追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
347 / 358
第十一章 文明開化

第347話 じい、エリザ女王国へ向かう

しおりを挟む
 ――翌日。

 パーマー子爵は、変な噂を流さないように厳重注意をするにとどめた。

 普通なら厳罰、もしくは国外退去を求める事案なのだが、『まともに相手をするのがアホらしい』と全員の意見が一致した。

「普通に領事をやっておる分には、まあ、無害ですからな。釘を刺しておけば十分でしょう」

 じいは、パーマー子爵をまったく問題にしなかった。
 ワイロを取るだの、愛人を囲うだの、まあ、その程度はな。

 それに、厳罰にしてエリザ女王国とこじれる方が、現時点では都合が悪い。
 俺としては、しばらく内政に力を入れたい。
 海軍を設立するが、実戦に投入するのは時間が必要になる。

 エリザ女王国と武力衝突は避け、外交交渉で時間を稼ぐのが当面の方針だ。

 だが、外交は相手があってのもの。
 こちらが、『ああしたい。こうしたい』と言っても、相手がうなずかなければ、外交交渉は成立しない。

 エリザ女王国の女王エリザ・グロリアーナが何を考えているのか?
 何を欲しているのか?

 俺は、アリーさんと話をすることにした。

 アリーさんは、エリザ女王国の女王エリザ・グロリアーナの異母妹だ。
 過去には、命を狙われた。

「――というわけだ。エリザ・グロリアーナ女王が何を考えているか、アリーさんなら分かるかと思って」

 俺はアリーさんに一通りの状況を説明した。
 アリーさんは、細いアゴにキレイな指をあてがう。

「恐怖でしょうね」

「恐怖?」

「ええ。アンジェロ様と私を恐れているのでしょう」

 どういうことだろう?
 現在、グンマー連合王国とエリザ女王国は、平和に交易を行っている。
 何を恐れると言うのか。

「俺はエリザ・グロリアーナ女王よりも若造ですよ? 恐れる必要がないですよね?」

「グンマー連合王国は、勢力範囲を急拡大していますわ。他国から見たら覇権主義の強国に見えるでしょう。アンジェロ様のことは、恐ろしいと思いますわ」

「え~!」

 こんなに平和主義者なのに!
 理不尽な!

「アンジェロ様。これは確認ですが、エリザ女王国と戦争をして併合する気は、おありですか?」

「ない!」

 アリーさんがとんでもない質問をするので、俺は即答した。
 今でも広大になりすぎたグンマー連合王国に四苦八苦しているのだ。

 これ以上、広くなったら面倒を見きれない。

 モンゴル帝国だって、ジンギスカンが死んだ後は、分割統治になったんだ。
 一国を統治するのに可能な物理的な広さはあるのだろう。

「グンマー連合王国は広くなりすぎました。連合王国の形態を取って、分割統治しているから何とかなってますが、もう限界でしょう。アリーさんも内政を見てもらっているからわかりますよね?」

「ええ。これ以上の領土拡張は無理ですわ」

「女王エリザ・グロリアーナがアリーさんを恐れているのは、王位継承権ですよね? アリーさんは、エリザ女王国の王位を望むのですか?」

 俺はアリーさんをジッと見る。
 アリーさんは、フッと笑った。

「ございません。私はここキャランフィールドでの暮らしに満足していますわ。アンジェロ様がいて、ルーナさんや黒丸さんがいて賑やかで、白狼族のサラさんたち獣人もノビノビ暮らしています。活気があって、ちょっとお行儀が悪いこの町が好きですわ」

 アリーさんの微笑みは、聖女のように優しかった。


 *


 翌日、じいがエリザ女王国へ特使として向かう。
 俺は王都キャランフィールド郊外の飛行場まで、じいを見送りに来た。

「じい、本当に一人で行くのか? 白狼族の特殊部隊を連れて行ったら?」

 じいは、異世界飛行機グースに乗って、単身エリザ女王国に乗り込むという。
 エリザ女王国には、グンマー連合王国の大使館があるし、文官もいるし、警備の兵士もいる。

 それでも、じいを単身で送り込むのは不安だ。

 じいは、俺の心配をカカと笑い飛ばす。

「なに。こういう場合は、大人数ですと警戒されますじゃ。ジジイ一人の方がかえって安全ですじゃ」

「しかし――」

「万一、ワシが害された時は、それを口実に宣戦布告。エリザ女王国を滅ぼして下され」

「オイオイ!」

 じいの口から物騒な言葉が漏れた。
 じいの目に強い意志を感じる。

 だが、俺はじいを鉄砲玉にするつもりはない。

「とにかく生きて帰れ。まだ、俺の子供を抱かせてないからな」

「カカカ! アンジェロ様の子供ですか! それは楽しみですな。まあ、死ぬことはありませんじゃろ。ご安心を……では!」

 俺はじいが乗る異世界飛行機グースから離れた。

 リス族のパイロットがグースを加速させ、グースがフワリと空へ舞い上がる。

 後部座席のじいが、俺に手を振った。
 俺も手を振り返し、グースが見えなくなるまで、じいを見送った。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...