、侍女たちがティーセットを持って入室してきた。

 文官たちは、椅子に座ったまま伸びをして紅茶に砂糖をタップリと放り込み、お茶請けのスコーンに野いちごのジャムをこれまたタップリとつけた。

 ハードなデスクワークの結果、脳が糖分を欲しているのだ。

 執務室のあちらこちらで、文官たちが甘い紅茶とスコーンに舌鼓を打っている。

 そんな様子を横目で見ながら、アリー・ギュイーズはウォーカー船長に紅茶を勧めた。

「どうぞ」

「頂戴します。お茶は相変わらずエリザ風ですね」

「ええ。食事はキャランフィールド風、生活様式や服装はコンチネンタルですが、お茶はエリザ風が抜けなくて」

 コンチネンタルは、エリザ女王国の人間が大陸風の文化を指す時に使う言葉である。

 アリー・ギュイーズは、エリザ女王国の姫として産まれ育ち、大陸のメロビクス王大国で学び、アンジェロ・フリージアと婚約しキャランフィールドで生活をしている。

 多様な文化を吸収し、『いいとこ取り』をして、忙しい中で人生を楽しんでいた。

 ウォーカー船長は、アリー・ギュイーズの言葉を聞いて思った。

(ギュイーズ侯爵に報告することが増えたな……。きっとお喜びになる)

 孫娘アリー・ギュイーズの生活の一部を知ることは、ギュイーズ侯爵にとって喜ばしいことであろう。

「ウォーカー船長。エリザ女王国の方は、どうかしら?」

「平穏ですね。グンマー連合王国が物資を大量に買い付けているので、港は活気があります」

「では、わたくしたちの背後を突くよりも、商売に精を出しそうかしら?」

「ええ。大店の商人から聞いた話ですが、エリザの宮廷は商業税が増えて喜んでいるそうですよ。貴族連中も領地から食料や鉄鉱石が売れて喜んでいるそうです。エリザ女王国の参戦は、ないでしょう」

「そう。安心しましたわ。情報を集めて下さって、ありがとう」

「恐れ入ります」

 エリザ女王国は、戦争特需に湧いていた。
 グンマー連合王国が、食料、鉄鋼石を大量に購入する。そして、自国が攻撃される恐れはない。

 エリザ女王国の宮廷は、グンマー連合王国とソビエト連邦の戦争に中立の立場を取ることを決定していたのだ。

 ウォーカー船長は、茶飲み話にアンジェロの作戦主旨について疑問を口にした。

「アリー様。何だって民衆に食料を配るなんて、回りくどいことをするのですか? グンマー連合王国の軍事力なら、ソビエト連邦を圧倒出来るでしょう?」

 アリー・ギュイーズは、上品に一口紅茶を飲むとウォーカー船長に答えた。

「わたくし軍事のことは専門外ですが……、正面から打ち破ることも可能だと、アンジェロ陛下から聞いていますわ」

「そうでしょう? それにアンジェロ陛下は、名うての魔法使いだ。大規模魔法をドーンと一発撃てば、ソビエト軍は四散するでしょう?」

「恐らく、そうでしょう」

「では、狙いはソビエト連邦をグンマー連合王国に併合することですか? 民衆の人気をとって、併合後の政治を円滑にするのが狙いですか?」

 ウォーカー船長は、遠慮せずに戦略目標を確認しようとした。商売上の都合だけでなく、ギュイーズ侯爵に報告をする為でもある。

 だが、あまりに遠慮のないウォーカー船長の物言いに、執務室にいる文官たちの視線が険しくなった。

 だが、ピリリとした雰囲気をアリー・ギュイーズの微笑が和らげる。

「ふふ……それもあるそうですが、真の狙いは別の所にあるそうですわ」

「別ですか……。それは一体?」

「ここで説明するよりも、見てもらった方が良いでしょう。では、ウォーカー船長、少しお散歩に付き合って下さいな」

「は、はあ……。承知しました」

 アリー・ギュイーズとウォーカー船長は、キャランフィールドの街へ出かけることになった。窓際で日向ぼっこをしていた護衛の猫族たちが、二人の後を追った。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...