追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
324 / 358
第十一章 文明開化

第324話 三度目の人生を異世界で

しおりを挟む
 始祖の神による審判は下された。
 既に始祖の神の気配は会場から消え、会場の神々の間に弛緩した空気が漂っていた。
 神々は、それぞれの世界に戻る為に席を立つ。

 赤獅子族のヴィスは、所在なげにしていた。
 自分はこれからどうなるのか、どうすれば良いのか、わからないでいた。

 自分は死んだ。
 証言をするために生き返ったが、また、死ぬのだろうか?
 不安な気持ちを抱えていたのだ。

 女神ジュノーが、赤獅子族のヴィスに話しかける。

「ヴィス。協力ありがとう。ヴィスの話があったから勝てたのよ!」

 女神ジュノーは、既に気持ちを切り替えていて、サバサバとした態度だ。
 赤獅子族のヴィスにとっては初対面の相手だが、目の前に立つ女神ジュノーが主神であることを理解していた。

「あ、いえ……」

「お礼に転生させてあげるわ」

「マジですか!?」

 また、生きることが出来る!
 ヴィスの心は喜びで満たされた。

 女神ジュノーは、地球からの転生者でありアンジェロに協力的なヴィスは何かの役に立つかもしれないと考えていた。
 それに、今回の地球の神々との騒動で自分に協力してくれたのだ。
 ご褒美があっても良いだろうとも思っていた。

 始祖の神は、既にいない。
 ヴィスを、そのまま残していた。

 つまり、『女神ジュノーの好きにして良い』ということだろうと、女神ジュノーは受け取った。

「転生するのに、何か希望はある?」

「人間にして下さい! もう、獣人は嫌です!」

 ヴィスは食い気味に、大声で返事をした。
 あまりの勢いに女神ジュノーがたじろぐほどだ。

「俺……、赤獅子族に生まれ変わって、本当になじめなくて……。部族の生活習慣もダメだったし、自分の毛むくじゃらの体も嫌で……」

「あ~、日本にいた時とギャップがありすぎたのね!」

「そうです! だから、次は人間にして下さい! あ、それと赤ちゃんからは、勘弁して欲しいです!」

 女神ジュノーが、どこからともなく大きな本を取り出し、立ったままめくりだした。
 女神ミネルヴァと神メルクリウスが、大きな本をのぞき込み『あーだ。こうだ』と三人で話し始めた。

 やがて、三人は大きな本に書いてるリストの中から一人の人物を指さした。
 女神ジュノーがヴィスに告げる。

「あなたの希望に近いのは、十三才の男の子ね。人族の孤児で、もうすぐ病気で死ぬわ。その男の子に、あなたの魂を入れることは出来るわよ。どうする?」

「それで、お願いします!」

「本当に良いの? 人族の何の特徴もない男の子よ? 前みたいに戦闘力はないわよ?」

 女神ジュノーの問いかけに、ヴィスは目を伏せてため息をついた。

「普通が一番ですよ。赤獅子族に生まれ変わったら戦争ばかりで……。大勢が死ぬのを見ましたから……」

「そう。なら、この十三才の男の子にしましょう。アンジェロには迎えに行くように言っておくわ」

「ありがとうございます!」

 女神ジュノーは、何事かを大きな本に書き込み、腕を振るった。
 ヴィスの仮初めの体は消え、魂だけが女神ジュノーの世界へ向けて飛んでいった。


 *


 キュラキュラ♪
 キュラキュラ♪

 オオミーヤの街を出発したケッテンクラートが軽快に走る。
 ブンゴ隊長が乗り込むケッテンクラートだ。

 運転席の副長が、荷台でくつろぐブンゴ隊長に大声で話しかけた。

「隊長! 何で急に出発するんですか?」

「アンジェロ陛下からの指示ッス!」

「でも、もうすぐ日が暮れますよ!」

 時間は夕方の四時頃だった。
 ブンゴ隊長たちが目的地に到着し、オオミーヤの街に戻ってくる頃には日が暮れているだろう。

 ブンゴ隊長は、副長に檄を飛ばした。

「だから、急ぐッス! 子供を保護しろって命令ッスよ!」

「へいへい。それじゃ、飛ばしますよ!」

 副長はケッテンクラートのスピードを上げ、目的地の村を目指した。

 今日、午後三時頃、キャランフィールドから緊急連絡を携えた異世界飛行機グースが到着した。
 緊急連絡はアンジェロからブンゴ隊長への命令だった。

『赤獅子族のヴィスが転生した。指定の場所に急行し、十三才人族の子供を保護せよ』

 ブンゴ隊長には、信じられない内容だったが、詳細をグースのパイロットから聞いて納得した。

『女神ジュノー様の思し召しである』

 ブンゴ隊長は信心深いわけではないが、人並みに神の存在を信じている。
 それに、つい最近、キャランフィールドに女神様たちが顕現したと商人たちが噂しているのを聞いた。

 で、あれば……、この命令は冗談や思い込みの類いではなく、本当なのだろう。
 先の大戦で活躍し、最期は敵の大将と刺し違えた赤獅子族のヴィス。
 彼の生まれ変わりが本当にいるのなら、最優先で保護しなくては……。

 ブンゴ隊長は、気を引き締めた。

 夕焼けが空を覆う頃、ブンゴ隊長たちは目的の村に着いた。
 村はずれに、一人の男の子が立っている。

「あの子ッスね!」

「車を寄せます!」

 夕焼けで男の子の顔は見えないが、背は低く、痩せているのが遠目でわかった。
 栄養状態が悪いのだろうとブンゴ隊長は判断した。

 男の子の前にケッテンクラートが停車する。
 ボロの半ズボンと、これまたボロのランニングシャツを着た、ボサボサ髪の男の子は、ケッテンクラートの荷台に乗り込んだ。

「ああ、やっとお迎えが来た! 今日、一日待ったぜ!」

 副長や兵士たちは、子供らしからぬ雰囲気の男の子に不審の目を向けたが、ブンゴ隊長はけろっとしている。

「名前を確認してもイイッスか?」

「ヴィスだ。前は赤獅子族だったが、今は普通の人間だよ」

「オッケーッス! じゃあ、オオミーヤに戻るッスよ!」

 ブンゴ隊長の命令でケッテンクラートはUターンして、オオミーヤの街へ向かう。

 ヴィスは、ケッテンクラートの荷台でくつろいでいた。
 ブンゴ隊長が話しかける。

「家族は?」

「いや、いない。俺は孤児らしい」

「そうッスか」

 自分のことを話しているのに、他人事のような話し振りだ。
 ブンゴ隊長は不思議に感じたが、生まれ変わるとそんなモノなのかもしれないと納得することにした。

 とにかく自分は命令を実行するだけだと思考を放棄して、辺りの警戒を始めた。

 ヴィスは、沈みゆく夕日を眺めながら考えていた。
 最初の人生、二度目の人生、これは三度目の人生だと。

 三度目の人生は、どんな人生になるのだろう?

(とりあえず……カツ丼が食いたい! それには、アンジェロのところへ行かなくちゃな!)

 ヴィスは、視線をブンゴ隊長に向ける。

「なあ、アンジェロのところへ連れてってくれるか?」

「もちろんッスよ! アンジェロ陛下から、お連れするように命令が来てるッス!」

「そっか。それなら安心だ」

 ヴィスは、ケッテンクラートの狭い荷台で横になった。
 小さなヴィスの体は、荷台にも収まって、ブンゴ隊長や兵士たちの邪魔になることはなかった。

 既に辺りは暗くなり、ヴィスの目には星一杯の夜空が見えた。
 心地よい揺れを感じながら、ヴィスは目をつぶる。
 三度目の人生を素晴らしい人生にしようと思いながら。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...