追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
321 / 358
第十一章 文明開化

第321話 怒りの女神ズ

しおりを挟む
 会議室へ女神ズ三人をご案内する。

 館の中が騒がしいのは、会議室へ向かう途中で出会った使用人たちが、『女神降臨!』と噂をばらまいているからだろう。

 会議室には、円い大きなテーブルがドンと配置されている。
 上座――窓際の奥の席に女神ズの三人が座った。
 座ったといっても三人の姿は、孔雀と、フクロウと、やる気のないロバ風のユニコーンである。
 どう考えても、絵面がおかしい。

 だが、考えたら負けだ。
 俺、じい、ルーナ先生、黒丸師匠は、無言で下座――会議室のドア近くの椅子に座った。

「ちょっと巧良輔! いや、違うわね。アンジェロ! あんた何でそこに座るのよ。こっちに座りなさいよ!」

 女神ジュノー様が、間違えて日本人のころの俺の名前を呼んだ。
 懐かしい名前だ。

「そっちに座って、良いんですか?」

 俺がのほほんと受け答えをすると、俺の隣に座るルーナ先生が血相を変えた。
 厳しい口調で俺を諫める。

「アンジェロ! そちらは、女神ジュノー様であらせられる。アンジェロは、態度に気をつける!」

 あのルーナ先生が、最大限の敬意を払っている……。
 俺が驚いていると、女神ジュノー様がバッサバッサと孔雀の翼でテーブルを叩く。

「いいのよ! 私の子供みたいなものだから! さあ、早く座りなさい!」

「じゃあ、遠慮無く」

 俺は女神ジュノー様と女神ミネルヴァ様の間に座った。
 ルーナ先生、黒丸師匠、じいが、目を見開き驚いている。

「アンジェロ……」

「アンジェロ少年は、そういう立場であるか……」

「ア、アンジェロ様……」

 三人が恐れおののく。
 俺はすかさずフォローを入れる。

「いや、立場と言われても子供の頃からの知り合いで……。親戚のおば……いや! お姉さん! みたいな感じだよ」

「普通は女神様を親戚扱いしないのである!」

 黒丸師匠にツッコまれ、それもそうだなと考えたが、この女神ズ三人を神様として敬うのは無理だ。
 親戚のお姉ちゃんとダメなお兄ちゃん感覚だ。

「それで、何があったの?」

 女神ジュノー様が、早速話を始めた。
 女神ジュノー様とは、二才の時以来会っていない。
 かなり時間が経過しているので、どこから話した物だろうか?

 俺は直近の出来事、地球の神の使いが暗躍して、俺以外の地球からの転生者が原因で戦争が起ったことを話した。

 変態のハジメマツバヤシ。
 共産主義に傾倒したスターリン。
 そして味方になってくれた赤獅子族のヴィス。

 一連の騒動に巻き込まれて、大勢の人が死んだ。

 俺が主に話をして、じい、ルーナ先生、黒丸師匠が適宜補足を入れる。
 女神ズの三人は、ジッと黙って俺たちの話を聞いていた。

「何よ! それ! 完全に地球の神が悪いじゃない!」

 話を聞き終わると女神ジュノー様は怒りだした。
 怒りのあまり、頭の羽根が逆立っている。

「落ち着けジュノー!」

 女神ミネルヴァ様が女神ジュノー様をなだめるが、女神ジュノー様はカンカンだ。
 凄まじい魔力が女神ジュノー様から漏れ出している。

 ルーナ先生と黒丸師匠はブルリと震え、じいは青い顔をしてテーブルに突っ伏した。
 俺は大丈夫だが、これほどの魔力を一気に浴びれば常人は失神する。

「ジュノー……。それくらいにしとけよ。じいさんが、気絶したぞ。このままジュノーの魔力を浴び続けたら、死んじまう……。オマエは、この世界の主神だ。この世界の生きとし生けるものを愛さなくちゃ。傷つけてどうするよ?」

 ニート神メルクリウスが、ノンビリした口調で厳しいことを言う。
 やるな! ロバ風ユニコーン!

「ふう……そうね……。熱くなりすぎたわ……」

 女神ジュノー様の魔力が収まっていく。
 良かった! このままでは魔力の嵐がキャランフィールドを覆うところだった。

「事情はわかったわ! じゃあ、行くわ!」

 飛び立とうとする女神ジュノー様に、俺は大慌てで意見を申し述べた。

「先ほどの話の通り、赤獅子族のヴィスは俺たちに協力しました! 少なくとも俺が治めている国の技術や文化レベルは上がりました!」

 神様たちの間で、何が起っているのかはわからない。
 ただ、俺たちの生活を、俺たちが住む世界を、神様の気まぐれでぶち壊されてしまってはたまらない。

 俺は必死に訴えた。

「わかってるわよ! この世界のポイントは、爆上がりしたわ! アンジェロ! よくやったわね! ありがとう!」

 女神ジュノー様は、一気にまくし立てると会議室の窓を破壊して空へと飛び立っていった。
 女神ミネルヴァ様とニート神メルクリウスが追って行く。

 後には、俺、ルーナ先生、失神したじいが残った。

 女神ジュノー様の強力な魔力を浴びたからだろう。
 俺は全身に疲れを感じ、絞り出すように声を発した。

「お疲れ様でした……」

「いや……。それがし、久々にグッタリである……」

「食堂へ行って、何か食べよう」

 黒丸師匠もルーナ先生も、相当疲れた様子だ。
 じいを看病させる人も呼ばなくてはならない。

 俺、ルーナ先生、黒丸師匠は、会議室の扉を開けて廊下に出た。

「「「あっ!」」」

 廊下には、館に勤めるメイドや使用人たちが、失神していた。
 中には失禁している人もいて、目も当てられない姿で倒れている。

 俺たちは、急いで館の中を見回り、キャランフィールドの街に出た。
 街の中も死屍累々……、いや、死んでる人はいないが、失神した人や腰が抜けて動けない人が大量発生していた。

「これ……どうしますか……」

 俺がぼやくと黒丸師匠がヤケクソ気味に叫んだ。

「どうも、こうも、ないのである! エールでも飲むのである!」

「そうそう。そのうち動けるようになる」

 ルーナ先生も黒丸師匠と同意見で、さっさと近くの居酒屋に入ってしまった。
 居酒屋の店員も失神しているだろうけれど、あの二人なら勝手にエールを注いで飲み出すだろう。

 さて……俺は……。

「止めた! 俺も食事にしよう!」

 俺はルーナ先生と黒丸師匠の後を追って、居酒屋の扉を開けた。

 こうして女神ジュノー様たちの来訪は、キャランフィールドに失神者続出という前代未聞の事態を引き起こして幕を閉じたのであった。

 そして居酒屋では……。

「プハッ! エールが旨いのである!」

「ぐううう! 最高!」

「はいはい。オツマミも食べて下さいね」
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...