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第十一章 文明開化
第346話 パーマー子爵との会談
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――十月下旬。
俺はエリザ女王国の領事パーマー子爵を、王都キャランフィールドへ呼び出した。
パーマー子爵は、特別応接室にいる。
特別応接室とは、新しく魔法で造った問題のある来客用の部屋だ。
壁にのぞき穴が仕込んであって、特別応接室の様子をコッソリ観察できるようになっている。
俺、じい、ルーナ先生、黒丸師匠で、壁の裏側から特別応接室にいるパーマー子爵の様子をのぞき見た。
「いやあ、ついに私の名前がアンジェロ陛下のお耳に入ったか!」
パーマー子爵は、応接ソファーに座りリラックスした様子だ。
でかい声で独り言をつぶやいている。
壁の裏側にいる俺たちでも、パーマー子爵の独り言はハッキリと聞き取れる。
「しかし、困ってしまうなぁ~。私は女王陛下に忠誠を誓った身だ。アンジェロ陛下に、『私に仕えないか?』とか言われたらどうしよう! いやあ~出来る男は辛いな!」
俺はあんぐりと口を開けてしまう。
パーマー子爵は、『俺がパーマー子爵をスカウトするために呼び出した』と、勝手に勘違いしているのだ。
俺は小声でじいに確認をする。
「じい! パーマー子爵には、何て伝えて呼び出したの?」
「両国の平和的関係について、アンジェロ陛下が意見交換をしたい――とお伝えしました」
「何で俺がパーマー子爵をスカウトすることになっているの?」
「ワシは知りませんぞ!」
パーマー子爵は、応接ソファーから立ち上がると窓へ寄った。
出窓になっていて、王都キャランフィールドがよく見える。
パーマー子爵は、出窓にヒジをつきポーズを作った。
「ふう。母国を取るか、私の能力を評価してくれるこの国を取るか、それが問題だ」
「船便で母国に送り返すのである!」
「船倉に蹴り込みたい! そのまま蹴り続けたい!」
「一緒に働くのは、遠慮したいですな」
黒丸師匠、ルーナ先生、じいが、ひそひそ声でツッコミを入れる。
本当に、どういう思考回路をしているのだろう?
「ぱっと見は、人が良さそうだよね。だけど、頭の方は……。なるほど、ネジが何本か足らないね」
俺はパーマー子爵の感想を小声で口にした。
この人が領事なんだ。
本当に家柄が良いだけの人なんだろうな。
「ねえ、じい。パーマー子爵が噂を広めた人物で間違いないの?」
「間違いありません」
「じゃあ、パーマー子爵と話してみるか……」
俺はため息をつき、じいを連れてパーマー子爵が待つ特別応接室へ向かった。
特別応接室の扉を開けると、パーマー子爵は出窓に足をつき、手をアゴにあてて、何かに浸りきっていた。
俺は心の中で盛大にため息をつきつつも、笑顔でパーマー子爵に声を掛ける。
なめられないように、尊大な口調で腹に力を入れ太い声を出す。
「パーマー子爵。余がグンマー連合王国総長アンジェロである」
「あ、あ、アンゲロ陛下。初めて御意を得ます。エリザ女王国領事にして子爵、パーマーでございましゅ」
パーマー子爵は、よほど慌てたのだろう。
アンジェロがアンゲロになるし、口上をかむしで、ワタワタしている。
俺は応接室のソファーに座った。
じいは俺の後ろに立ち、パーマー子爵ににらみを効かせる。
「さて、今日来てもらったのは、最近黄金航路に出没する海賊について協議をする為だ」
「えっ!? あ、はい……。そう……ですか……」
パーマー子爵は、意気消沈している。
何か急に落ち込んだな……。
「パーマー子爵。急に元気がなくなったが、いかがした?」
「はあ。てっきりアンジェロ陛下が私をスカウトするのかと思っていたのですが……。ちょっとガッカリして」
それ、言う?
ションボリするのは勝手だけど、それはパーマー子爵の勘違いだから。
勝手に勘違いして、勝手に落ち込むのは、止めて欲しいな。
じいが咳払いをし、壁の裏でルーナ先生の押し殺した笑い声が微かに聞こえた。
「あー。いや、貴殿が優秀な領事だと聞いているが、エリザ女王国の優秀な臣僚を我が国に引き抜くわけにはいくまい。両国の友好に亀裂が入っては不味いからな」
俺は棒読みでフォローの言葉をパーマー子爵にかける。
なんで、俺が、このオッサンのフォローなど……。
するとパーマー子爵は、ムックリと元気になった。
「そ、そうですよね! 優秀な臣僚……、優秀な臣僚……」
じいが二度咳払いをし、今度は黒丸師匠の押し殺した声が微かに聞こえた。
『バカである!』
とか、何とか言ってる。
パーマー子爵は、俺が褒めたから有頂天だ。
もっとも棒読みで褒めたので、心はこもってなかったが。
「話を進めても良いか?」
「はっ! お伺いいたします!」
「海賊は黄金航路で発生し、西へと移動している。現在はギュイーズ侯爵の領都近くに出没しているそうだ」
「ギュイーズ侯爵……えーと……」
「旧メロビクス王大国の北側! 海岸の町!」
「えーと、はあ、とにかく海賊は西へ移動したんですね! いや~良かったですね!」
良くねえだろう!
このオッサン!
まったく事態を理解していない!
「結論から言おう! この海賊はエリザ女王国の仕掛けだな?」
「ええ!? そんな訳ないでしょう!?」
パーマー子爵は盛大に驚いている。
演技か? それとも、本当に知らない?
「襲われた商船の生き残りがいた。岸まで泳ぎ着いたのを、我々が保護した。生き残った船員の証言によれば、襲ってきたのはエリザ女王国の船だ。海賊もエリザ女王国の人間だったと証言したぞ!」
これはウソだ。
じいからの指南で、わざとウソをついた。
パーマー子爵の性格なら、鎌を掛ければボロを出すだろうと。
パーマー子爵は、応接ソファーから立ち上がると両手をブンブン振り回しながら反論をし始めた。
「海賊なんて、知りませんよ! 何でウチが、アンジェロ陛下と仲が悪くなることをしなくちゃならないんですか! 交易が増えて、儲かってるじゃないですか! 私もワイロをガッポガッポもらって、儲かってますよ!」
「本当か? 海賊は、貴殿たちの謀略ではないのか?」
「本当ですよ! こんな儲かってる状況をぶち壊す訳ないでしょう! 愛人への手当も増やせたし、本国の家族への仕送りも増やせたし、ウハウハなんですから!」
家族よりも愛人が優先なのか、この人……。
パーマー子爵のリアクションを見ていると、海賊について関与していないようだ。
では、流言飛語はどうかな?
「では、聞くが……。余が兄のアルドギスルを疎んじているとの噂が流れているが?」
「えっ!? それは……」
パーマー子爵がギクリとして、目をそらした。
「パーマー子爵! 貴殿がパーティーを開いて、噂を流していると聞いたが?」
「い! い! い! いいえ! 知りません!」
明らかにウソだな。
俺はさらに追求する。
「余が痔瘻であるとの噂も流れているが?」
パーマー子爵はポカンとしている。
しばらくして返答した。
「え? アンジェロ陛下が痔ですか? そんなことは言ってません」
「ウソをつくな! 余をおとしめようとしているな?」
「違いますよ! 本国からは、『アンジェロ陛下が、アルドギスル陛下を排泄しようとしている』と指示を受けたのです! 痔がどうとか、まったく知りません!」
パーマー子爵は、あっさりゲロした。
同時に何か不穏な言葉を口にしたな……。
「何だって? 俺がアルドギスル兄上を? 何しようと」
「えーと、排泄しようとしている」
「それだ! オマエが排泄とか言うから、お尻つながりで痔になったんだよ!」
俺はパーマー子爵の襟首をつかんだ。
ルーナ先生と黒丸師匠の笑い声が思いっきり聞こえるが無視だ。
「えー! 知りませんよ!」
「知らないじゃないだろう! 不名誉な噂を流しやがって!」
「ですから知りませんてば! 私はアンジェロ陛下のお尻に興味なんかありません!」
「あってたまるか!」
俺がグイグイパーマー子爵の首をしめたので、パーマー子爵は失神し、失禁してしまった。
しまらない会談だったが、『噂の元はパーマー子爵であり、本国から指示があった』と自白が取れたので、俺とじいはヨシとした。
「やっぱりアンジェロは痔!」
「排泄総長であるな!」
ルーナ先生と黒丸師匠は、このネタでしつこく俺をいじった。
「違いますよ!」
「大丈夫! 痔でも私は気にしない。アンジェロの婚約者を止めない」
「ああ、ルーナは聖女であるな!」
最後までしまらない事件だった。
俺はエリザ女王国の領事パーマー子爵を、王都キャランフィールドへ呼び出した。
パーマー子爵は、特別応接室にいる。
特別応接室とは、新しく魔法で造った問題のある来客用の部屋だ。
壁にのぞき穴が仕込んであって、特別応接室の様子をコッソリ観察できるようになっている。
俺、じい、ルーナ先生、黒丸師匠で、壁の裏側から特別応接室にいるパーマー子爵の様子をのぞき見た。
「いやあ、ついに私の名前がアンジェロ陛下のお耳に入ったか!」
パーマー子爵は、応接ソファーに座りリラックスした様子だ。
でかい声で独り言をつぶやいている。
壁の裏側にいる俺たちでも、パーマー子爵の独り言はハッキリと聞き取れる。
「しかし、困ってしまうなぁ~。私は女王陛下に忠誠を誓った身だ。アンジェロ陛下に、『私に仕えないか?』とか言われたらどうしよう! いやあ~出来る男は辛いな!」
俺はあんぐりと口を開けてしまう。
パーマー子爵は、『俺がパーマー子爵をスカウトするために呼び出した』と、勝手に勘違いしているのだ。
俺は小声でじいに確認をする。
「じい! パーマー子爵には、何て伝えて呼び出したの?」
「両国の平和的関係について、アンジェロ陛下が意見交換をしたい――とお伝えしました」
「何で俺がパーマー子爵をスカウトすることになっているの?」
「ワシは知りませんぞ!」
パーマー子爵は、応接ソファーから立ち上がると窓へ寄った。
出窓になっていて、王都キャランフィールドがよく見える。
パーマー子爵は、出窓にヒジをつきポーズを作った。
「ふう。母国を取るか、私の能力を評価してくれるこの国を取るか、それが問題だ」
「船便で母国に送り返すのである!」
「船倉に蹴り込みたい! そのまま蹴り続けたい!」
「一緒に働くのは、遠慮したいですな」
黒丸師匠、ルーナ先生、じいが、ひそひそ声でツッコミを入れる。
本当に、どういう思考回路をしているのだろう?
「ぱっと見は、人が良さそうだよね。だけど、頭の方は……。なるほど、ネジが何本か足らないね」
俺はパーマー子爵の感想を小声で口にした。
この人が領事なんだ。
本当に家柄が良いだけの人なんだろうな。
「ねえ、じい。パーマー子爵が噂を広めた人物で間違いないの?」
「間違いありません」
「じゃあ、パーマー子爵と話してみるか……」
俺はため息をつき、じいを連れてパーマー子爵が待つ特別応接室へ向かった。
特別応接室の扉を開けると、パーマー子爵は出窓に足をつき、手をアゴにあてて、何かに浸りきっていた。
俺は心の中で盛大にため息をつきつつも、笑顔でパーマー子爵に声を掛ける。
なめられないように、尊大な口調で腹に力を入れ太い声を出す。
「パーマー子爵。余がグンマー連合王国総長アンジェロである」
「あ、あ、アンゲロ陛下。初めて御意を得ます。エリザ女王国領事にして子爵、パーマーでございましゅ」
パーマー子爵は、よほど慌てたのだろう。
アンジェロがアンゲロになるし、口上をかむしで、ワタワタしている。
俺は応接室のソファーに座った。
じいは俺の後ろに立ち、パーマー子爵ににらみを効かせる。
「さて、今日来てもらったのは、最近黄金航路に出没する海賊について協議をする為だ」
「えっ!? あ、はい……。そう……ですか……」
パーマー子爵は、意気消沈している。
何か急に落ち込んだな……。
「パーマー子爵。急に元気がなくなったが、いかがした?」
「はあ。てっきりアンジェロ陛下が私をスカウトするのかと思っていたのですが……。ちょっとガッカリして」
それ、言う?
ションボリするのは勝手だけど、それはパーマー子爵の勘違いだから。
勝手に勘違いして、勝手に落ち込むのは、止めて欲しいな。
じいが咳払いをし、壁の裏でルーナ先生の押し殺した笑い声が微かに聞こえた。
「あー。いや、貴殿が優秀な領事だと聞いているが、エリザ女王国の優秀な臣僚を我が国に引き抜くわけにはいくまい。両国の友好に亀裂が入っては不味いからな」
俺は棒読みでフォローの言葉をパーマー子爵にかける。
なんで、俺が、このオッサンのフォローなど……。
するとパーマー子爵は、ムックリと元気になった。
「そ、そうですよね! 優秀な臣僚……、優秀な臣僚……」
じいが二度咳払いをし、今度は黒丸師匠の押し殺した声が微かに聞こえた。
『バカである!』
とか、何とか言ってる。
パーマー子爵は、俺が褒めたから有頂天だ。
もっとも棒読みで褒めたので、心はこもってなかったが。
「話を進めても良いか?」
「はっ! お伺いいたします!」
「海賊は黄金航路で発生し、西へと移動している。現在はギュイーズ侯爵の領都近くに出没しているそうだ」
「ギュイーズ侯爵……えーと……」
「旧メロビクス王大国の北側! 海岸の町!」
「えーと、はあ、とにかく海賊は西へ移動したんですね! いや~良かったですね!」
良くねえだろう!
このオッサン!
まったく事態を理解していない!
「結論から言おう! この海賊はエリザ女王国の仕掛けだな?」
「ええ!? そんな訳ないでしょう!?」
パーマー子爵は盛大に驚いている。
演技か? それとも、本当に知らない?
「襲われた商船の生き残りがいた。岸まで泳ぎ着いたのを、我々が保護した。生き残った船員の証言によれば、襲ってきたのはエリザ女王国の船だ。海賊もエリザ女王国の人間だったと証言したぞ!」
これはウソだ。
じいからの指南で、わざとウソをついた。
パーマー子爵の性格なら、鎌を掛ければボロを出すだろうと。
パーマー子爵は、応接ソファーから立ち上がると両手をブンブン振り回しながら反論をし始めた。
「海賊なんて、知りませんよ! 何でウチが、アンジェロ陛下と仲が悪くなることをしなくちゃならないんですか! 交易が増えて、儲かってるじゃないですか! 私もワイロをガッポガッポもらって、儲かってますよ!」
「本当か? 海賊は、貴殿たちの謀略ではないのか?」
「本当ですよ! こんな儲かってる状況をぶち壊す訳ないでしょう! 愛人への手当も増やせたし、本国の家族への仕送りも増やせたし、ウハウハなんですから!」
家族よりも愛人が優先なのか、この人……。
パーマー子爵のリアクションを見ていると、海賊について関与していないようだ。
では、流言飛語はどうかな?
「では、聞くが……。余が兄のアルドギスルを疎んじているとの噂が流れているが?」
「えっ!? それは……」
パーマー子爵がギクリとして、目をそらした。
「パーマー子爵! 貴殿がパーティーを開いて、噂を流していると聞いたが?」
「い! い! い! いいえ! 知りません!」
明らかにウソだな。
俺はさらに追求する。
「余が痔瘻であるとの噂も流れているが?」
パーマー子爵はポカンとしている。
しばらくして返答した。
「え? アンジェロ陛下が痔ですか? そんなことは言ってません」
「ウソをつくな! 余をおとしめようとしているな?」
「違いますよ! 本国からは、『アンジェロ陛下が、アルドギスル陛下を排泄しようとしている』と指示を受けたのです! 痔がどうとか、まったく知りません!」
パーマー子爵は、あっさりゲロした。
同時に何か不穏な言葉を口にしたな……。
「何だって? 俺がアルドギスル兄上を? 何しようと」
「えーと、排泄しようとしている」
「それだ! オマエが排泄とか言うから、お尻つながりで痔になったんだよ!」
俺はパーマー子爵の襟首をつかんだ。
ルーナ先生と黒丸師匠の笑い声が思いっきり聞こえるが無視だ。
「えー! 知りませんよ!」
「知らないじゃないだろう! 不名誉な噂を流しやがって!」
「ですから知りませんてば! 私はアンジェロ陛下のお尻に興味なんかありません!」
「あってたまるか!」
俺がグイグイパーマー子爵の首をしめたので、パーマー子爵は失神し、失禁してしまった。
しまらない会談だったが、『噂の元はパーマー子爵であり、本国から指示があった』と自白が取れたので、俺とじいはヨシとした。
「やっぱりアンジェロは痔!」
「排泄総長であるな!」
ルーナ先生と黒丸師匠は、このネタでしつこく俺をいじった。
「違いますよ!」
「大丈夫! 痔でも私は気にしない。アンジェロの婚約者を止めない」
「ああ、ルーナは聖女であるな!」
最後までしまらない事件だった。
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