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第十章 レッドアラート!
第291話 ウォーカー船長の疑問と答え
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アリー・ギュイーズとウォーカー船長は、キャランフィールドの街へと出かけた。
一見ノンビリと散歩をしているようだが、前後左右を護衛の猫族が固め警戒をしている。
アリー・ギュイーズが通りを進むと、四方から声がかかった。
「アリー様! この前はありがとうございます!」
「アリー様! 良い魚が入りましたよ!」
「アリー様! また、食料を仕入れてきます!」
アリー・ギュイーズは仕事上商人との接点が多いので、商人や店番から威勢の良い声がかかるのだ。
アリー・ギュイーズは、上品に右手を振りながら声に応える。
「みなさん、ごきげんよう」
キャランフィールドの目抜き通りを、しばらく歩く。アリー・ギュイーズは、ウォーカー船長に問いかけた。
「ウォーカー船長は、キャランフィールドの街を、どう思いますか?」
「活気がありますね! 来る度に店が増え、街が発展していますよ!」
ウォーカー船長は、アリー・ギュイーズの問いが、自分の質問への答えにどうつながるのかわからなかった。
『なぜ民衆に食料を配るなんて、回りくどいことをするのか?』
この元気な街の様子に答えがあるのだろうか? ウォーカー船長は、ノンビリと歩きながらも周囲を観察した。
「ねえ、ウォーカー船長。キャランフィールドでは、少し高級な店が増えたと思いませんか?」
アリーが再度ウォーカー船長に問いかけた。
最近、キャランフィールドでは、平民向けの高級な店が増えた。王族や貴族向けの超高級店ではない。いわば、小金持ち向けの店、平民が贅沢をしたい時に使う店が増えたのだ。
ウォーカー船長は、思索を深める。
「そうですね……。キャランフィールドは、好景気ですから、働き口が沢山ある……。金を持っている者が多いのでしょう」
「そうですわ。工房が増え、お店が増え、平民の働く場所が増え、平民の収入が増える。するとどうなると思いますか?」
「えっ!? どうって……。平民の暮らしが良くなるし、商人は物が売れるし、税収も増えるから王族貴族も万々歳じゃないですか!」
何を当たり前のことを……。ウォーカー船長は、そんな風に思った。
アリー・ギュイーズは、キャランフィールドの街で一番賑わいのある場所で立ち止まった。
ここは冒険者ギルドにも、商業ギルドにも近い。飲食店では店員が忙しく立ち働き、通りには屋台が軒を連ね美味しそうな匂いを漂わせている。
通りをトラムが港へ向かって走り、小麦の袋を満載した車から運転手が顔をのぞかせ、知り合いと元気に無駄話に花を咲かせ、そして、耳を澄ませば、遠くから金属を叩く音――工房の職人たちが物を作る音がリズミカルに聞こえてくるのだ。
アリー・ギュイーズは、ウォーカー船長の方へ向き直った。
「アンジェロ様は、こうおっしゃったのです。平民の収入が増えると、平民が発言力を持つようになる。やがて、王族や貴族も平民の意見を無視出来なくなる……と」
アリー・ギュイーズは、両手を広げて目をつぶり、キャランフィールドの街の賑わいに身を任せた。
ウォーカー船長の耳に、街の声がこだまして、ウォーカー船長は、一瞬、違う世界が見えた気がした。
――ハッとするウォーカー船長。
「アリー様……。おっしゃっていることが、わかる気がします……。この街は既に……、その……、我々が住んでいた世界とは違っているのですね?」
アリー・ギュイーズは、しっかりとウォーカー船長にうなずいてみせた。
王様がいて、貴族がいて、農民や漁師いる――牧歌的なギュイーズ侯爵領とは違う世界が、都会のキャランフィールドには広がっている。
アンジェロによってもたらされた技術革新と経済発展は、キャランフィールドの街を中世から近世へ、そして一気に近代へと時計の針を進めようとしていた。
アリー・ギュイーズは、アンジェロから聞いた話をウォーカー船長に伝える。
「街が、国が発展し、平民の暮らしが良くなり、平民の発言力が増えると共産主義に傾倒する人が増えるそうです」
「しかし、共産主義は、理想主義過ぎませんか? 誰もが平等で公平……。そんなことが出来るのでしょうか?」
「私は無理だと思いますわ。しかし、王や貴族が平民の言葉に耳を傾けずに、平民を虐げれば、大いに支持を集めるだろうとアンジェロ様はおっしゃいました」
「なるほど……。それは、あり得る話ですね……」
ウォーカー船長は、頭の中で未来を考えてみた。沢山の働き口があり、沢山の平民が汗を流す。しかし、そこで、領主が平民を虐げたら?
反乱が起こるかもしれない。みんなが平等という思想――共産主義が流行するかもしれない。
「そこで、今回平民をこちらの味方につけ、共産主義よりも我々の方が頼りになると民衆に理解させるのだそうですわ」
「理解出来ます。将来の起こりうる共産主義の台頭を、押さえ込みたいとお考えなのですね?」
「ええ。『難しい理屈をこねるより、食料を配った方が早い。頭に訴えるな! 胃袋に訴えろ!』だそうですわ」
「これは……なんとも直截ですな!」
アリー・ギュイーズは苦笑し、ウォーカー船長は、笑い声を上げた。
将来の不安要素である共産主義を排除する為に、アンジェロは民心掌握に努めている。大量の食料を前線に送り、ブンゴ隊長たちに義賊を演じさせ、共産党幹部の醜聞を世に広める。
直接攻撃を行えば、もっと早くケリをつけられるのに、一見すると回りくどい手口……。
しかし、それらの作戦には、ちゃんと意味があった。
ウォーカー船長は、疑問が晴れ、スッキリとした心持ちになった。
「よくわかりました。それでは、私は引き続き食料の仕入れをがんばりましょう!」
「よろしくお願いいたしますわ。では、ちょっとお茶にいたしましょう。この先に、新しくできたお店があるのですよ」
「お供いたします!」
アリー・ギュイーズとウォーカー船長は、晴れやかな表情でお店に入った。
その頃、ソビエト連邦では、経済を担当する幹部三人が緊急会議を開いていた。
一見ノンビリと散歩をしているようだが、前後左右を護衛の猫族が固め警戒をしている。
アリー・ギュイーズが通りを進むと、四方から声がかかった。
「アリー様! この前はありがとうございます!」
「アリー様! 良い魚が入りましたよ!」
「アリー様! また、食料を仕入れてきます!」
アリー・ギュイーズは仕事上商人との接点が多いので、商人や店番から威勢の良い声がかかるのだ。
アリー・ギュイーズは、上品に右手を振りながら声に応える。
「みなさん、ごきげんよう」
キャランフィールドの目抜き通りを、しばらく歩く。アリー・ギュイーズは、ウォーカー船長に問いかけた。
「ウォーカー船長は、キャランフィールドの街を、どう思いますか?」
「活気がありますね! 来る度に店が増え、街が発展していますよ!」
ウォーカー船長は、アリー・ギュイーズの問いが、自分の質問への答えにどうつながるのかわからなかった。
『なぜ民衆に食料を配るなんて、回りくどいことをするのか?』
この元気な街の様子に答えがあるのだろうか? ウォーカー船長は、ノンビリと歩きながらも周囲を観察した。
「ねえ、ウォーカー船長。キャランフィールドでは、少し高級な店が増えたと思いませんか?」
アリーが再度ウォーカー船長に問いかけた。
最近、キャランフィールドでは、平民向けの高級な店が増えた。王族や貴族向けの超高級店ではない。いわば、小金持ち向けの店、平民が贅沢をしたい時に使う店が増えたのだ。
ウォーカー船長は、思索を深める。
「そうですね……。キャランフィールドは、好景気ですから、働き口が沢山ある……。金を持っている者が多いのでしょう」
「そうですわ。工房が増え、お店が増え、平民の働く場所が増え、平民の収入が増える。するとどうなると思いますか?」
「えっ!? どうって……。平民の暮らしが良くなるし、商人は物が売れるし、税収も増えるから王族貴族も万々歳じゃないですか!」
何を当たり前のことを……。ウォーカー船長は、そんな風に思った。
アリー・ギュイーズは、キャランフィールドの街で一番賑わいのある場所で立ち止まった。
ここは冒険者ギルドにも、商業ギルドにも近い。飲食店では店員が忙しく立ち働き、通りには屋台が軒を連ね美味しそうな匂いを漂わせている。
通りをトラムが港へ向かって走り、小麦の袋を満載した車から運転手が顔をのぞかせ、知り合いと元気に無駄話に花を咲かせ、そして、耳を澄ませば、遠くから金属を叩く音――工房の職人たちが物を作る音がリズミカルに聞こえてくるのだ。
アリー・ギュイーズは、ウォーカー船長の方へ向き直った。
「アンジェロ様は、こうおっしゃったのです。平民の収入が増えると、平民が発言力を持つようになる。やがて、王族や貴族も平民の意見を無視出来なくなる……と」
アリー・ギュイーズは、両手を広げて目をつぶり、キャランフィールドの街の賑わいに身を任せた。
ウォーカー船長の耳に、街の声がこだまして、ウォーカー船長は、一瞬、違う世界が見えた気がした。
――ハッとするウォーカー船長。
「アリー様……。おっしゃっていることが、わかる気がします……。この街は既に……、その……、我々が住んでいた世界とは違っているのですね?」
アリー・ギュイーズは、しっかりとウォーカー船長にうなずいてみせた。
王様がいて、貴族がいて、農民や漁師いる――牧歌的なギュイーズ侯爵領とは違う世界が、都会のキャランフィールドには広がっている。
アンジェロによってもたらされた技術革新と経済発展は、キャランフィールドの街を中世から近世へ、そして一気に近代へと時計の針を進めようとしていた。
アリー・ギュイーズは、アンジェロから聞いた話をウォーカー船長に伝える。
「街が、国が発展し、平民の暮らしが良くなり、平民の発言力が増えると共産主義に傾倒する人が増えるそうです」
「しかし、共産主義は、理想主義過ぎませんか? 誰もが平等で公平……。そんなことが出来るのでしょうか?」
「私は無理だと思いますわ。しかし、王や貴族が平民の言葉に耳を傾けずに、平民を虐げれば、大いに支持を集めるだろうとアンジェロ様はおっしゃいました」
「なるほど……。それは、あり得る話ですね……」
ウォーカー船長は、頭の中で未来を考えてみた。沢山の働き口があり、沢山の平民が汗を流す。しかし、そこで、領主が平民を虐げたら?
反乱が起こるかもしれない。みんなが平等という思想――共産主義が流行するかもしれない。
「そこで、今回平民をこちらの味方につけ、共産主義よりも我々の方が頼りになると民衆に理解させるのだそうですわ」
「理解出来ます。将来の起こりうる共産主義の台頭を、押さえ込みたいとお考えなのですね?」
「ええ。『難しい理屈をこねるより、食料を配った方が早い。頭に訴えるな! 胃袋に訴えろ!』だそうですわ」
「これは……なんとも直截ですな!」
アリー・ギュイーズは苦笑し、ウォーカー船長は、笑い声を上げた。
将来の不安要素である共産主義を排除する為に、アンジェロは民心掌握に努めている。大量の食料を前線に送り、ブンゴ隊長たちに義賊を演じさせ、共産党幹部の醜聞を世に広める。
直接攻撃を行えば、もっと早くケリをつけられるのに、一見すると回りくどい手口……。
しかし、それらの作戦には、ちゃんと意味があった。
ウォーカー船長は、疑問が晴れ、スッキリとした心持ちになった。
「よくわかりました。それでは、私は引き続き食料の仕入れをがんばりましょう!」
「よろしくお願いいたしますわ。では、ちょっとお茶にいたしましょう。この先に、新しくできたお店があるのですよ」
「お供いたします!」
アリー・ギュイーズとウォーカー船長は、晴れやかな表情でお店に入った。
その頃、ソビエト連邦では、経済を担当する幹部三人が緊急会議を開いていた。
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