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第十一章 文明開化
第330話 アリーさんとウォーカー船長の報告
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――七月。
里帰りしていたアリーさんが帰ってきた。
俺は港まで迎えに出た。
高速帆船『愛しのマリールー号』が港に入り、木製のタラップが船に渡される。
ウォーカー船長にエスコートされて、アリーさんが姿を見せた。
「アリーさん! お帰り!」
「アンジェロ様。ただいま帰りましたわ」
アリーさんは優雅にタラップから降りると、チョコンとスカートを持ち上げ礼をする
相変わらずキレイなお姉さんだ。
アリー・ギュイーズ。
俺の婚約者で、旧メロビクス王大国の有力貴族ギュイーズ侯爵の孫娘だ。
俺はアリーさんをエスコートして、豪華な飾りのついた専用馬車に乗る。
自動車でも良いのだが、そこは様式美だ。
王族や貴族の乗り物は馬車という風潮は根強い。
「アリーさん。お仕事ありがとうございます! 大変だったでしょう?」
「うふふ。お友達にも会えて楽しかったですわ」
今回アリーさんは、ギュイーズ侯爵の館に逗留しながら、旧メロビクス王大国貴族や貴族令嬢たちと交流を持ってもらった。
ギュイーズ侯爵の領地は、旧メロビクス王大国の北西にある。
ギュイーズ侯爵領地周辺は、俺が住むキャランフィールドからは目が届きにくい。
そこでアリーさんが、里帰りにかこつけて周囲の様子を探ってきてくれたのだ。
そう、真の目的は情報収集だ。
「夏のキャランフィールドは、意外と暑いですわね」
馬車の中でアリーさんが俺の腕に寄りかかる。
館に着くまでの短い時間だが、俺たちは、イチャイチャして婚約者らしく過ごした。
「ニャ~」
アリーさんの護衛をする猫獣人たちが、ノンビリした鳴き声を上げて、俺たちを冷やかした。
――翌日。
俺とじいは、アリーさんとウォーカー船長から、俺の執務室で報告を聞くことにした。
執務室の応接セットに、俺、じいが並んで座り、対面にアリーさんとウォーカー船長が座る。
執務室の窓と扉は開け放たれて、外から風が吹き抜けてくれる。
日差しは強いが海からの風がある。
室内で涼しく過ごせるのはありがたい。
「おじい様の館も、風が通って涼しかったですわ」
アリーさんの祖父ギュイーズ侯爵の館は、海沿いの町『領都エトルタ』にある。
気候は温暖で、美しい海と水量豊富な河川に恵まれた肥沃な土地だ。
農業と酪農が盛んで、先の戦争では農産物を戦地に供給してくれた。
ギュイーズ侯爵は、大いに儲かったそうだ。
アリーさんが集めた情報によれば、ギュイーズ侯爵領の好景気は続いている。
戦争で敷設した軽便鉄道をギュイーズ侯爵たちが買い取った。
軽便鉄道を使って海沿いから内陸へ、内陸から海沿いへと物と人が移動し、海の玄関口であるギュイーズ侯爵領の領都エトルタは、非常に活気があるそうだ。
「治安はどうですか?」
「うふふ。港町にケンカはつきものですよ」
「ああ、わかります。キャランフィールドも気の荒い船乗りや冒険者が多いですから」
アリーさんの隣に座るウォーカー船長がニヤリと笑い、話を引き取った。
「まあ、船乗りは命がけで海を渡る……。切った張ったの世界に暮らしておりますからな。多少のケンカは、スキンシップの延長ですよ」
俺とじいは、ウォーカー船長の話に苦笑しながらうなずく。
冒険者も船乗りと同じだ。
命をかけて戦う者は、常に気を張っている。
安心出来る場所に来ると、気を張っていた反動で、はっちゃけてしまうのだ。
ルーナ先生が居酒屋でよくケンカするのと同じだ。
「ただ、好景気で警備の予算が増えたので、領都エトルタは警備の兵士がよく見回っています。治安は良いですよ」
「内陸との交易ルートも、周囲の領主貴族とおじい様が協力して、警備の見回りを増やしていますわ。冒険者さんたちに、街道警備のお仕事を回しているそうです」
「それなら安心ですね」
戦争が終わって、平和になった。
兵士たちは、故郷に帰って元の仕事に戻る。
だが、何事にも例外はあり、元兵士が盗賊になってしまうケースもあるのだ。
戦闘経験が豊富な元兵士の盗賊など、やっかいなことこの上ない。
ギュイーズ侯爵は、その辺りも見越して、警備の仕事を冒険者に回したのだろう。
盗賊になるよりも、冒険者になって見回り警備をする方が割が良い。
経済が良ければ、大概の問題は片がつく。
俺は、そんなことを実感して、笑顔になっていた。
しかめっ面が多いじいも、顔をほころばせた。
和やかな空気が執務室に漂った。
だが、アリーさんが、キリリとした顔をして空気を変える。
「ただ、不満を持つ貴族はおりますわ。早めに不満を解消した方がよろしくてよ」
「ん? それは?」
「ウォーカー。地図を」
アリーさんが、ウォーカー船長に命じて簡単な手書きの地図を応接テーブルに広げた。
メロビクス王大国の地図で、あちこちに×印や三角の印がついている。
印の横には、貴族家の名前と爵位が記されていた。
俺とじいは、眉根を寄せ、前のめりになって地図をのぞき込む。
「ウォーカー。説明を」
「はい、アリー様」
ウォーカー船長が説明を始めた。
×印は、要注意。大いに不満を持っている旧メロビクス王大国貴族。
三角印は、注意。不満を持っている旧メロビクス王大国貴族だ。
「不満を持っている旧メロビクス王大国貴族が多いな……」
予想外の報告に俺は困惑した。
里帰りしていたアリーさんが帰ってきた。
俺は港まで迎えに出た。
高速帆船『愛しのマリールー号』が港に入り、木製のタラップが船に渡される。
ウォーカー船長にエスコートされて、アリーさんが姿を見せた。
「アリーさん! お帰り!」
「アンジェロ様。ただいま帰りましたわ」
アリーさんは優雅にタラップから降りると、チョコンとスカートを持ち上げ礼をする
相変わらずキレイなお姉さんだ。
アリー・ギュイーズ。
俺の婚約者で、旧メロビクス王大国の有力貴族ギュイーズ侯爵の孫娘だ。
俺はアリーさんをエスコートして、豪華な飾りのついた専用馬車に乗る。
自動車でも良いのだが、そこは様式美だ。
王族や貴族の乗り物は馬車という風潮は根強い。
「アリーさん。お仕事ありがとうございます! 大変だったでしょう?」
「うふふ。お友達にも会えて楽しかったですわ」
今回アリーさんは、ギュイーズ侯爵の館に逗留しながら、旧メロビクス王大国貴族や貴族令嬢たちと交流を持ってもらった。
ギュイーズ侯爵の領地は、旧メロビクス王大国の北西にある。
ギュイーズ侯爵領地周辺は、俺が住むキャランフィールドからは目が届きにくい。
そこでアリーさんが、里帰りにかこつけて周囲の様子を探ってきてくれたのだ。
そう、真の目的は情報収集だ。
「夏のキャランフィールドは、意外と暑いですわね」
馬車の中でアリーさんが俺の腕に寄りかかる。
館に着くまでの短い時間だが、俺たちは、イチャイチャして婚約者らしく過ごした。
「ニャ~」
アリーさんの護衛をする猫獣人たちが、ノンビリした鳴き声を上げて、俺たちを冷やかした。
――翌日。
俺とじいは、アリーさんとウォーカー船長から、俺の執務室で報告を聞くことにした。
執務室の応接セットに、俺、じいが並んで座り、対面にアリーさんとウォーカー船長が座る。
執務室の窓と扉は開け放たれて、外から風が吹き抜けてくれる。
日差しは強いが海からの風がある。
室内で涼しく過ごせるのはありがたい。
「おじい様の館も、風が通って涼しかったですわ」
アリーさんの祖父ギュイーズ侯爵の館は、海沿いの町『領都エトルタ』にある。
気候は温暖で、美しい海と水量豊富な河川に恵まれた肥沃な土地だ。
農業と酪農が盛んで、先の戦争では農産物を戦地に供給してくれた。
ギュイーズ侯爵は、大いに儲かったそうだ。
アリーさんが集めた情報によれば、ギュイーズ侯爵領の好景気は続いている。
戦争で敷設した軽便鉄道をギュイーズ侯爵たちが買い取った。
軽便鉄道を使って海沿いから内陸へ、内陸から海沿いへと物と人が移動し、海の玄関口であるギュイーズ侯爵領の領都エトルタは、非常に活気があるそうだ。
「治安はどうですか?」
「うふふ。港町にケンカはつきものですよ」
「ああ、わかります。キャランフィールドも気の荒い船乗りや冒険者が多いですから」
アリーさんの隣に座るウォーカー船長がニヤリと笑い、話を引き取った。
「まあ、船乗りは命がけで海を渡る……。切った張ったの世界に暮らしておりますからな。多少のケンカは、スキンシップの延長ですよ」
俺とじいは、ウォーカー船長の話に苦笑しながらうなずく。
冒険者も船乗りと同じだ。
命をかけて戦う者は、常に気を張っている。
安心出来る場所に来ると、気を張っていた反動で、はっちゃけてしまうのだ。
ルーナ先生が居酒屋でよくケンカするのと同じだ。
「ただ、好景気で警備の予算が増えたので、領都エトルタは警備の兵士がよく見回っています。治安は良いですよ」
「内陸との交易ルートも、周囲の領主貴族とおじい様が協力して、警備の見回りを増やしていますわ。冒険者さんたちに、街道警備のお仕事を回しているそうです」
「それなら安心ですね」
戦争が終わって、平和になった。
兵士たちは、故郷に帰って元の仕事に戻る。
だが、何事にも例外はあり、元兵士が盗賊になってしまうケースもあるのだ。
戦闘経験が豊富な元兵士の盗賊など、やっかいなことこの上ない。
ギュイーズ侯爵は、その辺りも見越して、警備の仕事を冒険者に回したのだろう。
盗賊になるよりも、冒険者になって見回り警備をする方が割が良い。
経済が良ければ、大概の問題は片がつく。
俺は、そんなことを実感して、笑顔になっていた。
しかめっ面が多いじいも、顔をほころばせた。
和やかな空気が執務室に漂った。
だが、アリーさんが、キリリとした顔をして空気を変える。
「ただ、不満を持つ貴族はおりますわ。早めに不満を解消した方がよろしくてよ」
「ん? それは?」
「ウォーカー。地図を」
アリーさんが、ウォーカー船長に命じて簡単な手書きの地図を応接テーブルに広げた。
メロビクス王大国の地図で、あちこちに×印や三角の印がついている。
印の横には、貴族家の名前と爵位が記されていた。
俺とじいは、眉根を寄せ、前のめりになって地図をのぞき込む。
「ウォーカー。説明を」
「はい、アリー様」
ウォーカー船長が説明を始めた。
×印は、要注意。大いに不満を持っている旧メロビクス王大国貴族。
三角印は、注意。不満を持っている旧メロビクス王大国貴族だ。
「不満を持っている旧メロビクス王大国貴族が多いな……」
予想外の報告に俺は困惑した。
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